消費税の総額表示あれこれ

 

祝、開幕三連勝! 勝手ながら確定申告の関係で2ヶ月ぶりの執筆となりました。

 

さて、いよいよこの4月から消費税の総額表示制度が施行されました。テレビなどでも連日特集が組まれ、業者さんの苦悩や消費者の意見などが報道されています。私の「税務トピックス」の2月号でもその内容を掲載したところ、特に小売業の方からの反響が高く、沢山のご質問やお問い合わせを頂戴しました。私個人的には、一消費者の立場からは税込10,290円(本体価格9,800円)の方式が一番わかりやすいと思います。百貨店などは高額商品を扱うことが多いためか、この方式が多いようです。ある、アンケート調査でもこれが一番人気ありました。

 

一方、スーパーや飲食店などは、10,290円又は10,290円(税込)と税込価格だけを表示する方式が多くとられているようです。しかし、従来は税抜の本体価格を表示していたのに、いきなり税込価格のみでの表示に変更となると、消費者にとっては以前の価格との比較がしにくい上、値上げしたような感覚になってしまうことから、わかりにくいと思いました。この3月にあるディスカウントショップに発泡酒を買いにいったら、価格が2,709円となっていました。従来は2,580円だったのと、「総額表示の義務」施行前だったので、直感的に「値上げしたのかな」と思ってしまいました。そこで税込か税抜かを店員さんに聞いたら、税込に変わっているということで、値段は据え置きとわかったので安心して買うことにしましたが・・・。

 

本来消費者にわかりやすくするための総額表示なのですが、幾通りもの表示方法を認めたために、各店バラバラの表示方法になり、かえってわかりにくくなり、混乱する結果になってしまったように思います。いずれは様子をみて表示方法は統一されるのではないかと思いますが、なじむまではしばらく時間がかかるのではないでしょうか。

 

一方、業者さん側の立場でも大変です。従来はほとんど税抜価格での表示を行っていたところが多いことから、カタログやメニュー表、値札などをすべて差替えしなければなりません。また、レジシステムも総額表示に対応させるためにプログラムを修正したりと、手間と費用がかかります。今回の改正はレジシステムの変更まで義務づけるものではないのですが、従来の税抜価格を合計して最後に消費税の5%を上乗せする外税方式では、端数処理の関係で表示価格と支払額が異なることもあり、消費者との間でトラブルの可能性もあることから、あえて内税方式にレジシステムを変更する事業者さんもあります。

 

今回の総額表示義務は、あくまで@消費税の課税事業者が、A最終消費者に対して、Bあらかじめ価格を提示する場合に限られています。従って、@消費税の免税事業者、A卸売り業者が小売業者に対する場合、製造業者に材料を提供する場合など相手が事業者の場合、B取引の結果生じる書類である請求書や領収書にたいしてはいずれも対象外となっています。これらはごっちゃにされがちなのですが、先のレジシステム同様いずれ内税方式に統一されていくのではないでしょうか。

 

あと、今般の消費税の改正において、事業者免税点が1,000万円以下に引き下げられたことから、消費税を納めることになる事業者が相当増加します。その結果、消費税分を価格に転嫁できるかどうかということが問題になってきます。先日、よく行く飲食店さんから次のような相談を受けました。来年から課税事業者になる(昨年の売上が1,000万円超あった)ことから、この際4月からの総額表示に便乗して消費税を上乗せすべきかどうか、又は、消費税を納めることになる来年1月から消費税分を上乗せすべきか、などといろいろと頭を悩ませているようでした。

 

それに対して私は、「それは価格の設定の問題ですから、価格自体をどうするかは各事業者さんのご判断になると思います。税法上は、消費税分の徴収の有無は関係なしに、すべて税込とみなして納める税額を計算するようになっていますよ。ただ、商品の内容はそのままでは実質値上げになるので、お客さんの出足に影響するでしょうね」とお答えしました。私も、一顧客ですので・・・。

2004年4月 西野 津