子供への住宅取得資金の支援
息子も一人前になり、そろそろ自分の持家を取得したいと言いだしました。しかし、充分な資力がないので、なるべく親の私が金銭的な支援をしてあげたいと思います。単に資金を負担すると多額の贈与税がかかると聞いたのですが、税務上あまり負担がかからずに良い方法がないでしょうか?
子供が住宅を取得する場合に、金銭的に余裕のある親が支援することがあります。しかし、親が資金を提供し、取得した住宅を子供の名義にするとその提供した資金は子供に対する「贈与」となり、多額の贈与税が課税されてしまいます。しかし、一定の要件に該当すれば贈与税が減免されることもあります。以下ケースごとに贈与税の負担との関係を比較してみました。
T.親から子への住宅資金の支援について
1. 前提条件
息子が5,000万円の一戸建て住宅(土地・建物)を取得する。
息子は預金で1,000万円、住宅ローン2,500万円、不足分の1,500万円は親からの援助とする。
(ケース1) 1,500万円の現金を単純に親からの贈与とする。
贈与税 (1,500万円-110万円)×40%−190万円=366万円
(ケース2) 1,500万円の贈与につき、住宅取得資金等の贈与の特例を適用する。
2015年中の贈与の場合の贈与税 48万円(省エネ・耐震等住宅は0円)
注1) この特例は2015年中は1,000万円(1,500万円)まで非課税となる時限立法です。( )内は省エネ・耐震等の住宅の場合で500万円上乗せになります。
注2) 土地の取得の場合は、建物と併せて取得する場合にのみ適用されます。
贈与税 0円 (1,500万円<2,500円)
注1) この特例は60歳以上(住宅取得資金の場合年齢制限なし)の親から20歳以上の子である推定相続人に対する贈与で、生涯で
2,500万円までの贈与は贈与税はかからず、2,500万円を超えれば超えた金額の20%の贈与税がかかります。
注2) 親の相続のときに、この特例により贈与した財産を贈与時の価額で相続財産に加算して相続税を計算することになりますが、その結果相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人)以下の場合には相続税はかかりません。
注3) 適用後は、選択した親からの贈与につき一般の110万円の控除は生涯使えなくなります。
(ケース4) 1,500万円を親から息子に対する貸付金とする。
贈与税はかかりませんが、事実上の「贈与」と認定されないよう、契約書を作成し、金利を上乗せした定期的な返済の事実を証拠として残すよう留意する必要があります。
贈与税はかかりませんが、親の相続のときに住宅の1/3の持分は親の相続財産となります。
その場合の相続税の課税価額は、相続時の住宅(土地・建物)の評価額となります。
3.解 説
・ ケース1は、贈与税の負担が大きすぎるので、事実上不可能といってもいいでしょう。少ない金額を長年に渡って贈与し、贈与された資金をプールしてから住宅を取得すれば、贈与税は抑えることができます。例えば、150万円を10年間贈与した場合の、累計贈与税額は40万円ですみます。
・ ケース2は、2012年〜2019年6月(改正で4年半延長)に限って適用できる贈与税の特例です。
以下にその概要についてまとめてみました。
U.
1.住宅取得資金の贈与税の非課税制度の概要
その年1月1日現在20歳以上でその年の合計所得金額が2,000万円以下の者が、居住用家屋の取得(敷地の取得含む)や増改築等に充てるために、父母又は祖父母などの直系尊属から金銭の贈与を受け、贈与年の翌年3月15日までに住宅用家屋の取得等をし、居住の用に供している場合には、2015年では最高1,500万円(改正前1,000万円)まで贈与税は非課税となります。
2.従来の贈与税非課税制度との比較
|
A |
B |
C |
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種 類 |
住宅取得等資金の非課税制度 |
暦年課税 |
相続時精算課税制度 |
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贈与者 |
父母又は祖父母などの直系尊属 |
制限なし |
60歳以上(住宅資金は年齢制限なし)の父母又は祖父母 |
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受贈者 |
20歳以上の子又は孫などの直系卑属 |
制限なし |
20歳以上の子 |
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非課 税額 |
契約時期 |
省エネ・耐震・バリアフリーの住宅 |
一般の住宅 |
年110万円 |
累積2,500万円(2,500万円を超える金額には20%の贈与税がかかる)
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2015年 |
1,500万円 |
1,000万円
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2016年1月〜9月 |
1,200万円 |
700万円
|
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2016年10月〜2017年9月消費税率8% |
1,200万円 |
700万円 | |||
2016年10月〜2017年9月消費税率10% | 3,000万円 | 2,500万円 | |||
2017年10月〜2018年9月消費税率8% | 1,000万円 | 500万円 | |||
2017年10月〜2018年9月消費税率10% | 1,500万円 | 1,000万円 | |||
2018年10月〜2019年9月消費税率8% | 800万円 | 300万円 | |||
2018年10月〜2019年9月消費税率10% | 1,200万円 | 700万円 | |||
※消費税率は経過措置により2017年4月以後でも8%の旧税率あり | |||||
使途制限 |
床面積50u以上240u以下等の一定の住宅取得又は100万円以上の一定の増改築等 |
なし |
なし(贈与者の年齢制限なしは住宅資金に限る) |
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所得制限 |
受贈者の贈与年の合計所得2,000万円以下 |
なし |
なし |
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適用期間 |
2012年1月〜2019年6月(4年半延長) |
なし |
なし(住宅資金の年齢制限なしは2019年6月まで延長) |
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相続税の計
算 |
贈与額加算不要 |
3年以内の贈与額を加算し、贈与税控除 |
贈与額を全額加算し、贈与税控除 |
3.贈与税の非課税制度との重複適用
(1)AとBの組み合わせで、省エネ・耐震性・バリアフリー住宅の取得の場合は、2015年中は年間最大1,610万円(1,500万円+110万円)までの贈与が非課税となります。
ちなみに、1,610万円の通常の贈与の場合、暦年課税(従来の110万円控除)では、贈与税額は410万円(20歳以上の子や孫への贈与の場合)にもなります。
(2)AとCの組み合わせでは、省エネ・耐震性・バリアフリー住宅の場合は、2015年では年間最大4,000万円(1,500万円+2,500万円)の贈与まで非課税となります。親に相続税がかからない可能性が大きいのであれば効果的な方法となります。
但し、Cの相続時精算課税制度では以下のような利用制限があるので留意が必要です。
・制度の対象となる親の相続時に、本制度を選択した贈与財産を「贈与時の時価」にて相続財産に合算し、通常通り相続税を計算する。
・本制度を選択した親から子への贈与は、Bの従来の年110万円控除は利用できない。但し、選択した親以外の親族や第三者からの贈与には110万円の控除の利用は可能。
以
上