金銭の贈与 

平成13年度の税制改正により、贈与税の基礎控除(贈与税がかからない金額)が110万円(従来60万円)となりました。これは、約20年ぶりの基礎控除引上げとなります。この改正は平成13年1月以降の贈与より適用されます。ただし、これは時限立法であり、数年で元の60万円に戻される可能性がありますので、特に金融資産を多くお持ちの方は今年から早速活用されることをお薦めします。複数の人に何年もかけて行えば相続対策としての効果は相当期待できますが、税務上実質的に贈与があったかどうかが問題とされることが多くあります。そこで、以下に金銭の贈与を行う上での留意点につきまとめてみました。

 

1.契約書の作成  

民法上贈与は、贈与者による贈与の意思表示と受贈者による受贈の意思表示をもって成立する契約(諾成契約)行為です。従いまして、贈与者による一方的な意思表示のみでは民法上の贈与は成立しないことになります。夫婦や親子など特殊な関係にある者の間において行われる金銭等の贈与は書面を作成して行われることが少ないので、贈与の事実を明らかにするためにも贈与契約書を作成し、当事者の署名押印をしておいたほうがよいでしょう。

 

2.財産移転の証拠を残す

契約書があっても形式的なものにすぎないことが多いので、客観的にみても贈与の事実があったと認められる状況をつくります。例えば、父から子に現金を贈与する場合、現金を父の銀行口座から子の銀行口座に移し(できれば振込で)、預金通帳に現金の移転の証拠を残すようにします。 

 

3.贈与財産の管理などは受贈者が行う

 贈与を受けた口座の通帳および印鑑は受贈者が管理するようにしましょう。特に受贈者と贈与者が遠隔地に住んでいる場合は、受贈者の銀行口座は受贈者の最寄りに作ることをお薦めします。例えば、子供に現金を贈与したと主張しても通帳も印鑑も父が所持したままでは贈与による財産の移転があったとは認められません。又、父の銀行印を贈与者である子の銀行印としても使っていることもよくありますが、これはダメです。つまり、預金・有価証券などは単に名義を変えただけでは、実質は父の所有財産(つまり贈与がなかったもの)と判断され、相続のときに相続財産として相続税が課税されることになります。

 

4.贈与税の申告・納付を受贈者が行う

 贈与税の申告・納付は、財産をもらった人が行います。例えば、親が贈与税の肩代わりをするとそこにもまた贈与税がかかります。贈与税の立替払は贈与とみなされる危険が大きいので注意が必要です(受贈者が資力を喪失している場合を除きます)。

 

5.生前贈与加算

相続又は遺贈により財産を取得した人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その贈与財産を相続税の課税価格の中に含めて相続税の税額計算を行うことになります。従って、贈与はなかったものとして、相続税の計算を行うことになります。但し、贈与税の配偶者控除の適用を受けた金額に相当する部分は相続税の課税価格に加算する必要はありません。

以 上