金銭贈与による相続税効果  

前回は金銭の贈与について解説しましたが、今回はその効果について具体的な数字を用いて検証してみます。本年は贈与税の基礎控除額引上げに伴い、相続対策としての金銭等の贈与が多く活用されると思われますが、もともと贈与税は相続税を補完する目的で導入されたもので、同じ課税価額では相続税よりも税負担が大きくなるようになっています。従いまして、相続税対策として金銭等の贈与を行うには、相続税の軽減額より毎年の贈与税の累計税負担が少なくなるように贈与する金額を設定する必要があります。そこで、効果的な贈与の金額を次の設例を通じて検証していきたいと思います。

(設 例)

相 続 人         配偶者と子2人

相続財産の課税価額(贈与前) 3億円

贈 与 年 数        10年間

受 贈 者         相続人3人                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (単位:千円)

年贈与金額

110万

260万

310万

360万

460万

贈与税負担額

0

   4,500

   6,750 

  9,750

17,250

相続税軽減額

-5,288

-11,475

-13,538

-15,500

-19,025

差 引 効 果

-5,288

 -6,975

-6,788 

-5,750

-1,775

 

1.年贈与金額は、一年当りの受贈者一人への金額です。贈与総額は、年贈与金額×3人×10年となります。

2.現行税法が当初より10年継続するものとしています。

       注3.相続税の計算上、法定相続分で遺産分割するものとして配偶者税額軽減を適用しています。3年以内贈与税の加算及び贈与税額控除は考慮していません

(解 説)

上記の表では年260万円の贈与が最も効果があります。これは、260万円までの贈与は贈与税の最低税率10%が適用される為と思われます。一方、毎年500万円以上の贈与だと、相続税の軽減額より贈与税負担のほうが大きくなってしまいますので効果はありません。又、受贈者が贈与を受けた金銭等で生命保険に加入することにより納税資金の準備となりさらに効果的です。

 

(留意事項)

1.贈与による財産移転の証拠を残し、贈与財産は受贈者が管理する。(前回本記事参照)

2.法定相続人への贈与は生前贈与加算の適用あり

  相続開始前3年以内の法定相続人への贈与財産は、相続財産に加算しなければなりませんので、その間の贈与の効果はなくなります。但し、孫や子供の配偶者など法定相続人以外の者への贈与であればその影響はなくなりますので効果的です。

3.過去に「住宅取得資金の贈与の特例」を受けている場合

 贈与する年の前年以前4年以内にこの特例を受けている者への贈与の場合は、通常の贈与税より高い贈与税の金額となるよう計算されますので注意しましょう。

4.相続財産の価額は毎年変動する

 上記の設例の試算は、相続財産の価額が変動しないという前提で行っています。実施に当っては、土地や株式などの価額や財産内容の変動を考慮して行うことが必要です。

以 上