遺産分割時の留意点(2)  

今回は前回に引き続き、遺産分割に当たっての留意点について説明します。前回は主とし

て民法上の留意点を中心に説明しましたが、今回は税務上の留意点を中心に説明します。

 

1.不動産の共有は値打ちを半減させる

兄弟間での不動産の共有はできるだけ避けたほうがよいでしょう。共有持分は不動産の利

用や譲渡については他の共有者の同意が必要となり、また代が変わる(相続人からその

子供へ)と利害関係者が増加して関係が複雑になり、ますます不動産の利用や処分が制限

さ れ、値打ちが半減することになります。

「とりあえず均等に共有」というのは一見公平ですが、問題を先送りするだけで、不動産

の維持管理等の責任の所在もあいまいになってしまいます。仕方なく共有で分割した場

合は、遅滞なく、各持分を交換や売買等して完全な持分にされるようお薦めします。

 

2. 遺産分割後の再分割は課税される

相続人全員の合意の上、遺産分割協議が整い、財産についての名義変更が一旦されると

そこで遺産に関する所有権が確定します。又、不動産の相続による所有権の移転時には

不動産取得税の非課税、登録免許税(登記時の税金)の軽減、農地の移転の場合の農業

委員会の不許可等優遇されております。

しかし、名義変更後、「遺産分割のやり直し」、「共有持分の放棄」等再度名義を変更

すると原則として贈与とみなされ、贈与税が課されます。やむをえず財産の名義を変え

る場合は、互いの財産を交換(特例に該当すれば所得税の非課税も可)するか一般の売

買とするしかないでしょう。但し、その場合は前記の相続に関する税金の優遇措置はあ

りませんし、譲渡税が課税されます。

不動産の遺産分割は将来の利用を見越して、@絶対に手放せないもの(事業用・居宅用等)

 A手放してもよいもの(遊休地・不採算地・売却予定地等)に色分けし、@については

代々引継がれることが考えられますので、後にもめることのないよう慎重に行う必要があ

ります。

 

3. 未分割での相続税の申告

  相続税の申告期限(相続時より10ヶ月以内)までに分割がされない遺産があれば、

  その遺産は法定相続分で分割したと仮定して各人の税額を計算して一旦申告納税しますが、

  未分割財産に係る小規模宅地等の減額(事業用や居住用の宅地の一定面積の評価減額措置)

  や配偶者の税額軽減(配偶者の相続税から一定金額の軽減措置)の特例をその時点では適用

  することができないのでその分相続税を多く納付しなければならなくなります。但し、申告

  期限後3年以内に遺産分割が確定すれば、その確定した時点で未分割の遺産に係る上記特例が

  適用可能となり、多く納付した税金の還付をうけることができます。

 又、遺産分割の結果各相続人の税額が当初申告と異なることになれば、各相続人につき

修正申告(追加納付)又は更正の請求(還付請求)を行い税額の精算をします。この場合

各相続人について税額の増減がありますが、相続人の相続税額が増額してもその分割の確

定した財産に係る相続税の延滞税は原則としてかかりません。

 

4. 相続財産を申告期限までに国などへ寄付した場合の非課税

  相続により財産をもらった人が、その相続についての申告期限までにその相続によって

  もらった財産を国や地方公共団体その他特定の公益法人に贈与した場合には、その贈与した

  財産には相続税はかかりません。