バランスの取れた役員報酬

 

小規模法人にとっては、法人と経営者は一体(一族)で収支を考えると効果的です。特に最近は、70%もの法人が赤字ですので、役員報酬を引下げることにより、社会保険料や役員個人の税金が減額され、一族としての支出を抑えることも可能となります。社会保険料は現在でも労使で給料の22.67%(介護保険料含む)もの負担となっていますが、これから段階的な負担増が予想されるので、益々バランスを考えた役員報酬の金額設定が必要になって参ります。以下の事例により、一族としての支出が一番少なくてすむ、会社の利益と役員報酬の組合せを検証していきたいと思います。

 

(前 提 条 件)

法人の利益(役員報酬支給前)1,000万円

A社長:所得控除額 200万円  B取締役:所得控除額 43万円

A・B共40歳以上で、同族関係者、役員報酬(給与所得)以外には所得はないものとします。

社会保険料は平成15年4月以降の改正後の率を適用しています。

税額の計算は一部概算で、税額控除や特別減税、均等割は考慮していません。

                                                             (単位:千円) 

A役員報酬年額

B役員報酬年額

法人の利益

 

法人とA・Bすべての

税金・社会保険料額

0

0

10,000

3,453

2,400

0

7,600

2,968

3,600

1,200

5,200

2,787

6,000

2,400

1,600

2,910

8,400

4,800

-3,200

4,214

 

(解    説)

この事例では、真ん中の組合せが一族の負担が一番少なく、バランスの取れた組合せとなっています。一番下は、法人が赤字にもかかわらず、役員報酬が高額なために役員自身の所得・住民税と社会保険料(法人・個人共)が大きくなり、一族としてはかえって負担が重くなっています。

 

ご覧のように、役員報酬の金額に応じて、法人の利益が変動します。その結果、役員自身の社会保険料と所得・住民税とは別に、法人負担の社会保険料、法人の利益に対する法人税等にも影響し、一族三者の税金と社会保険料負担額も変動します。将来の法人の利益を予測できれば、役員報酬をいくらにすれば一族の支出が一番少なくてすむかを試算することが可能となります。

 

 (留    点)

・役員報酬の金額のうち、法人税法上「不相当に高額な部分」は損金不算入となります。

・取締役会等の決議が必要となりますので、議事録を作成し保管しておく必要があります。

・役員報酬の金額を事業年度の中途で何回も変更すると、差額が役員賞与と認定され、損金に算

  入されなくなることがあります。

・役員が住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、上記と大きく異なることがあります。

・役員報酬の引下げにより役員の生活費が不足する場合は、法人に対する貸付金があれば適宜回

  し補填します。

 

 上記はあくまで現行税制に基づいての記載であり、いずれも税務上の適用要件及び注意事項があります。実施に当っては専門家にご相談の上、ご自身の責任で実行されるようご留意願います。

                           

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