消費税の総額表示
今年(2004年)の4月から、消費者に対する「値札」や「広告」などにおいて価格を表示する場合には、消費税相当額を含んだ支払総額の表示を義務付ける「総額表示方式」がスタートします。これは、「値札を見れば税込みの支払総額が一目でわかるように、消費者の利便性を高めるため」との趣旨のようですが、将来の税率アップに向けた布石との見方も少なくありません。小売業や飲食業、サービス業など消費者を顧客とする事業者さんの中には「総額表示」をすでにスタートしているところもあり、また、4月からのスタートに向けて準備しているところ、あるいは、いまだに表示の方法など決めかねている事業者さんも多いのではないでしょうか。今回は、消費税の総額表示のポイントについてまとめてみました。
1.総額表示の対象は
「総額表示」の義務付けは、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者(免税事業者は義務なし)が行う価格表示を対象とするもので、それがどのような表示媒体によるものであるかを問いません。具体的には、以下のような価格表示が考えられます。
・値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等への価格表示
・商品のパッケージなどの価格表示
・新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
・新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
・ポスター など
2.価格表示の方法は
価格表示の方法は、商品やサービスによって、あるいは事業者によってさまざまな方法があると考えられますが、例えば、現在、税抜価格
9,800円で販売されている商品であれば、値札等には必ず消費税相当額を含めた「10,290円」を表示することがポイントになります。なお、ガソリンや肉の量り売りなどの単価(例100円/ℓ→105円/ℓ)、不動産仲介手数料などの一定割合(例3%→3.15%)も対象となります。
(良い例)
@10,290円 A10,290円(税込) B税込10,290円(本体価格9,800円)
C10,290円(うち税490円)
D10,290円(本体価格9,800円、税490円)
E9,800円(税込10,290円)
ちなみに、「週間
税務通信」が大手小売業者にとったアンケートによると、@はダイエー、イオン、マクドナルド、養老乃瀧
Aは ローソン Bは高島屋、西武百貨店、そごう、三越
(日本百貨店協会 推奨)
Eはマツモトキヨシが採用する予定だそうです。
(ダメな例)
@(税抜)9,800円+税 A9,800円(税抜) B(税抜)9,800円(税490円)
※どこにも「10,290円」がない
3.違反するとどうなるか
消費税法上の罰則規定はありません。しかし、景品表示法に引っかかる可能性もあり、また、同業者が総額表示に移行するなかで、総額表示を行っていなければ企業イメージが失墜する恐れもあります。
4.レジシステムの変更も必要?
「総額表示義務」は、レジシステムの変更を義務付けるものではありません。しかし、「総額表示」の下で、これまでのように「税抜価格」を基に計算するレジシステムを用いた場合には、下の例のような問題が生じ、消費者との間でトラブルが発生する場合があります。したがって、このような場合(税抜価格が20円で割り切れない商品等を扱っている場合)には、
「税込価格」を基に計算するレジシステムに変更するなどの対応が必要になると思われます。なお、そのプログラム修正費用は原則修繕費となります。
「税込94円」とかかれた商品を10個販売した場合
(94円は本体価格90円に消費税5%を端数処理し加算)
@「税込価格を基に計算」 94円×10個=940円
A「税抜価格を基に計算」 90円×10個×1.05=945円
←レジで5円多く支払わなければならない
5.端数処理の方法は
販売業者の対応はまちまちで、従来の税抜価格を維持し実質値下げをするところもあれば、5%上乗せし円未満を切上するところもあります。そんな中で、モスバーガーは1円単位を四捨五入し、すべて税込価格を10円単位とすることにしました。商品によって値上げと値下げがあり、全体では相殺できるそうです。つり銭で1円・5円硬貨が不要となるので、効率的にもなるとか。なお、従来の消費税法施行規則の端数処理規定は廃止されますが、レジシステムが間に合わないなどの場合は経過措置があります。
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