Fool's Paradise
〜苦悩と自己啓発の日々(苦笑)〜

-3.training-

あいかわらず聖書についての講義が続く。

合間に入る映画鑑賞の日は、まだ気が楽だったが

そう感じられたのも初めのうちだけだ。

なぜって?題材が、旧ユダヤ世界を扱ったものや

信仰を全うして死んでいった殉教者の話ばかりだったから。

たまにそういうものを観るのは、感動できていいけど、

こう毎回「その手」の話ばかりじゃ、さすがに食傷気味。

いかにも、「どうです?感動するでしょ?立派な人達でしょ」

と言わんばかりにみせられるのは、ちっとも楽しめない。

しかも必ず、見終わったあとに、例の「補講」がついてくるのだから・・・。

講義の内容は、だんだん、聞いているのがつらくなってきた。

根底を流れる思想は、完全なる自己否定。

神の意志に背いた罪を背負う人類は、その罪故

現在の自己をすべて捨て去り、今の価値観を否定して

神の意志に従う心にならなければ、救われないんだと。

自己にとらわれているのは、素直になれない汚れた心なのだと。

そして神に従えない罪故に、良心がその罪悪感にさいなまれて

いろいろな苦しい想いを抱いているのだと。

・・・・つまり、今いる私のすべてを、否定されている。

そして、その否定の苦しみを乗り越えて、確固たる信仰心を得よと言われ続ける。

ビデオ講義の回が進む毎に、その主張は激しいものになっていく。

わからない。

講師の主張も、インストラクターの説得も、私にはどうしても納得できない。

でも、その理解できない心が「罪」だという。

「真実の見えない心」に堕落しているという。

真実って・・・何?

行くのが億劫になってきたなあ。

でも、毎回「今度はいつ来ます?」と確認されるし、

急用で予約をキャンセルすると、紹介者のMから電話が来る。

忙しさを理由に予約の間隔を延ばしてみた。

「うーん。あんまり間があいちゃうとねえ。

 できれば週1回じゃなくて、間にもう1回くらい入れて欲しいんだけど。

 水曜日か木曜日に来られないかな?」

・・・来いってことか。

 

あそこの人たちに共通する匂いを最近見つけた。

口調や物腰は一見穏やかだが、反論を許さない強引さがある。

あれやこれやと理論武装で、説得を重ねてくる。

私からみれば矛盾だらけの理論武装だけど。

でもその矛盾点をついて反論してみても、またべつの理屈を持ち出し

だんだん論点をずらされてしまう。

ラチがあかない・・・・・。

短気で面倒くさがりな性分の私は、結局いつも

このしつこさに、いいくるめられてしまう。


そんな調子で気が乗らないながらも相手の強引さに押され

ずるずると退会を切り出せないまま、月日だけが過ぎていく。

短期集中合宿セミナーというものも、夏・冬の年に2回行われ、

話の流れでそれにも参加する羽目になる。

見知らぬ人ばかりの集団。なのに到着するなり

「おかえりなさーい」と迎えられる。初対面なのに。

あんたら、誰よ(苦笑)

そういえば、紹介者Mも、よく

「初めてなのに、みんな初めて会った気がしないんですよねー」

なんて、能天気な感想を言っていた。

確かに人はよさそうな人たちばっかりだけど、あいにく

わたしはそこまで初対面の相手になじみやすいタチじゃあない。

でも、せっかくの休暇とお金とを費やして

どのみち参加するなら、せめて楽しまねば・・・と

半ばヤケクソ気味の乗りでレクやゲームに参加している私がいた。

 

そうして、1年とちょっとの後、ようやく

15回シリーズの講義が最終回を迎える日がきた。

これで終わる・・・今日行けば、それですべて終わる。

入会時の契約では、支払った会費での参加は

15時間1クール分までになっているはず。

この最終回の講義を聞いたら、もう二度と・・・。

そう、すべて終わるはずだったのだ。 

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