ニャン太郎 ねこの2001年登頂記

(Update:2001/08/10)

● 21世紀最初の登山の登頂記。
・前日まで。
 本来は1週間前の7/29-30を第一候補としていたのだが…。首痛でやむなく断念。
 第二候補であった8/5-6は、週間天気予報によると雨。「中止」の二文字が頭をよぎる。
 あらゆる天気予報を眺めては一喜一憂する毎日。幸運にも天候は回復傾向の兆しが。
・現地へ。
 かろうじて雨は降っていないものの、あいにくの曇天模様。12:00出発。
 不安一杯な気持ちで車を走らせていると案の定、相模湖近辺で小雨がパラつき出す。
 「現地は大丈夫なのではないか?」というかすかな望みも虚しく、河口湖IC手前で
 ねこの目に飛び込んできた景色は、富士急ハイランドの後方に広がる真っ白な雲ばかり。
 ”中止”と”強行”の二択の結論を出せないまま、河口湖の湖上際に向かう渋滞の列を
 かいくぐり一路スバルラインへと向う。中央道の自然渋滞の影響を受け、IC通過は14:00。
・5合目。
 途中、対向車が見えないほどのガスに包まれたりもしたが、5合目近辺に近づくにつれて
 日差しが見え隠れする様になる。15:05、5合目到着。日曜の午後ということもあり、
 すんなり駐車場を確保。見上げると、時折ガスに包まれることはあるが、山頂を視認。
 洋上に台風が発生しているのは気になるが「いける!」と判断。はやる気持ちを抑えつつ
 神社で登頂の安全を祈願。賽銭を奮発し105円を投げ入れ、必死に拝む。
 売店でハガキを購入して車に戻り宛名書きを済ませる。横になっても興奮で眠れる
 わけもなく、ラジオを聴きながらその時が来るのをじっと待ち続ける。
・登頂開始。(2,305m〜2,390m)
 17:30。腹ごしらえと身支度を済ませ、いよいよ登頂のスタート地点に向かう。
 5合目の広場には数多くのツアー客が群をなして、説明を受けたり「エイ・エイ・オー」という
 雄叫びを残し登山に向かったりしている。ねこも広場の片隅に重いリュックを下ろし、
 入念に準備運動を繰り返す。「待ってろよ…」 心の中でそうつぶやいた。
 18:00。登山口に向けて一歩を踏み出す。いつもなら眼下に広がる湖と樹海が今回は全く
 見えない。「湖上際の花火は見れそうもないな」と思いながらも、目的は登頂であることを
 肝に命じ、雷予防のラジオを聴きながらゆっくりと歩を進める。
・登頂前半。(2,390m〜3,020m)
 今回は山頂に4:00到着を目処に登ることにしていた。別にご来光を山頂で見れなくても
 測候所にたどり着ければよい。標準時間より逆算すると、8合目の太子館を0:00出発
 すれば丁度良い。となると、前半の約700mは6時間をかけて登る必要がある。
 「やばっ、出発がまだまだ早すぎた!」。標準時間丁度で到達した6合目の穴小屋で
 その事実に気づき、早くも15分程の休憩を取る。前半は体力を出来るだけ温存しながら
 ゆっくり登ることにした。河口湖の花火が始まったようだが、音はすれども花火は見えず。
 登り始めて2時間40分後、中日敗戦。思わずラジオをTBSからNHKに変更する。
 道中、都合3度、計1時間もの長休憩を挟む。止まって休んでいると身体がふるえるほど
 寒い。新聞紙を腹巻き代わりに巻く。これが案外暖かい。3000m地点の東洋館で休憩中、
 山小屋のおじさんがねこの金剛杖に目を付ける。「焼き印押せるところが無いじゃないか」
 一人優越感に浸る。気付いてくれたのはおじさんだけだよ〜。ありがとう。
 23:30。太子館到着。予定より30分早い。そのまま30分休憩して時間調整する事にする。
・登頂後半。(3,020m〜3,700m)
 予想以上にツアー客が多い。”土日”は一般客の登山者が多く大変混むので”日月”に
 ツアーを組む会社が多いようだ。混雑すると山頂手前の岩場で待ち行列が発生することは
 以前経験していた。日の出まで5時間弱。相当混雑したと仮定しても、十分ご来光には
 間に合う。ツアーの列に加わり、一緒に登り出す。混雑のためか予想以上に遅いペース。
 「これなら休憩しながら登っているのと同じだ。」と余裕たっぷり。黙々と歩を進める。
 1:30。富士山ホテルに到着。一度列を離れ、人影のない展望台に一人腰を下ろす。
 自由に休憩できるのが団体行動には無い強み。軽食を取り、山頂までの鋭気を養う。
 風は穏やか。冷たい空気にさらされながら今来た道を見下ろしてみる。登山道に沿って
 懐中電灯の明かりが列となり、ぞろぞろとうごめいている。一体何人居るのだろう?
 再び列に紛れ込み山頂を目指す。ツアー客は変な連帯感みたいなものがあるのか、
 全く列を乱すことなく1列になって登っている。もっと道幅一杯に歩いたり、緩やかな
 ルートを歩けば楽に登れるのに。ねこは一人で見当違いなルートを歩きながら列に
 加わったり離れたりを繰り返す。きっと「何やってるんだ?」と思われているに違いない。
 山頂近くになると道幅が狭くなり、とうとう1列になってしまった。仕方なくその列に加わり
 前が登るのを待って登る。どこぞのおっさんが、ねこのリュックに頭突きをかました。
 足元ばかりを見ているので、前が詰まっているのがわからなかったんだろう。仕方がない。
 3:54。山頂に到着。空が徐々に白みかけてきた中、5度目の登頂を果たす。
・ご来光。
 予想よりは人が少ない。まぁ、日の出まではまだ1時間もあるのでこんなものか。
 日の出前の時間が1日で1番気温が低いのは富士山頂も例外ではない。しかし、去年の
 コンディションと比べると遙かに暖かいような気がする。思えば去年は暴風の中、
 日の出前の2時間をただひたすら寒さに耐えてふるえていたんだっけ。雲泥の差だ。
 開いたばかりの久須志神社で御朱印を押してもらう。混雑する前に押せたのは運がよい。
 山小屋では客引き合戦が繰り広げられている。「温かいコーヒーありますよ〜!」の声に
 惹かれたが、持参した携帯コンロを取り出し湯を沸かしながらコンロの炎で暖を取る。
 普段はあまり飲まないコーヒーだが、山頂で飲むと冷えた身体に染みわたるほど美味い。
 徐々に山頂の人口密度が増えてきた。山小屋前の展望台は、我先に前に出ようとする
 おばさん達でごった返してきた。多分、一生に一度の思いで来た方々なのでしょう。
 座ってくつろいでいるねこの前はすっかり人が溢れ、背中以外何も見えなくなっていた。
 こうなるのは百も承知。荷物を片づけると歩いて5分ほどの大日岳に向かう。
 小高い山の上に鳥居が立つこの場所は人も多くなく、ご来光を拝むには絶好のポイント。
 一面に広がる雲海。オレンジ色に輝く東の空を見つめ、カメラを構えてご来光を待つ。
 4:54。ねこが21世紀最初に富士山頂で見るご来光が顔を出す。感無量。言葉がない。
   雲海
・お鉢巡り。
 日が昇ると、徐々に暖かくなってくる。大日岳を下り、まず浅間大社奥宮を目指す。
 景色が雲ばかりという以外はほぼ完璧といえる天候に「来てよかった」と再び悦に入りながら
 結構アップダウンがある道をしばらく歩くとNTTの山頂出張所が見えてきた。
 一昨年は設置されていた山頂ライヴカメラは設置されていなかった。何度アクセスしても
 繋がらなかった訳をやっと理解した。しばらくして奥宮に到着。御参りを済ませ、すぐ横に
 隣接している山頂郵便局に入る。狭い小屋の中にひしめき合う人々。ハガキを出して早々に
 退散。いよいよ剣が峰へ向かう…と、その前に用足し。(^^ゞ 今期から”バイオトイレ”なる
 ものがお目見えしたので見学に。「トイレが汚い」という苦情が多いので、新たに新設した
 との事。”郷に入れば郷に従え”というではないか。そんな不満を言うならわざわざ登りに
 来るな!ということで、バイオトイレに並ぶ列を横目に昔からある方で用を足す。
 う〜ん、強烈な臭い。気を取り直して、いよいよ目的の剣が峰へ向かう。
・剣が峰。
 ねこは、富士山で一番キツイ登りは剣が峰の直前。”馬の背”と呼ばれるこの坂だと信じて
 疑わない。二足歩行ではおそらく登りきれないほど急で滑りやすいこの坂を、金剛杖を
 巧みに使って登り切る。自身4度目の馬の背。すっかり慣れたもの。(一昨年2周したので4度目)
 今年で取り壊されてしまうかも知れない旧レーダードーム。近くで見ると確かに老朽化して
 いることは否めないが、シンボル的な存在となってるこの建物は是非とも残してもらいたい
 物なのだが…。一通り写真に収め、展望台に行ってみる。先客が居たのでしばらく順番待ち。
 展望台からは測候所の裏側からを写真に収めて辺りを見回してみる。中央アルプスと
 思われる山並みの先端がかろうじて見える。頂上から見た下界の唯一の地表。
 それにしても見事な雲海。こんな景色もまた一興。
・下山。
 お鉢巡りを終え、山頂の山小屋で休憩を取る。時刻は6:30。既に”ご来光ツアー”と
 銘打った客は下山を開始した後で、山小屋内は閑散としている。個人的な仲間で来た
 人達だけのようである。ピーク時には声を張り上げて客引きをしていたお兄さん方も、
 自分の持ち場についてのんびりと接客している。ねこも朝食を済ませ、自宅に公衆電話で
 電話する。6:45。もう、起きているだろう。母様からの一言目は「残念だったね」。
 後で聞いてみれば、下界では薄曇だというから無理も無い。「焼けるほど良い天気だよ。
 来てよかった。これからのんびりと降ります。」とだけ伝えて電話を切る。
 この年になっても、親というものは子供の心配をするらしい。もう5回もの登山を経験した
 というのに。山頂限定のお土産を見て回る。キーホルダーで1,000円もする。
 刻印を打ってくれるので、一つぐらい贅沢しても良い。自分以外のお土産だけを購入。
 店番のお兄ちゃんが「刻印を間違えたから、おまけ!」と言って、そのキーホルダーをくれた。
 ”平成12年”と打ってしまったらしい。とてもありがたい。
 宣言通りちんたらと下山を開始する。あれだけ時間をかけて登った頂上が見る見る
 遠ざかって行く。何度見ても空しくなる光景だ。下山は単調。根性だけでは体が持たない。
 ついに右膝の古傷が痛み出す。激痛が走り、曲げることが出来ない。休憩時間が自然と
 長くなる。なんとか6合目までたどり着く。馬の誘惑に強烈引かれたが、なんとか自力で
 下山を果たす。5合目の客引きは、皆”プレゼント引換券”と称したチケットをくれる。
 自分の店に入って欲しい魂胆見え見えの戦略。頂けるのは小さな鈴と、お茶が無料で飲める
 程度。全てのチケットを貰い、サービスは受けておこう。バチは当たらない…はず。(^^ゞ
・総評。
 今までで一番不安を抱えながらの登頂がこれほど素晴らしいものになったのは、ひとえに
 日ごろの行いか?(≧∇≦) 天候も良く、何より無事に行って来れたのだけで幸せでした。
 …筋肉痛がかなり激しく襲ってきたのですが、これはご愛嬌。(^^ゞ
 来年以降も、噴火などしないと良いんだけれどなぁ〜。

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