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タイトルサンダカンの海
記事No2374
投稿日: 2015/10/03(Sat) 18:24:33
投稿者桃青
母が亡くなって、毎日、母を思わない日はない。

ふと気が付くと、母のことを考えている。

亡くなった後に、「お母さんはね・・・。」と母のことを私に告げるひとが時々いる。

生きている時は、「良いお母さんだ。良いお母さんだ。」と褒めてくださるかたばかりだったのに、
亡くなった後、母について聞くのが辛いようなことを私に告げるひとがいる。

晩年の母は認知症だったので、方々の私の知らないところで奇矯なふるまいをしていたらしい。

その奇矯な行動の一つ一つが私に告げられる。

認知症から来る症状として、そのようなことはしていただろうと思うので、

「知らないところで御迷惑かけていたのですね。申し訳ありません。」

と、ひたすら謝る私に、追い打ちをかけるように、

「実は、こういうこともあった。ああいうこともされた。」

と、母の狂態を次々と聞かされるのは子供としては本当に辛い。

どういうつもりで、そのようなことを私に言うのだろうか。

話しぶりからは、今までも、母の狂態を周囲に告げて「あの、しっかりした人がねー。こういうことして・・・」と、笑っていたであろうことがうかがえる。

母は、その人たちのことを友人だと思って、あれこれと気遣いしていたのに。

母が可哀想でならない。

母の人生を思うと、なんと報われないことの多い人生だったかと思う。

南無妙法蓮華経。

タイトルRe: サンダカンの海
記事No2375
投稿日: 2015/10/03(Sat) 18:45:07
投稿者桃青
母を想う時、

山崎朋子『サンダカン八番娼館-底辺女性史序章』に描かれたある情景が、イメージとなって、母と重なる。

からゆきさんとして売られた少女たちが、自分を待ち受ける過酷な運命も知らずに、南国の浜辺でその年頃の少女らしく、無邪気に海で戯れる。

母にもそんな時があったに違いない。

待ち受ける過酷な人生を知らずに、将来の幸福を信じて疑わなかった時があっただろう。

20歳の記念写真に写るの母の澄んだ瞳を見ると、涙があふれて来る。

誠意を尽くし、誠実に生きて、でも、報われることが少なくて、

それでも気をとりなおして誠意と誠実を尽くして・・・。

タイトルRe^2: サンダカンの海・・・父と母
記事No2376
投稿日: 2015/10/03(Sat) 18:49:28
投稿者桃青
母が一番、報われない思いをしたのは、

私の父に対して尽くした誠実であろう。

タイトルRe^3: サンダカンの海・・・父と母
記事No2384
投稿日: 2015/10/22(Thu) 01:23:09
投稿者桃青
「死後の世界へ一つだけ思い出を持っていけるとしたら、どの思い出を持って行きますか?」

以前、こんな問いかけがテレビ、週刊誌等で流行ったことがあった。

その時、私の「おかあさんは?」という問いかけに、母はこう答えた。

「春の山の田で、赤ん坊だったお前を畑の脇に寝かしつけてね。
おじいさん(舅)と、畑仕事していた、あの時。かなあ。
まだ、お前の父親の横着もはじまってなかったし、あの頃は本当に良かった。」

母は自分が子供の頃の思い出話をよくしていたので、あの世にもって行きたい一つの思い出も、当然、子供だった母と母の両親の思い出かと予想していたのだが、意外だった。

父については、良い話を聞いたことが無かったので、父に関しては嫌な思い出ばかりで、父と暮らしていたころのことなど思い出したくもないのかと想像していたのだが・・・。

母にも新嫁さんとしての幸福な日々が確かにあったのだ。
春の長閑な里山を背景に、ひばりの鳴く田地で、自分を可愛がってくれる舅と好きな畑仕事をする母もまた、サンダカンの海で遊ぶ少女のように、まもなく悲しい運命が待ちうけていることを知らなかったのだ。
初の内孫である私を父の両親である祖父母も同居していた父の弟もずいぶん愛しんでくれたようなので、私を傍に遊ばせて畑仕事する母の幸福そうな笑顔が眼に見えるようだ。
母は何歳だったのだろうと、数えてみたら、この時、24歳。
父は30歳。

タイトルRe^4: サンダカンの海・・・父と母
記事No2386
投稿日: 2015/10/22(Thu) 12:13:14
投稿者桃青
父と母が結婚したころ、父は農協に勤めていた。
そのまま、真面目に農協に勤めていたら、父にはキャリアもあり、家もよいほうだったので、順調に出世して行ったのではないかと思う。
同じ農協に勤めていた父の弟は、その後農協の組合長になり、後に地域の農協が統合された時も統合された農協の初代の長になり、自民党から県議にも出るというように活躍し、何かの勲章をもらって夫婦で皇居にも行ったようだ。
父もまた真面目に勤めていれば、叔父ほどではなくても、それなりの地位を農協で得ていたのではないかと思う。
しかし、父は真面目に勤めることにあきたらず、職を辞めて事業を起こした。
母が「一番大切にあの世まで持って行きたい。」と言った思い出は、
父がまだ事業を起こそうという野望を持たず、定刻になれば妻子の待つ家に戻り、両親兄弟、若妻と幼い子供と、和気藹々と夕餉を囲んでいた日々のことだろう。家族の間で様々な小さい衝突はあっても、母はこのまま、穏やかな日々が続くと信じていたに違いない。

農協を辞めて事業を起こす、と言い出した父に母は勿論、父の両親、兄弟、母の兄弟も驚き、こぞって反対し、計画を断念するように、説得したという。
「曽祖父の山っ気が出たのだ。」と、周囲は嘆いたが、曽祖父は亜炭で一儲けをたくらんで失敗し、家産を大いに傾けたひとである。
その息子である祖父の真面目な頑張りで、なんとか持ち直したものの、「構えに相違して、内情はこんなにも苦しいのか」と、新婚の母を驚かせたような状態だったらしい。
周囲が「きっと失敗するから。」と、必死に反対するには、曽祖父の失敗だけではなく、父が立てた事業計画自体にも周囲が心配するだけの理由もあったのだが、父は押し切って事業を始め、一年も経たないうちに行き詰まり、債権者が家に押しかけて来るようになったという。
父はこのころ、31〜32歳。

母はおカネの工面に走り回る苦労の日々だったようだが、父もまた失意やら、母や周囲から責められるやら、で、さぞ面白く無く、心も経済も苦しい日々であったろうと思う。
父は、母より2歳年下の女性と付き合い始め、家へ殆ど帰らなくなった。

タイトルRe^5: サンダカンの海・・・父と母
記事No2393
投稿日: 2015/10/31(Sat) 12:23:36
投稿者桃青
大人たちの間で、どのようなやりとりがあったかは詳細は解らないが、気が付いたら母と私は伯母(母の姉)の婚家で暮らしていた。
女性が妊娠したことで父と母は離婚したようだ。
後年、必要があって戸籍を調べたら、父と母の離婚後、直ぐに父と女性は入籍、その6か月後に女の子が産まれている。
当時父は32歳、母は26歳。そして私、3歳。

母と私のような立場を居候と言うのだとは、後から知ったことで、私は、伯父や伯母、従姉たちが親切に接してくれるのを良いことに、のびのびと暮していた。
伯母の夫である伯父は、会社の経営者として成功し、後に業界の会長もつとめ、某政党党首の後援会長もし、こちらも勲章をもらって、夫婦で皇居へも行っている。
私と母が身を寄せた当時は、まだ会社を興したばかりだったようだ。
希望に向かって頑張る伯父と伯母の元で従姉たちと姉妹のように過ごした日々。
思えば、あれは私のサンダカンの海だった。

タイトルRe^2: サンダカンの海・・・母と私
記事No2379
投稿日: 2015/10/08(Thu) 08:32:06
投稿者桃青
そして、母は私にもまた、父と同様に報われない思いをしたのだろうと思う。
「親子して・・・」と、母は嘆いていたような気がしてならない。

タイトルRe^3: サンダカンの海
記事No2381
投稿日: 2015/10/21(Wed) 03:24:59
投稿者ぽん州
> そして、母は私にもまた、父と同様に報われない思いをしたのだろうと思う。
> 「親子して・・・」と、母は嘆いていたような気がしてならない。

僕と桃青さんは全く違うけど 一言言わせていただければ
宝浄世界に遊ばれた母上は 霊山浄土で ”娘には本当に感謝している娘には本統の幸福を求めてもらいたい”と唱題合掌されてることでしょうね。久遠の本仏を信じるということなんだと思います。 僕の母親が亡くなった時、 この人は認知症だったけど すべてを明快に理解していたんだと思いました。

タイトルRe^4: サンダカンの海
記事No2383
投稿日: 2015/10/22(Thu) 00:48:12
投稿者桃青
ぽん州さん 

お言葉ありがとうございます。
確かに母は努めて感謝を忘れないひとでしたので、そのように思っていてくれるのかもしれません。
私の周囲の先達のかたがたも、ぽん州さんのように言われます。
私もそのように思えたら、気が楽なのですが・・・。
私は、母が自分の誠意が相手に通じなかった時、また思いを裏切られた時の悲しげな顔を知っていますので、決して報われたと言い難い人生を送った母が、それでも、私に感謝しようとしていてくれるのかと、母が可哀そうで、涙があふれて来るのです。

>僕の母親が亡くなった時、 この人は認知症だったけど すべてを明快に理解していたんだと思いました。

ぽん州さんのお母様、生前の行業の素晴らしさが伝わります。
南無妙法蓮華経。

タイトルRe^5: サンダカンの海
記事No2389
投稿日: 2015/10/25(Sun) 09:56:42
投稿者ぽん州
この記事に対してレスしましたが 読み返すと気持ち悪い文章だったので削除しました。