(織田ドラマTOP)
(織田ドラマTOP)
長く主演をやっている者の宿命なのか、どこか過去の作品を思わせる設定。
しかも今回もそれは確信犯であった。
あの「東京ラブストーリー」と同じプロデューサー、同じ脚本家、同じ「織田裕二」。
主人公の勤める会社が同じ「ハートスポーツ」で同じ放送枠。
おまけに「月九の復権」としてそれらの条件を宣伝に使う制作陣。
どう考えても「東京ラブストーリー」と比較され、あるいは2番煎じと思われるのは宿命であった。
しかし、きちんと見た者にはイイコトがある。
そこで見られたものは、素晴らしい主人公を擁した素晴らしい作品であった。
それはファンタジーである。
現実にありそうで、しかし絶対にありえないが、心からあって欲しいと願える、そんな物語であった。
かつて「東ラブ」で描かれていたのはリカのカンチへの一途な想いとその行方であった。
その経過に視聴者は一喜一憂し怒り涙した。
結局は、恋が叶うか否かの恋愛ゲームが描かれたドラマだった。
それに対しこのドラマで描かれていたのは、
一人の男の愛し方と、愛する人、愛してくれる人のいる素晴らしさであった。
織田裕二は「東ラブ」における「カンチ」のキャラクターがよほど納得いっていなかったのであろう。
この作品の春木健次を見ればそれがよく分かる。
春木健次はブレない。
仕事上でも、スキー事業からの撤退という逆境に直面しながら、
それでも諦めずにスキー板の開発の夢を追い続ける。
そして青井由季との恋愛においても、別れた婚約者・仁美の求愛にも心を揺らさず、
「後悔しないように由季を好きでいたい」と仁美に告げる。
友人として仁美の力になりながらも、仁美の彼を由季から取り戻そうと発した言葉に、
まず由季のことを想う。
前向きに、決してブレない、
おそらく織田自身が納得のいくキャラクターであろう男の姿がそこにはあった。
怒涛の展開で健次と由季は出会い、お互いを知り、好意を持ち、付き合うようになる。
そして、仁美の登場、由季の病気の再発と試練が襲う。
その展開の速さは、いみじくも織田が「3年くらい経ったかのよう」と言ったようにかなりのスピードである。
しかしそれは、この物語が「恋が叶うか否か」を描いたものではなく、
「その先」までをも描いたがゆえの展開の速さであった。
健次と由季が付き合って以後の展開は、
「恋がどうなるか」ではなく「愛し方」と「愛のあることの素晴らしさ」が描かれていた。
仁美の登場も由季の病気も、それは二人の愛で乗り越えていく障害物の一つに過ぎなかった。
だからこそ、由季の病気の描写も病名や症状に深く言及するものではなかったし、
仁美も決して悪人とはならなかった。
由季の病気も最終的にはあっけなく回復したかのように話は展開した。
そこに描かれていたものは、
あくまでも春木健次という男の愛し方と愛することの素晴らしさであった。
そして、織田裕二はそれを見事に演じきっていた。
由季や他の共演者の演技を受け止める形での微妙な細かい演技は秀逸であった。
そして見てる方が恥ずかしくなるような台詞も上手くこなしていた。
ロマンチックコメディという形に乗せて軽やかに愛の素晴らしさを描いたこのドラマは、
個人的には「東ラブ」よりも納得のいく素晴らしい作品であったと思う。
もちろん「劇的」「インパクト」「社会現象」といった派手さはないが、
しかし世間的にももっと評価されても良いドラマではないかと思う。
織田ファン視点から見ても、織田のネコミミやサンタコスプレ、
そして彼自身初という涙を流しての号泣シーンなど見どころは満載であった。
21世紀最初の満足のいく「織田ドラマ」として、賞賛したいと思う。