(織田ドラマTOP)


(織田ドラマTOP)

織田ドラマ
真昼の月
富樫直樹はごくごく普通の青年であった。
しかしやはり、織田の得意な心に傷を抱えている男であった。
そんな男が恋をし、その彼女の心の傷と闘う。

彼女の「事件」
それは観る者にとって衝撃的な映像であった。
そして、「それ」と闘う彼女と直樹。

正直なところ、彼女の「傷」の描き方が類型的であることは否めないと思う。
そして、それを受けとめる側の直樹の葛藤も。
しかし、そこで提示されているテーマは実に重い。
吾郎の物語をもっと削って本筋をもっと深めていれば、
その「重さ」をもっともっと受け止めきれていたのではないかと思う。

初回の直樹の恋に落ちて行く過程が実に微笑ましい。
犬をめぐるふたりの会話。
(織田裕二にはなぜか犬もよく似合う)
彼女を励まそうと一所懸命に石を投げる直樹の姿。
和やかで温かい気持ちのイイ場面が展開される。
そして、その気持ちのよさが、ふたりが事件をのりこえた後に戻ってくるのである。

直樹を演じる織田の葛藤もかなりなものだったろうと思う。
自分の傷だけでなく、「彼女」の傷を理解し、乗り越えるという、
実際に経験してさえもおそらく乗り越えるのが難しいであろう出来事を、
演技で成し遂げようというのだから。
実際、その完成度に疑問は残るものの、
直樹の葛藤と苦しみは充分に伝わってくる。
先にも述べたように、脚本においてもっと深めてあれば、
演技の完成度も上がったのではないかと思う。
この脚本においての演技としてはあれでベストだっただろう。
いつか、もっともっと完成度の高い脚本で、
こういった分野の深いテーマでの織田の演技を見てみたいものである。