(織田ドラマTOP)
(織田ドラマTOP)
20世紀最後の数年間、織田裕二はヒーローであった。
青島俊作、富樫輝男。
彼らの勇気と信念に人々は惹きつけられた。
そして21世紀の最初、織田裕二はボンヤリしたサラリーマンを演じた。
一緒に暮らしていた彼女が出ていったのに1週間も気付かない。
同期の中で一番最後に、10年かかって主任になる。
人に言われて初めて、出ていった彼女を探しにいく。
「帰ってきてくれって言いに来たんじゃないの」と問われて「わかんない」と返す。
宇宙飛行士に憧れた男は、夢を追えずにいた。
偶然出会った2人の友人と接する中で、
彼は自分を見つめなおし、ひとつ乗り越えていく。
平凡なテーマではあるが、素晴らしいキャストと脚本家を得て、
それは、珠玉の名作になるはずであった。
しかし、残念なことに織田の体調不良のため、11話が7話に中断・短縮となり、
良い作品とはなったものの、名作にはなりそこねた。
非常に残念なことである。
小林晋平は、90年代後半以降に織田のファンになった人には、
ある意味、衝撃的なキャラクターであったかもしれない。
特に「ヒーロー織田」に憧れた人は、あまりのボンヤリぶりに驚いたことだろう。
しかし、小林晋平というキャラクターは、新しい織田として人の心を捉えた。
小林晋平の想いに、あるいは同調し、あるいは考えさせられ、
そして、共に「ひとつ乗り越えた」人もいたに違いない。
小林晋平は「良い」キャラクターであった。
良いキャラクターであったが、しかし、やはり中断は大きかった。
織田は、当時の状態において、ベストの選択をし、ベストの演技をしたが、
中断により役の掘り下げが、やや足りなかったのは否めない。
また、短縮により、当初の構想より話の展開が早くなった。
それは、テンポが速くなったとも言えるが、浅くなったとも言える。
そして、織田の体調から考えられた「骨折」という設定により安易に流れた部分もあった。
本来なら、宇宙飛行士試験の面接での小林の台詞は、
小林の昔からの憧れ・深い想いを、素直に素朴に表現した台詞となったはずである。
そういった点から、織田の作品としては「完全な」ものとは言えないと思う。
実に残念なことであったが、あの時点で織田がベストを尽くしたことは間違いない。
21世紀第2作目の「完全な」織田作品に期待したい。