青春の能登半島(携帯版)
夜行急行の、気を抜けばバタバタと勝手に戻ってしまうインチキリクライニングシートに悩まされ、寝不足でヘロヘロになりながら降り立った金沢駅。
そこから一気に北上!能登半島に突入!
舳倉(へぐら)島。
能登半島・輪島の沖合い数十キロ、日本海の孤島。
「離島の旅」という写真集を見て憧れる。
船は一日一往復。
輪島9:00→12:00舳倉島15:00→18:00輪島(当時)。
たった3時間の滞在を覚悟で、20歳そこそこのワタクシは、漁船の親玉のようなチンケな船で大海原に!
見渡す限りの青い海!
どこからともなく現れたイルカ!
船に並んだり下をくぐって反対側から現れたり。
トビウオだって負けてはいない!!
単なるジャンプだけではなく、右に左に、ちゃんと旋回するのだ!
全く無人、岩だけの能登七つ島を通過し、舳倉島に上陸。
磯に囲まれた小さな島。
海っぺりを散策するうちに・・・・
いつしか14:40、帰りの船の出港時刻が迫る。
なごり惜しげに港に向かう。
途中にある、島唯一のなんでも屋でラムネを買い、店の時計を見ると・・・
15:10。
30分も進んでいる。
なるほどねー!時を超越した島!アバウトだねー!
などと港につと・・・
ふ・ふ・ふ・船がいないぃぃぃ!
イロイロと考える。
出港時間まで、どっか別の場所に停めてあるのかなぁ?
そんな新幹線みたいな事をする訳も無く、船の姿を見ないまま出向予定の15:00を過ぎる。
そこいらにいる漁師のおっちゃんに聞いてみる。
「船が早く出たぁ?いいや!時間どおりでたよ!15:00に。今ぁ?15:30だよぉ」
そ・そ・そんなぁ!!
上陸時には合っていた時計。
滞在中に30分の空白の時が過ぎたぁ!!
先ほどのなんでも屋に戻り、事情を説明。
ただ一軒の民宿を紹介してもらう。
泣こうがワメこうが、明日の15:00までは船は出ないのだ。
開き直って北側の海岸を探検。
お~っとぉ!一面のゴミ!
洗剤容器などが散乱!
なんてこったい!こんな所までゴミ公害!
えっ?ふとみると・・・
文字はすべてハングル文字。
おお!異国からの漂流者たちよ!!
いつのまにか、ゴミまでもが旅愁を誘う。
小高い岡の上から眺める夕焼け。
オレンジ以外の色の存在を許さない、燃えるような夕焼け。
空だけでなく灯台、そして海までもがオレンジに染まる。
宿に戻ると、ディナーは
「あわびメシ!」「山盛りのサシミ!」。
るーび片手に我が人生の幸せをむせび泣きながら、水平線にわずかに残るオレンジのラインを眺めつつ、離島の夜は更ける。
翌日。
朝から磯辺で過ごす。
昼過ぎ頃、いかにもドリフのコントにでも出てきそうな、探検隊の様な衣装を着た、学者風じいさんが現れる。
「君かぁ!昨日、乗り遅れたってのはぁ!」
ゲゲゲゲゲ!島内のウワサになってるぅ!
「果たして今日は船が出るかのぉ!海が荒れてきちょる!」
「えっ!」
「いったん荒れるとのぉ!一週間欠航なんて事もしょっちゅうじゃ!」
「・・・・・・」
「まあ、そうなるとのぉ!よっぽどの魚好きじゃないとツラいのぉ」
「うふぉふぁふぃふえ・・・(言葉にならない)」
魚が食える食えないの問題ではない!
夏休みが終わるぅぅ!!
試験がぁぁぁ!
帰りたぁぁぁい!
おお!神よ!!
アワビなんて、もうゼータクいいません!
お望みなら、昨日食った分もゲロりますぅ!
お助けをぉ!
大げさジジイの脅しだったのか、それとも神の力なのか、船は無事出港!
様々な思いを残して、島は水平線に消えていく。
(ワタクシの時計は超安物デジタルであったため、直射日光にさらされて温度上昇し、30分間ほど動かなかったらしい)
夜明け前へ
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