とにかく北へ!!(1991GW・北海道)その4(携帯版)
コックをリザーブにしてセルを回すと、再びエンジンは動き出す。
おかしいなぁ。
妙に燃費が悪かったなぁ。
さて、ガソリンスタンドが有るような雰囲気じゃないし、どうしよう。
まあいいや、何とかなるだろう。(実は、オーバークールだったのだ)
やたらと目につく「自衛官募集」の看板さえも遂には無くなり、まさに地の果ての様な、木が一本も生えていない海沿いの丘陵地帯を進む。
不意に視界に入るガソリンスタンド!!
おおっ!このような場所に?とりあえず給油を!!!。
ガソリンは大した量は入らななかったものの、貝殻で作った「交通安全」のお守りと、「最北端給油証明書」なる紙切れを渡される。
そう。
ここは宗谷岬すぐ脇のGS、いつのまにか最北端に到着していたのだった。
ミゾレ混じりの雨の中、時刻はまだ14時だというのに、気温表示は2℃!!!
岬の公衆便所の軒下で一人震える。
走っている時よりはマシとはいえ、耐え難い寒さなのだ。
稚内のYH、午後3時の到着である。もうこれ以上は走る気がしない。
速攻で風呂に入り、やっと人間界に復帰した気分になる。
「あれ?別人になったじゃん!!」
などと同宿者にひやかされるほど、凍り付き強ばった顔をしていたのだろうか。
やがて、典型的なYHといった感じの夕飯の光景。
あれ?あそこに座っている姐さんは!!!。
そう、夕べのYHで、共にジンギスカンを囲んだ姐さんではないか!!。
「あら!また会ったわね。今日はヒッチハイクでここまで来ちゃった!!」
何ともたくましい姐さん、その行動力は国内だけにとどまらないとの事。
何カ国も訪ね歩く旅を重ねるうちに、ふいに北海道が恋しくなったと笑う。
姐さん曰く
「YHに一人で泊まる年齢か?」
的な視線をヒシヒシと感じるらしい。
こういった生き方をする女性に対する偏見は少なくないのかも知れないけれど、なんともカッコイイ姐さんではないか!!
最北端の街で迎える朝、今日も冷え込んだ曇り空。
もう北上すべき道は無く、今度はひたすら南下を開始する。
国道脇の雪を割って咲いている水芭蕉を眺め、朱鞠内湖まで往復。
さすがに5月の日差しは頼もしく、路面の雪はあっという間に湯気となって消える。
ここ数日、16時前のYH入りが定着してしまっている。
今日もご多分に漏れず、早々と、日本海を望むYHに飛び込む。
どうやら今日は常連達が集まる日らしい。
ライダーは他に誰も居ない。
風呂の窓から、巨大リュックを背負ったモンキーが、YHを目指して走ってくるのが見える。
本日2台目のバイクだぁ!!
仲良くしようぜぇ!!!
やはり冷え切っていたのであろうか、荷物を降ろすや否や、速攻で風呂に飛び込んで来る。
「あ~!!生き返りますわ!!!」
「寒かったでしょ?」
「肩に鉄が入ってる気分ですねん。それに、死ぬほど眠いですわ!」
寒さだけでは無かったらしい。
キャリアの無いモンキー、全ての荷物を背負ったままで、大坂からひたすら走って日本海添いに北上!!
青森・函館間だけフェリーで眠り、降りてからここまで再び走りっぱなしだったそうな!!!。
彼もここの常連だそうだけど、一泊しただけで再び同じコースを同じ走りで大阪まで帰るとのこと!!
すごすぎるぅ!!!
風呂から出ると、またまた姐さんが居るではないか!!
今日もヒッチハイクで南下してきたそうだ。
朝、留萌行きのバスにのる姐さんを見送り、本格的に南下を開始!!
あとはひたすら帰るだけなのだ。
「ひたすら」と言っても2泊3日の予定なので、大阪モンキーが聞いたら笑う、というよりウラヤマシがるであろうか。
眺める海は日本海から太平洋に変わり、上陸時にはあれほど旅情を感じたのに、今は一地方都市にしか見えない函館に到着、野辺地行きのフェリーに乗る。
たまたま丁度良いタイミングだったから乗った船だけど、青森行きに比べたらちっぽけな船!!
大荒れの津軽海峡で木の葉の様に揺られ、デッキから遠ざかる北海道を眺めるどころでは無い。
大きく揺れる度に、狭い船内に響く叫び声。
ドドーン!!
「おおっ!!」
ドドーン!!
「おおっ!!」
船室の左右の窓から、海と空が入替わり立ち代わり見える。
本州再上陸は、まるで漁港の様なちっぽけな港であった。
桜前線とすれ違い、無限に続く様な東北道の南下。
福島あたりでさえ、もうご近所まで戻ってきた様な気さえする。
そう言う意味では、既に庭先の様な佐野SAで一休み。
そこへ……
あれ?あの姿は!!!
おおっ!!行きの青森→函館フェリーで一緒だった、職人風兄ちゃんのセローではないか!!!
でも、なんかバイクの形がヘンだぞぉ??
よくよく見ると…
フロントフェンダーが無い!!
正確に言えば、殆ど根元から折れている!!。
「よぉ!!久しぶりぃ!!北海道はどうだったぁ?えっ?フェンダー?そうそう。雪ん中で寒くて眠れなくてよう、イネムリ運転でカマ掘っちまった!ガハハハハ!!」
どういうツモリか、折れたフロントフェンダーを背負ったまま笑う職人風兄ちゃん。
延々と走り続けて到着した佐野SA。
あたりには既に北海道を思い出させる物など何も無いけれど、唐突に北海道の風を運び込んできた職人風兄ちゃん。
この兄ちゃんを始め、あちこちで出会ったツワモノ達や様々な出来事。
色々と勇気付けられ、そして自信を持つ事が出来た日々が再び鮮明に蘇る。
こうして、初めての北海道ツーリングが終ろうとしていた。
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