氷点下!赤城山(1999秋)その2(携帯版)
とにかくとにかくキャンプ場に。
だ・だれもいない!!
若頭のトランポも、その他のバイクも見当たらない。
TELは呼び出し音が続くのみ。
さっきのTELでは、「おでん作って待ってるからねぇ」という話だったのにぃ!
場所が違うのかと湖畔をグルグル回ってみたけど、余計に体が冷えていくのみ。
19:00。
バイクに付けた温度計は既に-1℃。
渋温泉でホカホカと過ごす豊田組一行の姿と、旅館に場所を移してヌクヌクしているTW組員の姿が交互に見える。
「今から渋温泉に行けるだろうか・・
そりとも帰ろうか・・・・」
若頭にTELする間隔が、徐々に短くなる。
相変わらず呼び出し音しか聞く事が出来ないのだけれど。
いつのまにか月は高度を増し、「いかにも月」っていう黄金色のストロングな満月になっている。
強風に晒されて波立つ湖面には、その破片が数限りなく揺れる。
湖畔の水溜まりが、徐々に、音も無く凍り始めていく。
月も凍える赤城の山。
キャンプ場に居るのは、サーカステントの中から笑い声と灯りを溢れ出させている見知らぬグループ、焚き火の前に張り付いて凍結したように動きの無い二人連れのおねえちゃん。
そして・・・・
到着したそのままの状態で呆然とたたずんでいる自分のみ。
吹き荒れる風に煽られた赤や黄色の落ち葉、カサカサと足元を走り抜けていく。
照明など一切無い暗闇の中、対岸にポツポツと並ぶ建物の灯り。
立派な夜景では無くても、寒い夜の灯りは何とも言えない暖かさを感じる。
しかしそれは虚飾の温もり、本当の温もりを手に入れる為に下山を決意する。
ヘルメットを被る前に、未練がましく若頭に最後のTEL。
「はぁい、もしもしぃ?」
つ・つ・つ・つながったぁ!!!
「さみいからウラの国民宿舎の風呂に入ってたんだよぉ!!えっ?テントが見当たらないって?ドテの下に張ってあるよぉ!よく見ろよぉ!!もう風呂入って来たんでしょ??」
「にゃ・にゃにおう!!!!」
兎に角とにかく、焚き火を囲んで「おでん」を作り始める。
総勢わずか4名。
座っていると寒く、皆立ったまま「おでん」をつつく。
火力の強いガソリン式のストーブは「おでん」用に。
この環境での555と家庭用ボンベでは火力が頼りなく、酒は「ぬる燗」が精一杯。
その「ぬる燗」でさえ・・・
一口呑んで机に置き、おでんをつついてもう一口・・・
すでに燗冷まし状態!!
まるで冷酒だぁぁ!!!
あきらかに余りそうな「おでん」をエサに、おねえちゃん二人組と合流。
それでも会話は弾まない。
「俺、冬用シュラフだから・・・」
「おれはシュラフ2枚重ねで勝負!!」
まるで、極寒夜間乗り切り対策報告連絡相談会議なのだ。
強風が舞う中、頼りの焚き火も役立たず!!
死ぬほど煙くて火の粉を浴びる覚悟が無いと、暖まれる位置まで接近出来ない有り様。
水タンクにも薄氷!!
表に出ているのさえ苦痛になり、次々とテントに逃げ込む夜10時。
日の出までの時間を指折り数えて寝袋に。
気温-3℃。
やっと寝付けたと思ったら、いきなり叩き起こされる轟音!!
な・なんじゃ?
赤城北面道路から4輪の走り屋達がバトる音!!
行ったり来たり延々と続く。
カンベンしてよぉ!!!
やがて静まり返った山中、再び寝付けるのはいつの事やら。
隣のテントから、耐えきれずにガサガサとカッパを着込む音が聞こえる午前2時。
待ちに待った朝!!
一気に明るくなる快晴の青空!!風も無い!!
ザクザクと霜柱を踏みしめながら、一人、また一人とテントから這い出してくる。
全員無事に朝を迎える事が出来た喜びに、一同異常に盛り上ってルービで乾杯!
日向に寝そべれば、うっすらと汗ばむ強い日差し、穏やかな湖畔のたたずまい。
やがて・・・
日帰りライダーがサワヤカに走り抜ける湖畔。
楽しげにバーベキューを始めるデイキャンパー達に囲まれて、焚き火臭いススだらけの顔を並べてバカ笑む我々は、いつまでも見苦しく生還難民状態を晒し続けるのであった。
(寒)・・・・いや!!(完)
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