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てっちゃん北へ(1996〜7年末年始・襟裳岬)

冬のローカル駅 (場所は忘れました)
とある中堅観光地に、バイク好きな管理人のYHが有るそうな。
その管理人を中心に人の輪が出来、バイク系の企画なども行い、なかなかに盛り上がっているらしい。
そんなウワサを聞き、さっそくそこへ行ってみると・・・
様子がおかしい。
YH内の壁には電車や機関車のパネル。
フロントの棚に飾られた鉄道模型の数々。
な・なじぇ?

「バイク?知るかっ。そりは前の管理人だ。オリは鉄ちゃんだぁ!!」

●解説  「てっちゃん」とは・・・・・●
いわゆる、鉄道ファンの事。
みんながそうという訳ではないけれど、かなり「エキセントリックなシト」の含有率が高いことは否定できない。
ちなみに、女性の場合は「みっちゃん」と言うらしい。
「鉄道」の「道」の部分が語源との事ながら、「てっちゃん」という言い方ほど一般的では無いようだ。


しかし、目指す道は違えども、お互いに旅行好きには違いない。
なかなか面白い管理人だったので、数ヶ月後に再び、フラリと訪ねてみると・・・
おおっ!!
『てっちゃん大会』をまさに開催中であった。
それは要するに、常連のてっちゃんを集め、みんなで盛り上がろうと言う企画の日だったのだ。

館内にウジャウジャと溢れる鉄ちゃん達・・・・
今まで経験した事が無いような、フシギなジャンルの凄まじいパワーだぁ!!
ブキミな、しかしこの中では比較的標準的なオボッチャマに、イキナリ鉄道写真を見せられる。
「さて、この写真はどこでしょう」
ぬ・ぬゎあにが『さて』だぁ!!
おんやぁ?写っている特急には『あずさ』と書いてある。
このくらいなら判るのじゃぁ!
「中央本線!!」
「ダメ!!不正解」
「なじぇ??]
「どことどこの駅の間かを言わなきゃ」
し・しるかぁ!!!


この管理人、YHの集客アップを目論んで、今だにやってくるライダー達に目を付けた。
そう、『ライダーの集い』なる企画をブチあげたのだ。
管理人はバイクに乗らないので、バイクを引き連れてあちこち走り回る訳にはいかない。
そこで、
「前夜にドンチャン騒ぎ」
「翌日、YHから20Km程のダム湖まで移動し、湖畔で皆でお昼ゴハン」
なる計画を立てたのだ。
非常に盛り上り、いよいよダム湖に到着するまでは良かったのだけど・・・・
軽自動車で先導する管理人はバイクのバの字も知らないものだから、コース設定がマズかった。
湖畔に降りる道は急な下りのダート。
ヘアピンカーブまでもある。
ひどいガレという程ではなく、オフ車なら余裕なのだけど・・
バタバタ倒れるオン車のオネーチャン達。
曲がりきれずに完全ガレバに入り込み、身動き出来なくなるFJ1200&BMW。
唖然とする管理人。
「バイクって、こういう道は駄目なのぉ???」


盛況だったので、懲りずに「第2回ライダーの集い」を企画する管理人。
少しは反省し、どこからともなく半分腐ったチャッピーといふチンケな原付を借りて来て、みずからが先導してYHの裏山の展望台を目指す。
今度の道は舗装路なのだけれど・・・・
とにかく超・急な登りなのだ。
オヤジのチャッピーは喘ぎに喘ぎ、時速5Kmでトロトロ登る。
続くライダー達は半クラッチの嵐!!!!
遂に握力が衰え、薮に突っ込むクラブマン。
なじぇか前触れも無いまま立ちゴケするTTR。
唖然とするオヤジ。
「なんでぇ??どうすりゃいいのぉ??」

てっちゃん主催の「ライダーの集い」  CB250RSZ

それから、月日が流れて1996年の冬。
すでにYHを辞めてクニに帰っていた、あの元管理人の鉄ちゃんオヤジからお誘いがあった。
「年末年始を襟裳岬で過さないかぁ???」
この年、F2小湊でアタック中に崖から落ち、夏は入院生活を送ってしまったワタクシは北海道に飢えていた。
「行く行く!!!」
二つ返事であった。

新幹線などを乗り継ぎ、日本海側の街にあるオヤジ邸に到着し、翌朝の新潟⇒小樽フェリーに備える。
誰かがクルマを出す訳では無く、ただ単に安いと言う理由でフェリーを選んだのだ。
フェリーを降りてからの全行程はJRとバスで、メンバーはオヤジ夫妻・ライダー3人・鉄ちゃん2人の計7名。
すでに全員がオヤジ邸に集結していて、怪しい鉄道クイズなどに苦悩するうちに夜は更ける。
しかし・・・
「よぉしっ!!始発列車で出発だぁ!!」
「えっ?新潟港に行くのに、それじゃ早く着き過ぎちゃうよう」
「良いのだ。ローカル鈍行で行くのだぁ!!」
なんか訳の判らないジーゼルカーに乗せられる。
眠いよう!!トロいよう!!


なんだかんだで船の中。
冬の日本海ならではの荒波である。
オヤジ夫妻はアッサリとグロッキーになり、ベッドの中でマグロ化する。
残ったメンツで卓球を始める。
揺れるフェリーの中での卓球、体が思うように動かなくて、それはそれで面白いのだ。
唐突に、オヤジがヨタヨタ現れる。
サリーちゃんのパパのような奇怪なネグセのアタマ!アル中の様な足取り。
このオヤジ、人が楽しんでいると自分も参加しなくては気が済まない性格なのだ。
「オリにもやらせろぉ・・・・」
しかし、5分もしないうちに・・・テレビドラマの妊婦の様に
「ウッ!!」
と一言。流し場にしがみつき、哀愁の後ろ姿を見せるオヤジなのであった。


早朝、小樽港に到着。始発の列車まではかなりの時間がある。
「小樽にはなぁ、鱗友朝市っていう、早朝からやってる市場があるんだ。ンマいモノがあるぞぉ」
フェリーの中で、オヤジがそんな事を言っていたので、これは期待しなければならない。
フェリーターミナルでタクシーに分乗し、先導するオヤジ号についていけば・・・・・・・
到着したのは散々とノーガキを聞かされた市場ではなく、駅だったのだ。
しかも小樽駅ではなくて、その隣の南小樽駅。
「なんで?」
「こっちの方が港から近いのだ。それに、ここからキップを買った方が、一駅の違いだけれど○○円も安い」
そりはそうかも知れないけれど・・・・
始発を待つ間、待合室さえも開いていないチンケな駅での吹き曝し寒冷地獄!
カンベンしとくれよう!!!

列車を乗り継ぎ乗り継ぎ、襟裳岬への入口である様似駅を目指す。
ただただボーっと乗ってるだけの、死ぬ程ヒマな時間なのだ。
てっちゃん達は、相変わらず鉄道クイズ。
その一例を挙げると
「隣りの駅が、5個有る駅を挙げよ」
すかさず鉄ちゃんの答えが飛び交う。
「大宮」「赤羽」「西船橋」「岡山」・・・・
ヒマなので参加する。
「新宿はもっと有るよ」
「ダメ!!JRじゃなきゃ認めない!!」
「な・なんじゃそら!!そりじゃ東京は?」
「ダメ!!新幹線は別!!」
色々ムツカシイのであった。
それでいて、
「う〜む。拝島もそうだと言うのは感動的だ!!」
意味が判らない!!!
な・なんか異次元な世界を感じるのだ。

そんな事をしているうちに、終点の様似駅に到着。
ここからはバス。
それぞれの世界を持つ人々を乗せて、バスは何も無い岬を目指してひた走るのであった。

冬の駅 (確か、岩見沢)


大晦日の襟裳岬。
雪は殆ど無いけれど、凍るような強風に晒され続けている。
5分と居られる状況では無く、そそくさとYHに逃げ込む。
ここのYH、礼文の桃岩荘と共に、いわゆるキチガイYHと評されただけの事はある。
夕暮れと共にバカ騒ぎが始まり、飲めや歌えや踊れや・・
んもぉ手の付けようの無い状態!
「落陽」やら「岬巡り」やら、年越しのカウントダウンを挟んで延々と続くのだが・・・・
こういう騒ぎがメシより好きな鉄ちゃんオヤジ、全く元気が無いのだ。
フェリーで死ぬほど船酔いし、そのアオリでどうやら陸酔い状態らしく、ロクにメシも食えないのだ。
「メシより好き」という表現は、メシが食えて始めて成り立つのが正解らしい。


明けて97年の元日。
相変わらず風は冷たいけど空は快晴である。
コタツでグッタリしているオヤジを誘う。
「そこいらに遊びに行こうよ」
「どこに?。足も何も無いのに?。外は寒いし・・」
何を言うか!!足は自分のが有るのである。
だいいち、YHに閉じ篭っていても面白くないどころか、襟裳くんだりまで来た意味が無い。
オヤジを中心とするてっちゃんチームは、ベッド部屋に集まって時刻表を手に手に輪を作り、明日以降の行動計画を話し合っている。
何も昼間っからそんな事を、だいいち開いてるページが九州なのはどういう事か!!

付き合って居られないので、ライダー3人で散歩に出る事にする。
しかし足が無いのはオヤジ指摘の事実であり、相談するまでも無く、再び襟裳岬に足が向かう。
「寒いなぁ」「ああ」
交わす言葉もボキャブラリーに乏しく、ブラブラと百人浜に向かう。
この百人浜、海流の関係だかで色々な物が打ち上げられるそうで、一晩で100人のドザエモンが上がったとの言い伝えも有る。
この浜にあるキャンプ場もイワクありげで、キッチリとユーレイ話も用意されているのだ。
深夜、誰かがテントの周りをグルグルと歩いている気配がして、翌朝、その足跡は海から来て海に帰っているなどという、比較的お馴染みの話だったりする。

ここに打ち上げられるドザエモン以外のものに、見事に蝶の形をした貝殻がある。
岬の売店やYHなどで300円くらいで売っているのだけれど、どうしたことか、今日は大量に砂浜に散りばめられているではないか!!
「こりは商売できるぞぉ!!」
などと、焚き火を起こして基地を構えて拾いまくる。


宿に帰ると、オヤジを中心にした鉄ちゃん軍団は、まだ時刻表を囲んでいた。
デロデロな船酔いに懲りたオヤジは予約していたフェリーをキャンセルし、東北を回ってJRで帰るようだ。
わざわざ襟裳まで来て、とうとう一日中時刻表とにらめっこ。
思い切りツマラなそうだけど、鉄ちゃんにとっては、それはそれで楽しいそうである。
元日の晩は、YH主催の大宴会となった。
カニを中心とする海の幸がフンダンに振舞われ・・・・・
といってもキッチリと別料金だったりするものの、それでもリーズナブルなゴチソウである。
桃岩と違うのは、ふんだんに酒が振る舞われている事で、コレはアリガタイ。
オヤジは相変わらず体調不良だとかで、早々に寝てしまったようだ。



そして二日の朝。
目を覚ますと、既にオヤジ一行の姿は無い。
ワタクシを除く全員は、早朝から様似方面に戻っていったのだ。
ワタクシは今日の飛行機で帰る予定なので、昼前のバスで帯広方面を一人で目指す。
おんやぁ?
コタツのある大部屋に行くと、同宿者達の目が異常に冷たいではないか!!!
話し掛けてもロクに相手にされないのだ。
イキナリ村八分にされているのはなじぇ???
一人がコッソリ教えてくれる。
どうやら昨晩、ワタクシも寝た後に、オヤジが宴会場に「ウルサイ!!」などと怒鳴り込んだらしい。
仕方なく、皆は氷点下の屋外に移動したものの、思い切りしらけてしまったそうな。
ワタクシもオヤジの一味とみなされ、嫌われてしまったらしい。

誰に見送られる事も無く、たった一人でYHを出てバスに乗る。
波に洗われる黄金道路を北上し、やがて海岸線から離れた途端・・・
まるで境界線でも越えたように、黒々としたアスファルトが一気に圧雪路に変わる。
あたりも完全な雪景色!!
国境のトンネルを越えた訳でも無いのに、驚くほどの急変であった。

広尾でバスを乗り換え、帯広行きのバスに。
このバスは空港を経由せず、なるべく空港寄りのタクシー会社の近くで降ろしてくれるように運ちゃんに頼む。
大正あたりのバス停も無い場所でバスは止まり、運ちゃんが差し示す所に小さなタクシー会社があった。
いわゆるフツーのタクシー車両は一台もおらず、事務所も無人である。
ショベルカーで構内を除雪しているオッチャンに声をかけると
「空港?いいよ。ちょっと待ってて」
冷え切った事務所で待たされる事しばし、先程の雪かきオッチャンが現れる。
「おまちどぉ!!どぉぞぉ!!」
出てきたクルマはミニバンで、それでいてキッチリと料金メーターが付いている。
運転するのは、先ほどの雪かきオッチャン。

「オリはなぁ、何度もTVの取材スタッフを乗せてるんだ。除雪もしていない様な山道も、全然ヘイキで走るんだぁ」
自慢話は勝手だけれど、とにかくこのオッチャン、飛ばすのである。
他のクルマが40Kmくらいで走っている圧雪&凍結路を、マジで100Kmも出しまくり、対向車線をブリブリと走り抜きまくるのだ。
「こういう道はなぁ、トロトロ走る方がアブナイんだ。」
そ・そうなのかもしれないけれど、じぇんじぇんこっちの方がアブナイとしか思えないよう!!
恐いよう!!!


まるで大雪原の様な滑走路を飛び立ち、一眠りしているうちに着いてしまった羽田。
当然、雪のユの字も見当たらない。
鉄ちゃんオヤジに引きずり回された日々はまるでマボロシだったような感覚さえも抱きながら・・・
雪かきオッチャンなら泡を吹いてしまう様なトロトロ渋滞の中を、リムジンバスはイモムシ走行を繰り返すのであった。
夕日

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