続・南国ワーク(2000夏・シンガポール)その4(携帯版)


こちらでは、日本で言う4ナンバー以上の貨物は50キロ制限なのだ。
それらのクルマは、屋根にバイクのウインカー風オレンジランプが付けられていて、50キロ以上出すと点滅しちゃう仕組み。
高速では50キロと言う訳ではないけど、アタマテカテカでトロトロ走っている。
そんな貨物車と共に一番はじっこ車線をノンビリ走るジイサンタクシー。
トロすぎるよう!
うっ・うっそぉ!!!いつものインターチェンジを通過!!
一つ先のインターチェンジから平然と降りる。
あれ??と思ったけれど、なにしろ頼れるアラビアン!任せる事にする。
おおっ!渋滞だぁ!!!
そう、目的地にはこちらのICの方が近いのだ。
ただし地獄の右折渋滞地点が有る為に、みな1つ前のICで降りていたのだ。
でもヘーキ!
このジイサンには、大阪式右折という武器が有る。
問題の交差点に近づく。
あふれ出ている右折車の列!!
当然の様に、ジイサンは並ぼうとしない。
しかし直進車の量も多く、ここで大阪右折を決行したら相当にヒンシュクを買いそうだ!!
どうする?ジイサン!!!
ジイサン、交差点を通過!!!
あ・あれぇ?
で・でたぁ!!!中央分離帯の花壇に突入!!
エンセキを乗り超えて強行Uターン!!!
そして平然と左折・・・・・
アラーの神よ!!
貴方はこんな事を許しているのかぁ!

ホテルから客先までの、最短時間記録を打ちたてたジイサンタクシー。
だが・・・・
どういう仕組みか知らないけれど・・・・・
メーターの金額は、最高記録なのであった。
おそるべし!アラビアンパワー!!
おそるべし!アラビアンマジック!!


2度に渡り、ワタクシ的には長い長あい出張だったシンガポール。
明日、金曜の深夜には、日本向けヒコーキに乗っている事になるハズである。
前回は空港・ホテル・客先・その他諸々の場所で立ち往生し、ブザマさをさらし続けてきたワタクシではあったけど、イイカゲンに学習能力が発揮され始めて、けっこう平和に過ごしているのだ。

毎朝行われるタクシー運ちゃんとの攻防戦だって、んもお好き勝手にはさせないのだ!!

チャド(旧姓ネームカード君)も慣れたもので、今やタクシーから降りるワタクシの姿を見ただけで、黙っていても、ゲロ袋風透明ビニールに入った乳白色のドリンクを飲みながら、ビジターカードを用意して待っているのだ。

喫煙所のヌシと化している、館内守衛のインディーおばさん。
「ハワイユー!!」
満面の笑顔&ひとなつっこさで、コーヒーなどをおごってくれる。

食堂のおばちゃん、
「おらぁ!キッチリ食えぇ!!」
キモッタマかあさんっぷりを発揮して、大盛りにしてくれる。
あんまり大盛りでも有り難くない味だけど、気持ちは嬉しいでは無いか。

定時退社大好きミスター・ワン。
妙にインチキくさい所があり、
『明日の午後はホリデーですねん』
のハズが、トラブってくると
『ホリデー?とんでもありまへん!!研修でんがな!』
などと言い変えちゃう小心物なのだ。
確かに面倒見は良い。
(今日は、アタマが痛いなどと言って休んでいる)

現場に居るのは高級マダム風おばちゃんや、妙にチャーミングでひとなつっこいマレーねえちゃん・・・・

みいんな親しみさえも感じつつあるのだ。
チャドにしたって職務熱心なだけで、きっとイイヤツなのだ。
きっと・・・

ワタクシは明日でシンガポールを離れるけれど、彼らにとってのこの国は生活の場であり、みな、この怪しい都市国家で一生を終えるのであろう。
また訪れて、彼らと再開出来るかどうかは判らないけど・・・・・
シンガポールという国と、ここで生きている全ての人々がシヤワセであって欲しいなどと感傷に浸る中、超あやしい新キャラクターが登場してきたのであった。


セブンイレブンでルービやツマミを買い、ホテルに到着した時に、丁度ヤツも現れたのだ。
ワタクシがエレベータを待っている時にホテルに入り込んできたその男、顔は日本人にも韓国人にも中華系シンガポール人にも見える。
顔形・声の感じは小松政夫の雰囲気で、いわゆる地回り風の衣装に身を包み、マレー系ホテルマン達に
『いよう!調子はどうだい?』
的に愛想よく声をかけている。
そして一緒にエレベーターに。
ワタクシは7階、地回りは9階のボタンを押す。
2人っきりである。
『どうした?兄さん。やけにお疲れじゃねえか?』
「えっ?まあ。暑くってねぇ・・・」
『おっ・おいっ!!兄さん日本人かい?』
「そうですけど・・・」
ここで7階に到着し、ワタクシはエレベーターを降りる。閉まろうとするドアを慌てて押さえ、身を乗り出す様にして声を高める地回り。
『ちょっと待てよ!!兄さん、ホントに日本人なんだな!!!えっ?』
日本人に対する親しみというよりは、何やら企みさえも感じる視線。
「そうですよ。それじゃ。」
『そうか!日本人か!!そんじゃあオレと・・・・・』
最後まで聞かずに、とっとと廊下を歩き出す。
地回りはエレベーターから降りる事は無かった。

恐らく、このまま終わる事は無いような気がする。
ヤツは、きっと部屋の番号を調べ上げて、何か仕掛けてくるハズである。
完全無視を決め込めば、何も起こらないまま出張は終わるであろう。
反面、このまま平和過ぎる終わりかたにツマラナサを感じているのも事実である。
果たしてノックの音が聞こえてくるのであろうか・・・

まさにクライマックスを迎えつつある南国ワーク。
そのフィナーレの行方は、この怪しい地回りの手中に握られているのであった。


その3へ
バイク以外の旅へ

「週末の放浪者」携帯版TOPへ

「週末の放浪者」PC版