6人の遠征隊(1999夏・剱岳登山)その2(携帯版)
「いやぁ!今日は良く登ったなぁ!ハァハァ・・・」
って言いたくなるほど登りに登って、やっと前劔に到着。
いよいよ劔本体へ。
次々と鎖場が登場、しかも難易度はグンとアップしてくる。
「今度こそ劔登山の為の最終試験ってとこですね。ゼェゼェ・・」
「いんや。まだまだ一時面接くらいかな?」
遂に最大の難関、『カニの縦這』に。
垂直の岸壁、高さは数十メートル!
正直言って、 「マジかよぉ!」と叫びたくなるような光景なのだ。
「何言ってんだよ、昔は足場ボルトなんか無かったんだぞ!!」
そう言い残して、まずは炊事班長がアタック。
スルスルと手際良く登っていくが、途中で動かなくなる??。
どうやら出っ張った岩にアタマをぶつけ、天体観測をしていたらしい。
続いてワタクシ、鎖・岩に埋め込まれたボルトを頼りに、這うように登る。
まさに『カニの縦這』ですなぁ!! 良く言ったものですなぁ!!
なんて余裕だった訳ではないけど、無事クリア!!!
まり隊長・救護班長・ボッカ専務・副隊長と全員無事に登り切る。
あとはゴツゴツとした岩の上を登って行くだけ。
頂上も見える!!
キツイけれども、ここまで来れば今更何でも無い登りだぁ!
一歩一歩進む度に近づいていく山頂。
ついに・・・ついに・・・来てしまったぁぁぁ!!
小さな祠が視界に入る。
あと20m、あと15m、あと10m・・・
剱岳、標高2998m。
15年がかりの登頂の瞬間だった。
しかし、ワタクシには、ここはまだまだゴールでは無いのだ。
山頂から西に下る『早月尾根』を、標高差にして50mほど降りたあたりのポイント『カニのハサミ』。
ここが弟の滑落地点、死亡診断書に記載された場所。
ワタクシ一人では危ないとの判断か、まり隊長が同行してくれる事に。
歩き始めると、
おおっ!! よち副隊長・ピエール炊事班長も!!
ありがたい事です。
かなり険しい鎖場を次々と下る。
『名勝・カニのハサミ』 なる看板がある訳も無く、それらしいポイントにて合掌!!。
滑り落ちたと聞いていたけど、 それどころでは無い急峻な崖、まさに落下に近い状況だったのでは??
何を考えながら落ちていったのだろうか・・・
一旦山頂に戻る。
名残惜しいけど、いつまでもいる訳にもいかず、いよいよ下山。
下山だってナメていられないのだ!
恐怖のポイント『カニの横這い』が待っている。
やたら『カニ』ばっかりだけど、そういう名前だから仕方ないじゃないですかぁ!
垂直に近い絶壁の横移動、クサリを頼りに何とか足場を探しながら進む。
落ちたらそれでおしまい。
さすが副隊長はラクラク通過。
長身の救護班長も難なく通過。
しっかり足場に出来るポイントは少なく、 足が届かない辛さ!!
ほんのちょっぴりしか足をかけられない場所をも足場にせざるを得ない。
ズリッ!!足を滑らせてクサリにぶら下がるボッカ専務!!
「絶対に手を放すなぁ!!!」
緊迫した叫び!!身が縮む思い!!
難所といえる場所は全てクリア!!
ホノボノとした、小粋なトークを楽しみながら下る。
しかし、危険という物は、こういう時にこそ訪れてくるのだった。
前劔からの急な岩場の下り、 唐突に落下して来る頭大の岩!!
不気味な乾いた音をたてて、まり隊長に向かって一直線に転がり落ちてくる!!
とっさに、自らの足で止めようとする救護班長!!
無情にも、そのつま先をかすめるように一歩届かず!!
益々まり隊長との距離を縮めながら落ちてくる岩、他の者には何もする事が出来ない!
下手に横に飛び避けると、 自らも転がり落ちてしまう急な斜面!!!
転がりながらそれを避けるまり隊長!!
まり隊長の、きゃしゃな体?をかすめる様に、岩は奈落の底に落ちていく・・・・
「だいじょぶかぁぁぁ」
ゆっくり起き上がる隊長・・・
「だめぇぇぇぇぇ!!!」
人間の方は、転がった際の軽い打撲・擦り傷程度だったのだけれども
「カ・カ・カメラがぁぁぁ!!!おニューのカメラがぁぁぁ!!」
レンズには、まるでクモの巣が張ったようなひび割れが・・・・・
気を取り直し、本日の山小屋・剱御前小屋に向かう。
小さな雪渓を横断。
スキー中級ゲレンデを歩いて横切る気分。
小さいけれど、ビギナーには十分に恐い恐い!!
足を滑らせたら、直滑降数百メートル!!
山小屋到着!!!
今日も「ルービ最ウマ記録」更新!!まずはカンパイ!
そして小屋の目の前の、 小さなピークに登ってまたカンパイ!!。
翌日も未明に起床。
昨夜のカミナリがウソの様な、満天の星空。
人工衛星がゆったりと進むのが見える。
東の空には第三の珍客・・
おおっ!!オリオンだぁぁ!!
今年もイロイロな出来事があった夏。
その都度、それを空から見守って居てくれたサソリ座にかわり、
「さあ!夏は終わりだ!」と言わんばかりの冬の盟主の登場!
ああ・・そうだな。
今年の夏よ、有り難う!!
また来年もヨロシクね!!
今日も観光客でにぎわう立山黒部アルペンルート。
黒部ダムを見下ろす展望台にも多くの人々が訪れている。
その観光客達が遠巻きに・無言で見守る中・・・
轟々と湧き水の溢れる水飲み場。
はしゃぎながらヒシャクを手に手にアタマから水をかけあう
「豊田組山のぼらー班」の面々!!
なんとも楽しげな・・・・
客観的に見ればハズカシげな・・・・
そして、ちょっぴり寂しい遠征終了のひとこまだった。
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