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右向け右
(レポート:したっけ兄さん)
遅ればせながら陸上自衛隊偵察隊(バイク隊)の体験入隊の報告。
去る11/13,14の二日間、RBの隊員として富士学校の偵察隊に体験入隊してきました。
訓練は厳しく体力的精神的にハードでありました。
そして自衛隊とは軍隊であり、国軍である事を知りました。
軍である故に機密事項も多い訳で、我々RB隊員に対し次の2点について絶対に外部に漏らしてはいけない事を告げました。
1 訓練の行われた演習内の場所
一般のオフロードライダーに入って来られると、訓練に支障を来たすとの事
2 座標の数字
自衛隊特有の座標の為
写真撮影は場所さえ特定できなければOKとの事。
雑誌、ネット等の投稿は上記の2点を載せなければ問題ないとの事。
さて訓練は、まず非常食、水、ロープ、懐中電灯、カッパ等必要な荷物以外の荷物を(テント、シラフ、着替えなど)後方支援のトラックに積み込み、一同はベースキャンプ地へ。
ベースキャンプに着くと直ちに小隊を編成。
一小隊はRB隊員8名、自衛隊員2名の計10名。
おいらはBグループの第2小隊。
小隊の隊長、副隊長を選出、副隊長には、まさよんよんの知り合いのT氏。
おいらは平で彼等の指揮下に入る。
自衛隊員は指導員として小隊を指揮。
第一の指令
災害発生、国道●●線は通行不可、しかしバイクであれば山を迂回すれば走行可能と思われる。
直ちにRB隊員は某被災地区に救援物資を届ける事。
我々RB隊員は約20kgはあると思われる砂袋の救援物資をバイクに積み込み、コンパスと地図を頼りに道無き道のルート開拓にいざ出陣。
ここから地獄の行進がはじまるのであった。
まずは地図上で走行ルートを決め(だいたいの走行ルートは教官に指定される。)分岐事にチェックポイントを設ける。
そしてそのチェックポイントを通過する事に、コンパスと地図でミスコースしてないかを確認しながら進むよう指示を受ける。
さてここで我が小隊のメンバーを紹介しょう。
隊長 沼津RB O氏 TL125
副隊長 埼玉RB T氏 レイド
隊員 沼津RB S氏 イタリア製トライアルバイク
H氏 ランツァ
静岡RB K氏 KDX
Y氏 ランツァ
千葉RB M氏 DF
B氏 バハ
このメンバーでいざ出陣。
スタートしてしばらくは幅の広い戦車道。
深々の火山灰で結構走りにくい。
この状況で結構な勾配の上りに遭遇。
躊躇するとスタックしそうなので一気に登って行く。
あれっ、おいらからの後ろが遅れている。
不安が過る。
B隊員が早くもスタックしていた。
その不安とは千葉RBのB隊員、彼はばりばりのビギナーなのである。
この訓練はビギナーコースを設けてあるとの情報から(前回の訓練の時はあったもよう)参加、しかし今回は無い、全員同じ内容の訓練との事。
ここでのスタックとよたよたした走りから、他の隊員も彼がビギナーである事に気づき、同じ千葉RBであるおいらに隊長から指令が下る。
B隊員を責任もってサポートせよ!!
彼を連れて来た千葉RBに責任があるので、この命令を了承。
ラジャー! さ、先が思いやられるぜ。
ルートはいよいよ薮こぎウッズ道に突入。
ここから本番である。
下は腐葉土、林の中をすり抜けて行く。
木と木の間隔が狭く枝が密になっており、時折枝がメット隙間から頬に当たって痛い。
木の根っこによる50cm程の大きな段差が幾つか存りDFのエンジンガードが引っかからないかと冷や冷やする。
この間ビギナーのB隊員、枝に引っ掛かって倒れそうになったり、段差で立ち往生し倒れそうになったりと、おいらのサポート頻度が増える。
そして30cm程の倒木越えに失敗し転倒。
サポートのおいらが起こす。
20Kgのオモリのせいか、バハでも重く感じる。
他の隊員(おいらの含む)は難無くクリア。
ここで作戦変更、B隊員を全員でサポートの護送船団方式に。
おいらに負担が掛かり過ぎるので、負担をみんなで分散しょうとの理由から。
ルートは緩やかな下りから勾配のきつい登りへ。
がんばれB隊員。
バイクが丁度すっぽり収まるぐらいのすり鉢状の登り坂。
B隊員がスタック。
みんなで彼を押すがなかなか登れない。
怖がってクラッチを旨くつなげないようだ。
ハンクラでアクセルをあおるものだから掘れてしまうだけで登れない。
次第にみんなの声が荒くなる。
「クラッチをちゃんとつなげ、クラッチを!!クラッチつながないとバイク動かないだろー!」
ようやく動き出すが今度はアクセルを開ける事が出来ずすぐストップ。
よたよたと下がり出しみんなで押さえる。
この状況を何度か繰り返し何とか傾斜の緩やかな所までたどり着く。
他の隊員は難無くクリア。
登りはまだまだ続く。
傾斜が少しきつくなるとB隊員はスタック。
そしてみんなでサポート。
山頂にたどり着いた時にはみんなバテバテ。
ここで昼食。
時間は30分。
自衛隊用非常食をほうばる。
五目めしがなかなかいける。
出発5分前になると荷物を整理し出動態勢に、そして時間通りに出発。
ここからしばらく下り、勾配は中くらいってとこ。
30分程下り、また登りとなる。
今度は先ほどのようなきつい傾斜はない。
30分程でようやく薮こぎ脱出、再び深々の火山灰ルート。
ヒルクライムポイントが立ちはだかる。
B隊員にラインを指示し、サポート態勢をとる。
B隊員スタート。
「アクセル開けろ開けろ開けろー!」
みんなが声を掛ける。
B隊員クリア、みんな拍手喝采。
ここを抜けると10分程で国道に到着。
救援物資を届け、無事第一の任務終了。
しかし、休む間もなく第2の指令。
これは通信訓練で、災害現場での状況説明のやり方の説明を受け15分程で終了。
そして直ぐに第3の指令を受ける。
地獄の訓練はここからである事を我々は知る事になる。
第3の指令 被災状況の調査
災害によりある民家が崩壊したとの情報がはいった。
民家へ通じる道路はすべて通行不能との事。
沢伝いに進めば現場まで行く事が可能と思われる。
RBに出動要請、直ちに現場に向かい被災状況を確認せよ。
この指令を受け、我々の小隊も現場へと向かう。
沢の入口に来ると、教官が
「ここから先はルートの確保が難しいので自分が先頭を走る、貴様らついて来い」。
そう、ここは富士の樹海の入口、わしらトーシロでは道に迷ってしまい出てこれなくなるとの事。
一同びびる。
最初はまだ道といえる沢沿いを走行、その道の行き止まり(先はがけ、その下は川)となると右に90°旋回、山側へヒルクライム。
教官は簡単に登って行く。
つづいておいら。
助走距離は短く斜度は急、中腹に二本の木がありハンドル幅+αの幅しかなく下は腐葉土。
意を決しスタート、その中腹の木の枝にハンドルが当たりバランスがくずれ
右側の崖へ.......................。
あれ、落ちない。
な、何とリャキャリアが木の幹に引っかかっている。
新たなキャリアの有効性を発見。
教官のサポートを受け何とかクリア。
次々とアタック、やはり木が気になるのか、ノーミスでクリアする隊員は少ない。
B隊員を何とか引っぱり上げ、樹海の中を前進して行く。
湿った倒木が多く隊員の前進を苦しめる。
教官が迷いだす。
同じところをうろうろ。
「ちょっとここで待機」、教官ルートを探し始める。
だ、大丈夫かよー。
一同不安になる。
5分程で戻ってきた。
どうやらルートを発見したらしい。
日は沈み始め、薄暗くなってきた。
いよいよ樹海のナイトランとなる。
突如、バイクを止めて集合と教官の指示が飛ぶ。
「ロープを使ってここを下る。今から要領を説明する。」
下を覗くとかなりの急斜面、距離は20m位、下ると言うより降下かな。
カラビナでロープをバイクの後部(キャリア等)に固定、3名でロープを確保し、残りはバイクの補助。
まず教官が手本を見せる。
ロープを確保してる隊員に「ゆるめ」「ゆっくり」「ストップ」とロープの張り具合の指示を出す。
降下方法は斜面に対し斜めに移動、山側からバイクを支えブレーキは使わずロープの張りで調節して降ろして行く。
日没の為闇の中の作業となり、懐中電灯を照らしながら行った。
さあ、おいらの番だ。
ゆるめ、ゆるめと指示を出しながら慎重に降りて行く。
腐葉土の為足元がすべりやすい。
中腹に差し掛かった時いくらゆるめてもバイクが動かない。
何かが引っかかっているようだ。
下を照らすとリアのブレーキペダルが段差の所で引っかかっていた。
一旦引っぱり上げ3人掛かりで持ち上げて何とかクリアし、無事降下に成功。
全員無事に降下し、更に闇の中を前進。
闇の中から突如現われる木の枝や根っこに当たり転倒者続出。
教官のようにスムーズに進めない。
先頭の方の隊員が「わっ!」と言う驚きの声と共に闇の中へ消えていく。
何事か、みんなバイク止めて駆けよる。
川の流れた跡で道が削れており、隊長がそこで転倒していた。
「大丈夫、大丈夫」と言って起き上がる。
その先は急な登り坂のヒルクライムセクション。
既に教官はその上にいる。
ルートを懐中電灯で照らし、一台づつアタック。
斜面が急で三つのトラップ(段差)が在るため各隊員苦戦。
ノーミスでクリアしたのは教官とトライアルバイクのS隊員、他はサポートによってクリア、B隊員はみんなで押しても登れないので、ロープを使って上げましょうかの問いに、教官いわく
「この程度でロープを使う必要はねーよ」。
しかたがないので代理のライダーをたてて何とかクリア。
そして更に闇の中を前進していく。
登りあれば下り在り。
続いての難所はダウンヒル。
前方の隊員の姿が闇の中へと消えて行く。
どうやらダウンヒルセクションのようだ。
次はB隊員の番。
「大丈夫か?」と声を掛けようとしたら、とっとと降り出す、サブリーダーのT隊員が
「おいおい行っちゃったよー。大丈夫かよー。」
B隊員のバイク音が闇の中へ消える
。あれっ、音が聞こえ無くなったぞ。
そんなに下まで下るの?初めて下を覗き込む。
結構急だ、30°位はありそう。
下までは暗くて見えないが、B隊員の姿も見えない。
みんな懐中電灯を持って下まで降り、B隊員を探す。
木と木の間からうめき声が.........。
懐中電灯を声の方に向けると、B隊員が仰向けに倒れてバイクが足に乗っていた。
木に激突したようだ。
直ぐバイクを起こし様子をみると、苦痛で顔が歪んでいる。
痛そうだ。
まっ、まさか骨折?
先に進んでいた教官達が戻ってきた。
「どうした、大丈夫か?」
B隊員「足が、足が痛いです。」
靴を慎重に脱がし怪我の状態を調べる教官。
教官「大丈夫、骨は折れてないようだ。立てるか?」
B隊員「だ、だめです。立てません。両腿が吊って痛いです。」
教官「わかった、無理するな。その状態で休んでいろ。湿布持っているのいるか?腫れてるところに貼っとけ。」
B隊員本人が持っていたので、それで応急処置をする。
教官「ちょっとみんな集まれ。彼(B隊員)をどうするのか貴様らで判断し、決まったら報告しろ。」
この状況でも厳しい。
我々(RB)の決断力を試しているようだ。
みんなの考えは一致していた。
彼をこれ以上走らせるのは無理と。
本人を了承させ、教官に報告。
教官「わかった、これよりB隊員の搬送作戦を行う」
ここは富士の樹海の中。
どうやって?
教官は怪我人が出た事を本部に報告。
本部からの指示を仰ぐ。
とりあえず作戦が決まるまで夕食をとる事に。
支給された非常食をほうばる。
教官は食事をとらず、無線で連絡を取り続けている。
そして、時折コンパスと地図を見ながら周りを徘徊。
現在位置を確認しているようだ。
教官「今から作戦を説明する。B隊員をトラック(軍用)でベースキャンプ地まで搬送する。トラックが入って来れるここから最短の場所で待機、そこまでは我々でB隊員を搬送する。まずは、トラックの入って来れるルートを探す作業から入る。自分他3名の隊員でこの任務を行い、残りの隊員はB隊員の付き添い、及びここで待機。直ちに3名を選び報告しろ」
選び出した3名の精鋭、キレ者のサブリーダーT隊員、最年長のS隊員(52歳)、レース経験豊富な元気者のK隊員。
教官「この辺りは熊が頻繁に出没するので注意するように」
この状況に追い撃ちをかける一言を残し、ルートの確保へ向かう教官他3名。
我々待機組は寒さと熊の恐怖に怯えながら、彼等の帰りをひたすら待つ事になる。
ルート確保の精鋭隊と待機組に別れた我々第2小隊。
オイラは待機組。
B隊員に声をかける、「大丈夫?、寒くない?」
B隊員「痛みの方は落ち着いてきたけど寒いです。」
寒いと聞いて補佐の自衛官、透かさず上着を取り出しB隊員の肩越しにかける。
時刻は8時に成ろうとしている。
吐く息が白い。
温度計を見るY隊員。
Y隊員「今ね、9℃位。寒いよねー、暖かいコーヒーが飲みてー!」
Y隊員今度はランタン取り出し、ローソクに火を着ける。
Y隊員「懐中電灯の電池もったいないから、これで灯りはOKでしょう。」
何て用意いい人だ。
リーダーは携帯ラジオを取り出す。
リーダー「これを鳴らしとけば熊よけになるかな。」
用を足したくなったので、川の方へ行こうとすると、
補佐「待て、何処へ行く」
おいら「トイレです。」
補佐「熊に遭遇するかもしれないので一人で行動するな!」
連れションと相なる。
こうして待機組ののどかな?時間が過ぎていく。
1時間近くは待っただろうか。
精鋭隊が戻ってきた。
ルートは見つかったのだろうか。
あれっ、バイクは?
T隊員「バイクはすぐ向こうに置いてある。ルートは見つかった。トラックもそこで待機している。」
教官「B隊員、大丈夫か?立って歩けるか?」
肩越しに支えてゆくりと立たせる。
B隊員「大丈夫です。歩けます。」
教官「よし!!」
上着を繋いで担架を作る必要はなさそうだ。
教官「これから次の作戦に入る。また待機組と搬送組の二班に分けて行動する。搬送組はルート確保に自分他2名、B隊員を支える者1名、無線機を持つ者1名。ルートの確保はまたT、S両隊員に任す、Y隊員おまえがB隊員を支えろ、無線はおまえが持て。」
えっ、おいらがですか、ラジャー。
ランドセルのような重たい無線機(ベトナム戦争映画に良く出てくる背中に背負っている大きな無線機と同じタイプ)を背負わせられる。
教官「自分の暗号は○×△だ、この呼び出しがあれば応答し現状況を報告しろ」
言われるままに背負った無線機、重要な任務を任されてしまった。
うまく応対ができるだろうか。
B隊員搬送部隊、樹海の闇の中を地図とコンパスを頼りに行進(バイクでなく、歩いての搬送)して行く。
重要なコンパスワークはT隊員とS隊員が行う。
まずS隊員が先に進み10m程の所で止まって合図する。
その位置に向かってT隊員がコンパスを当て、進む方向が正しいか確認し、ずれていれば右に何歩左に何歩とS隊員に指示を出す。
進む方向がOKであればそばの木に蛍光ペンで印を付ける。
この作業を繰り返し、少しづづ慎重に前進して行く。
この作業をミスれば、我々は樹海の中をさ迷う事になる。
果たして無事トラックの所までたどり着けるだろうか?
おいらは無線係り。
歩き始めて15分程経ったろうか、突如無線が入る。
「こちら●●●、○×△連絡くれ!」
うん、○×△は教官の暗号だからお、おいらが応答しなければいけないのか。
「こちら○×△どうぞ」
「○×△、怪我人の状況を報告してくれ。」
「怪我人は両脇を支えられていますが、歩いて進んでます、どうぞ」
「●●●了解した。こちらからそちらの灯りは見えないが、そちらかは見えるか?」
どうやら搬送トラックからの無線らしい。
「見えないです、どうぞ」
「灯りを確認できたら●●●に連絡くれ。」
「○×△了解しました。」
交信は何とか形になったようだ。
10分程歩いただろうか、また無線が入る。
「こちら●●●、○×△連絡くれ!」
「こちら○×△、どうぞ」
「こちらから灯りが見える、確認したいので合図してくれ」
教官に報告すると、教官は懐中電灯大きく回して合図を送る。
「合図を確認できた、そちらからは見えるか?くれ」
「まだ見えないです、どうぞ」
「了解、そのまま直進しろ」
数分後、トラックの灯りが見え無事林道に出る。
B隊員をトラックに乗せ、搬送の任務無事終了。
B隊員の代理ライダー(自衛隊員)と共に来た道を同様の方法で戻る。
行きよりは速いペースで20分程で待機組と無事合流。
教官「よーし、第3の指令の任務再開する。」
休む間もなく直ぐ出発となる。
ダウンヒルセクションをまだ下っていないのは、おいらを含めて3人。
教官「また怪我されてはこまるので、無理であればロープを使うぞ。」
3人共ロープを拒否。
ルートは二通りある。
一つは下って直ぐハンドルを右に少し切って斜めに降りるルート。
この斜めのルートは木の間隔が広いので容易だが、ハンドルを切るタイミングをミスして直進してしまうと木に激突してしまう。
もう一つは、直進ルート。
前半に障害物はないが、後半に大きな木が二本平行して立って居り、バイクがすり抜けられるぐらいの間隔しかない。
B隊員はこの木に激突して怪我した。
おいらは後者のルートを選択、慎重に狙いを定めてイザ。
スピードが速い、何とか木の間をすり抜ける。
げっ、すぐそこに川が......。
ブレーキ!!ふうー、何とか止まり無事成功。
他の二人も成功。
更に闇の樹海への進軍は続く。
B隊員を無事搬送した我々第2小隊は、再び闇の樹海の中の進軍を開始する。
第3の指令(孤立した民家の被災状況の調査)の目的を果たすために。
ヒルクライムセクションが連続して続く。
B隊員がいなくなったせいか、ペースが速い。
いかん、遅れ始めてきた。
離されないように必死でついて行こうとするが、倒木や木の根が進路を遮り思うように進めない。
前方のバイクのテールランプが闇の中へ吸い込まれ見えなくなる。
おいらの後方のY隊員、H隊員も同様に苦戦しているようだ。
Y隊員「もう体力の限界だ。
次に怪我するのは俺かもしれない。」
おいらも限界に近づいて来ている。
おまけに水も残り少ない。
あとどれくらい走るか解らないので飲み干す訳にはいかない。
小1時間位走っただろうか。
漸く樹海を抜け出す。
と、同時に教官の叫び声が突然上がる。
教官「人が倒れている、保護しろ!」
みんなバイクを止め、何事かと教官の方に掛け寄る。
迷彩服の自衛隊員が倒れていた。
最初本当に怪我か何かで倒れいるのかと思ったが、どうやらここが目的地で、民家が在る事を想定した場所らしい。
被災者役の自衛隊員無事保護し任務終了。
それにしてもこの自衛隊員、どれくらいここに居たのかな?
教官「本来ならばまだ訓練を続ける予定だったが、怪我人が出たので本日の訓練はこれにて終了とする。10分間休憩としそれからベースキャンプ地に向かう。キャンプ地まではまだ距離があり、不整地を走るので各自油断しないように。以上、今日は御苦労様でした。」
やっと終わった、水が飲める。
時刻は夜の10時、B隊員が怪我しなかったら何時までやったのだろうか。
一路キャンプ地へ。
普通の林道のナイトランが楽に思える。
結構みんなハイペース、20分程でキャンプ地に到着。
沼津RBのサポート隊の歓迎を受ける。
「テントの設営が終わったらこちらのたき火の方に来て下さい。暖かい飲み物と食べ物がありますので。」
甘酒とコーヒーがあり、おいらは甘酒をもらう。
B隊員の事を尋ねると、怪我のほうは打撲と少々の火傷と軽傷だが、一応大事をとって宿舎での宿泊との事。
大した怪我でなくてほっとする一同。
第一小隊はまだ戻って来てない。
悪いと思いつつ、アルコールが入り宴会モードになる我々第二小隊の面々。
突如そばにいた自衛隊員が言い出す、
「よーし交代、今からおまえらに引き継ぐぞー!」
えっ、交代って、引き継ぐって何を?
我々は自衛隊の野営の意味を知る事になる。
自衛隊員「これからおまえらに審番をやって貰う。まー所謂見張りだ。野営地の安全確保を目的とする警護で、我々の野営は必ずこの訓練が含まれる。訓練内容は二人一組みで1時間交代とし、朝の6時まで行う。やる事はたき火の火を絶やさない事、バイク、テントの見廻りを行う事、以上の2点だ。第一小隊が戻って来たら彼等にも伝えろ。では後宜しく」
宴会モードが一気に冷めていく。
とりあえず順番を決める。
我々第2小隊はB隊員が抜けてるため7名、11時〜2時まで2、2、3人で分担。
2時以降は第一小隊に引き継ぐ。
12時を回った頃第一小隊がようやく戻って来る。
スバルラインの5合目の駐車場まで薮こぎウッズルートで行って来たとの事。
お疲れーと言って暖かい飲み物を振るまい、一息寛いでもらった後に審番の件を告げる。
驚き更に疲れた表情を見せる彼等、まさに容赦のない地獄の訓練である。
我々第2小隊は第1小隊に比べ、B隊員の負傷退場のおかげで楽をしたようだ。
午前2時、審番の役目を終えおいらは床につく。
「起しょ〜う、起しょ〜う!!」
午前7時、自衛隊員の声が響わたる。
「よく聞け〜、今から30分で荷物を整理して朝食、8時までにテントを畳んで荷物をトラックに積め!」
寝ぼける間もなく慌ただしい朝となる。
配布されたサンドイッチを食いながら、まだ朝露で濡れたテントを畳む。
本日の訓練は、各自のペースでのヒルクライム等の走行訓練。
昼で解散の予定だから昨日のようなハードな訓練は無いようだ。
自分のペースで走ると楽しい。
特にコース4週の模擬レースは楽しかった。
12時に訓練を終え、昼食と風呂。
午後2時に集合し最後に本訓練の隊長が挨拶。
「みなさん御苦労様でした。みなさんにとって厳しい内容だったと思いますが、災害ボランティアとしてしっかりとした行動ができるように、敢えて我々と同じ内容の訓練をしてもらいました。よって本訓練に参加されたみなさんには、我々は信頼して任務任せられます。来年は更に厳しい内容の訓練を行います。もっと体力と技術をレベルアップしての参加をお待ちしてます。
では皆さん気を付けて帰路に着いて下さい。
きょうつけ!
右向けー右!
解散!!」