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亀吉くん(1995・北海道)


 妙に寒かった夏の北海道の旅を終えて、苫小牧発東京行きフェリーに乗るべく、前夜から支笏湖畔のキャンプ場におりました。
北海道最後の朝を迎え、感傷的に撤収を開始するとイキナリ雨!!
なんだよう!!
ブツブツいいながら出発・・・・
ちょ・ちょっと待ったぁ!!!
そう。
前日、ガス欠までリーチがかかった状態で到着していたのだった。
 テントを張ってから給油しようとしてて、コロっと忘れてしまった訳ですな。
このまま苫小牧まで向うのはチャレンジャーすぎる!!
フェリーに乗り遅れたらシャレにならないではないか!!!
 湖畔のガソリンスタンドの営業開始時間までの1時間、雨宿りしながら呆然と待つ事にする。
目の前を、今朝フェリーを降りたばかりの連中が、北海道での出来事への期待に満ち溢れた走りで通り過ぎていく。

 クラブマンの400cc(型式は知りまへん)が木陰で雨宿りしている。
茶髪で、いかにも渋谷あたりを走ってそうなニイチャンである。
東京のナンバーのバイク。
この時間にこの様な場所で休んでいる所を見ると、やはり今朝のフェリーで到着したのだろうか。
それにしては、荷物が異常に少ない。
どうせスタンド開店まではヒマなので、声を掛けてみる。
「こんにちは」
「こ・こんにちは。メチャメチャ寒いっすねぇ」
寒い訳である。
TシャツにGジャンだけ。(この年は寒かったのだ)
「今朝のフェリー?」
「そうっす。雨が降って来て困ったっす」

な・なんとカッパを持っていない!!!

「シゴトを辞めて来たっすけど、北海道がこんなに寒いとは思わなかったっす」
「何か着るものは持って来て無いの?」
「着替えのTシャツだけっす」
「そんな格好で、いつまで北海道に居るツモリ?」
「カネが無くなったら帰るっす」
「な・なんとまぁ・・・・・で、これからどっち方面に?」
「北の方に向うっす。稚内って、今日中に行けるっすかねぇ」
「行けない事は無いけど・・途中でどこにも寄ずに?」
「地図が無いから、何も判らないっす」
「・・・・・・・で、どういう所で泊まるの?キャンプ?」
「キャンプ道具も何も持ってないっす。これを買ってきたっす」

彼が手に持ったガイドブック、『格安・公共の宿』などと書いてある。

「そ・そげな所ばかりに泊まったら、カネが掛かり過ぎだよう!!」
「そうっすか?格安って書いてあるっすけど?」
「10日も泊まれば4〜5万もかかっちゃうよう!!」
「そぉっすねぇ。じゃ、どうすればいいっすか?」

 一緒に今日のフェリーで帰ろう!!
と、喉まで出掛かった言葉を押さえ、
「まず、土産物屋が開くのを待って、観光ミヤゲのトレーナーを買いなさい!」
「は・はぁ」
「チャチくてもいいから、とにかくカッパも買いなさい!」
「そ・そぉっすねぇ」
「札幌あたりに寄って、格安の寝袋とマットを買いなさい!」
「寝袋っすか?」
「そう!!宿を辞めてライダーハウスに泊まれば、直ぐに元がとれるから」
「ライダーハウスって何すか?」
「・・・・・・・」

仕方が無いのでホクレンの地図をあげる事にする。
ライハもいくつか書いてある事だし。

「ありがたいっす。ところで・・・・」
「なぁに?」
「もひとつ教えてもらっていいっすか?」
「な・なんだね?(嫌な予感・・・)」
「札幌ってバイク屋有るっすかね?オイル漏れが激しくてヤバいっす」

「さようなら・・・・・」

そんな彼、今ごろは最強キャンパーになってたりして・・・・

(全て実話です)

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