STRATEGY
「好きです」
この一言が言えたら何て楽なんだろう。
でもそれは絶対言ってはならない言葉なんだ。
だって僕が好きなのは…
「ジロ?どうしたの?ボーッとして。」
考え事をしていたら、いつの間にいたのか、テルが僕の顔を覗きこんでいた。
間近にみえるテルの綺麗な顔にドキッとして慌ててしまう。
「なっ…なんでもないよっ…(うわー声が震えてるよー。テル、変に思ったかも…)」
「そう?ならいいけど。」
テルはニコッと笑って「とのー!」とヒサシくんの方へ行ってしまった。
僕はテルが自分から離れたのを確認して、緊張の糸を解いた。
「びっくりした…まだ心臓がドキドキしてるよ…」
「心臓がどうしたって?」
「えっ?」
そう声がして振り向くと、そこにいたのは…
「あ、タクロウくん…」
タクロウくんは少し笑って、僕の隣に腰掛ける。
「タクロウくん、忙しいんじゃないの?」
たしかタクロウくんは今日はスタッフと打ち合わせが会ったはず。
こんなとこでのんびりしてる場合じゃないと思うんだけど…。
僕の質問にタクロウくんは、
「うん、でも今は平気。」
って言った。でも手には一杯の書類を持っている。
僕の顔に思ってた事が現れてたのか、タクロウくんは僕に耳をよせてささやいた。
「それに…ジロウ、俺に相談したいだろ?」
そう言って、ウィンクする。
まったく…タクロウくんにはなんでもお見通しだなぁ。
タクロウくんには敵わないよ。
僕がはあーっとため息をつくと、タクロウくんは心配そうな顔になった。
「ジロウ…そろそろ言ってもいいんじゃない?てっこだって、ジロウの事嫌いじゃないと思うよ?
幼馴染みの俺が言うんだからさ…」
タクロウくんの言う事は僕もわかってるんだ…
「でも言えないよ。テルに余計な気を使わせたくないし…」
「余計な事じゃないと思うよ。ジロウがそこまで思っててくれてる、って知ったらてっこだって、嫌な気はしないよ。」
「…うん…でも…もうちょっと…黙ってる。ごめんね、タクロウくん。いつも相談にのってもらってて」
「何いってんの!こんな俺で良かったら何でも相談してよ。ジロウにはいつもお世話になってるからね」
僕はタクロウくんの優しさが心に染みた。タクロウくんはホントに素敵な人だよ。
いくじのない僕が悪いんだよね…。
「もーそんな落ちこまないでよ、ジロウ。ジロウがしたいようにすればいいから。ね?」
「うん」
その上、慰めてくれるなんて…、ホントごめんねタクロウくん。
「じゃ、俺打ち合わせに戻るね」
「あ、うん。」
そうだよ、タクロウくん忙しいんだった…。悪い事しちゃった…。
タクロウくんは忙しいそうにスタッフの方に行ってしまった。
一方ヒサシは、自分と話しているテルが、ジロウの方をちらちらと見ている事に気づいていた。
「気になるんだろ?」
少し離れた所でタクロウと顔を寄せて話しているジロウを指差していう。
「な、なんのこと?」
「うろたえんなよ」
明らかに焦っているテルをクスっと笑ってヒサシは続けた。
「そんな…ただ…仲いいな、と思っただけだよ」
「ふーん」
「なんだよーホントだって!」
「別にいいけどさ」
(こいつさー、ホント素直じゃないな。ホントに)
心の中でそう思うヒサシだった。
「たくろう」
「呼んだ?」
ヒサシは、台所で料理をしているタクロウをリビングのソファーから呼んだ。
「呼んだ。あの2人どうなると思う?」
「てっことジロウのこと?」
「あいつらさー、まどろっこしいんだよ。どーせお互い好きなくせに。」
「2人とも強情だからな。」
「何とかなんないか?」
「うーん」
両手に料理の皿を持って、タクロウがリビングにやってくる。
タクロウは、お皿をテーブルの上に置くと、
ヒサシから、ヒサシが抱えているクッションを奪い、その代わりに「はい」とフォークを渡す。
「今日、パスタ?」
「ヤダった?」
「ううん。」
「そう?で、てっことジロウの話だっけ?」
「うん」
ヒサシは今日テルがジロウを見ていた事を話す。
タクロウもジロウに相談された事を話す。
「ジロウの奴、さっさと言えばいいのに」
「まあまあ。ジロウらしいじゃん」
「もうすぐクリスマスだろ〜」
「あの2人がくっつけば、俺と2人で過ごしてくれますか?」
隣に座るヒサシの顔を、タクロウは覗きこむ。
「…2人がくっつけばな」
ぶっきらぼうにヒサシは言う。
「じゃ、いっちょ頑張りますか!」
あの2人、絶対くっつけてやる!と思ったタクロウだった(なんて現金な/笑)
「ねータクロー今年のクリスマスどうすんのー!」
暇をもてあましたテルが、仕事中だと言うのに、そんな事を聞いて来た。
「あーとねー、てっこが料理担当だから。」
仕事とする手を止め、タクロウはテルにそう言う。
「えーーー!!」
「ちなみに会場もてっこんちね」
「なんで!?」
「文句言わないの。てっこにとっておきのプレゼント用意しといたから。」
「何々?」
途端、嬉しそうな顔をしてテルがタクロウに聞いてくる。
「秘密。当日のお楽しみvv」
「えーなにー教えてよぉ」
「だーめ」
「てっこ、なにしてんの?」
「あ、との。だってタクロウがさー」
タバコを手にしたヒサシがやって来たので、テルは今度はヒサシに話しかける。
「クリスマスだろ?」
「そう。とっておきのプレゼントってなに?」
「教えねえ」
「ケチー。…あ、ジロウ…」
「みんな、おはよう。早いねー。何の話?」
他の仕事で遅れて来たジロウがやって来て、質問してくる。
「クリスマスの話。てっこんちだから。」
「あ…そうなんだ…」
「ねージロウは知ってるの??」
「え、何?」
「俺にね、とっておきのプレゼントがあるっていうんだけど、2人とも教えてくれないんだよねー。知ってる?」
「ううん。僕もいま初めて聞いた。」
ジロウの答えにタクロウはクスクスと笑う。
「ジロウにも、プレゼント用意してるからさ。な、ヒサシ」
「ああ。結構いいもんだぞ」
「なんで、僕達には内緒なの?」
「秘密。なーヒサシー?」
タクロウは嬉しそうに笑う。
「クリスマスまで待ってろ」
ヒサシもタクロウと顔を合わせてくすくすと笑っている。
「2人ともへんなの」
ジロウは怪訝な顔をしてタクロウとヒサシを見ていた。
「プレゼントってなにかなー?」
テルはワクワクした顔をしてプレゼントを想像していた。
「テルくん…」
(テルくんって…呑気だな、ホント…)
「プッレゼントーなーにかなー」
テルは1人料理をしながら、タクロウとヒサシが言うとっておきのプレゼントを気にしていた。
「もうすぐ3人とも来るかなー」
ピンポーン
「あ、来た。はーい」
テルは一旦コンロの火を止めて、玄関へと走る。
玄関のドアを開けると、そこにいたのはジロウだけだった。
「あれ?まだみんな来てないの?」
「ジロウこそ、2人と一緒じゃないの?」
「もう来てると思ったんだけど…」
ジロウは片手にスーパーの袋を持っていた。
「ジロウそれなに?」
テルがそう言って指さしたのは、スーパーの袋でなくジロウが持っていた封書の小包み。
「あ、そうだ。これテルくんにだよ。ポストに入ってたから持ってきた。」
「俺に?ありがとー。なんだろ〜。あ、とりあえず入んなよ」
「お邪魔しまーす」
「もうちょっとで料理も出来るから、座って待っててよ。」
テルはそういうと、台所に消えた。
「2人とも遅いね〜」
約束の時間を一時間過ぎてもタクロウとヒサシは来ない。
「忘れてる、ってことはないよね〜。タクロウに限ってねえ?」
「タクロウくんがパーティ忘れるワケないじゃん」
「そうだよね〜」
テルはなんでかなー、と言いながら席を立つ。
しばらくして「あ!!」と大きい声をだした。
「テル君どうしたの?!」
ジロウが声を掛けると、
「これ…」
テルはここへ来たときジロウが手渡した小包みを持っていた。。
「それがどうかしたの?」
「これタクロウとヒサシからなんだ…」
中身はビデオテープと手紙だった。
「でもそれ消印なかったよ?…もしかしてわざわざ来て入れてったってこと?」
「なんだろうねー。なになに…
『てっこ&ジロへ 2人でこのビデオを見なさい
TAP&尚』
だって?見てみる?」
「とりあえず見てみようよ」
ジロウのその声にテルはデッキにビデオを入れて、再生ボタンを押す。
砂嵐の後に2人の姿が映る。
「え〜GLAYのギターのTAKUROです。」
「オマエそれ違うよ。自己紹介いらないだろ」
ラジオとおなじノリのタクロウにすかさずヒサシの突っ込みが入る。
「あ、そっか。じゃ、こんばんわ」
「挨拶もいらないって」
「え、そう?」
「早く本題に入れよ」
「いいじゃーん。…えっとー、てっこ、ちゃんと料理は作ったのかな?
これを見てるって事は、ジロウもいるってことだよなー。
せっかくのてっこの料理食べれないのは残念なんだけど、俺らそっち行かないから」
「は?」
思わずテルとジロウ、2人の声がハモってしまう。
ビデオは更に続いている。
「その方がてっこもジロウも嬉しいだろ?ジロウ、今日はクリスマスだし頑張りなよ?」
「まあ、これが俺らからのクリスマスプレゼントだから。嬉しいだろ?てっこもジロもさ。
大体お前らまどろっこしいんだよ!」
「まあまあ、ヒサシさん落ちついて(笑)。2人とも頑張りな。じゃあね」
その言葉で映像は途切れた。
部屋には沈黙が。
2人ともお互いに対する恋心をこういう形でしってしまった為どうしていいか分からないようだ。
時計のカチ、カチという音だけが部屋に流れている。
「あのさー」
「あのっ」
思いきって口を開いたら、2人の声が重なってしまった。
また沈黙。
「…ジロウ、何?」
「テル君こそ」
「俺は後でいいよ」
「え、いいよ。先に言ってよ」
「いいよ」
2人の間で押し問答が続く。
妥協案を提案したのはテルだった。
「同時に言おうか?」
「えっ…?」
「嫌ならいいよ」
「…分かった。同時でいいよ」
「じゃあ、せーので同時に」
「せーの!!」
「好きだよ」
「好きだよっ」
またハモる。(笑)
2人はまた一瞬唖然とする。
「…うははは〜」
「あははは」
思わず笑いがこみ上げてきて、2人とも大笑いしている。
「ジロウ」
突然、テルが笑うのを止め、真剣な顔になった。
「な、なに…?」
「俺、ジロウの事、ずっと好きだった。さっきのホント?」
「うん…」
「俺、ジロウはタクロウの事好きなんだと思ってた。」
「…僕、テル君のことずっと好きだったんだ。でもずっといっちゃいけない、って思ってたんだ…」
「なんで」
「だって…」
ジロウはそこで口篭もる。
「ねえ、ジロウ?俺達さー、両思いだったんだねー」
「両思いって…」
(子供じゃないんだから)と心の中で突っ込むジロウだった。
結局、相思相愛だった2人。
それを知らなかったのは2人だけだったのです。
名づけて、『TAPのホーリークリスマス作戦』も一応成功だったのでしょうか?
テルジロでした。ゆかさんのキリリクのリクでジロウの片思いでした。
ジロウ視点にしようと思ったが、最初で挫折(悲)ごめんなさい…
しかもーすげえ中途半端だし。片思いしか考えてなかったので、両思いに〜
のあたりがうやむやに…。やっぱり可愛いジロウは難しいなあ…。
ホント、申し訳ないです。
暇になったらちゃんと直します!!