らいおんハート
ぼくのなまえは、くぼそらやです。みんなぼくのことそら、って呼ぶんだ!
きょうはねぇ、パパもママもおうちにいるからうれしいんだ!
いつも、すごくいそがしいからいっしょにいられないけど、きょうはずっといっしょなんだ!
一部屋を改造してスタジオにしてある部屋につづく扉をあける小さな子供。
「ねぇ、ひさしぃ。あそぼー」
PCに向かって作業をしているヒサシを呼ぶ。子供の足元には猫が。
「んー?今、忙しいから…、向こうにタクロウ居るから、遊んでもらえ」
ヒサシは振りかえらずにそう返事をする。
「えー、ぼく、ひさしとあそびたいよぉ!」
「ワガママ言わない」
「…はあい。…行こ、あゆ」
ニャアと鮎も返事をして、ヒサシの居る部屋から出ていった。
ちいさな子供の名前は宙也(そらや)。この部屋の持ち主であるタクロウと今、黙々と作業をしているヒサシの、
2人の血の繋がった子供である。
宙がとことことリビングに歩いて行くと、そこではタクロウが紙にらめっこしていた。
宙はタクロウの袖を掴んでひっぱる。
「ねえ、たくろー」
「ん?ああ、どした?」
タクロウは袖を引っ張られて初めて、宙がいることに気づいたようで、顔を宙の方に向ける。
「あそぼ」
「ん…ヒサシは?」
「忙しいから、たくろうにあそんでもらいなさいーってゆってた」
「あ、そうなの?」
「うん」
「じゃあ…なにして遊びたいの?」
親バカなタクロウは仕事もそっちのけです(笑)
タクロウはソファーから降りて、宙の前にしゃがみこんで聞くと、
「あのね、おうたうたうの!」
と、舌ったらずな声が返ってきた。
「歌?」
(歌は…苦手なんだよなぁ…)とか余計な事まで考えるタクロウ。
「うんっ!あのねぇ、こないだね、ほいくえんでおそわったのー。うたっていい?」
保育園、という言葉に少し胸が痛くなる。
宙がタクロウの微妙な表情の変化に気づいたのか「どしたの?」と聞いてくる。
「なんでもないよ。じゃあ、ここで聞いててあげる。」
タクロウがにっこり笑うと、宙は嬉しそうに頷いて、小さな両手を頭の上で合わせる。
そして、歌い始めた。
「おーきなくりのーきのしたでー、あなぁたとわーたーしー、
なーかーよーくーあそびましょー、おーきなくりのーきのしたでー」
保育園で習ったようで、手の振りをつけて、大きな声で歌っている宙をタクロウはソファーに座って嬉しそうに眺めていた。
「ねぇ、ぼくじょうずにできた?」
宙がパタパタと駆け寄ってきて、タクロウの長い足に抱き着いてくる。
「良く出来ました」
タクロウは宙を抱えて、自分の膝に載せる。
ヒサシによく似た顔の宙がニコニコしている。頭を撫でてやる。
「あとで、ヒサシにも見せてやろうな。」
「うんっ!」
(ホント…ヒサシにそっくりだなぁ)と思っているタクロウだった。
リビングにピンポーン、という音が響く。
「誰だぁ?」
宙を抱えたまま立ちあがって、インターホンをとる。
「はい?」
「俺だよー。テルでーす。ジロウも一緒だよ〜」
「はいはい(苦笑)。開けとくから勝手に入っていーよ」
「はーい」
インターホンをおくと、
「ねーだれぇ?」
「あのねー、てっことジロウだよ。」
「じろちゃん?やったぁ!!」
「こらっ、暴れるんじゃないっ!(笑)」
宙が腕の中で暴れるので、落としそうになってしまったタクロウだった。(笑)
「こんちは〜」
「こんにちは〜」
宙を床に降ろしたとちょうど同時に玄関から2人の声がした。
「いらっしゃーい」
「ジロちゃんだぁ!!うわーい」
宙がジロウに向かって走って行く。宙はジロウが大好きなのだ。
「こんにちは、宙くん」
「こんにちは!!じろちゃんあそぼ!!」
宙がジロウの手を掴んで、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「宙、てっこにも挨拶しなさい(苦笑)」
宙の後から玄関に来たタクロウが、くすくすと笑いながら窘める。
「こんにちは」
宙はとりあえず、といった感じでそっけなく挨拶をすると、すぐにジロウの方を向いてしまう。
「ねえ、じろちゃんにもみせてあげる!ほいくえんでおそわったの〜」
テルそっちのけで、ジロウにばっかり話しかける宙に、
「俺には見せてくれないの?っていうか、俺嫌われてる?」
と、テルが苦笑いしながらひとりごとのように言う。
「じゃあ、てこもみてていーよ。」
舌ったらずな、でもヒサシにそっくりな口調でえらそうに言う宙に、テルは笑いながら、
「てこじゃないでしょ、てっこ(笑)」
と、呼びかたを窘める。
「てこ」
「言えてないよ〜。じゃあ、テルっていってみ?」
「てりゅ?」
「うはは〜言えてないよ、宙。」
テルは1人で爆笑している。ジロウはテルの事を、まったく大人気ない、といった表情でみていた。
「むー、いいもん!てりゅなんかきらいだもん!じろちゃんだけでいいもん!」
そういって、テルの足を蹴る。
「いたっ」
「コラ!」
タクロウはジロウの後ろに隠れようとする宙を持ち上げると、
「蹴っちゃダメだろ」
宙の目を見て静かに怒る。
「…」
「ごめんなさいは?」
「…ごめんなさい。」
「よくできました。」
小さな声で謝る宙をタクロウは肩車する。
「ねーたくろー。」
「ん?」
「なんで、ヒサシは怒られないの?いっつもたくろーのこと蹴ってるよ?」
子供の無邪気な質問にタクロウは絶句する。
「うっ……」
「…ブッ、うははは〜。」
一瞬の沈黙の後、テルが大声で笑いだした。
「よく見てるよね〜、子供って。」
ジロウはそう言いながらも、必死に笑いを堪えている。
「いやぁ…(苦笑)」
もう笑うしかないタクロウだった(笑)
「なんかさー、ホント、とのにそっくりだよね〜(笑)」
「ね〜俺の血はホントに入ってるの?、ってたまに思うもんなー、俺」と、タクロウも思わずぼやく。
「あ、ねぇそのヒサシは?」
「ああ」
タクロウが答えようとすると、
「あのねぇ、むこうのおへやでぱしょこんしてたよ!いそがしいーってゆってたもん」
「そのうち出て来ると思うよ。なー宙?」
「うんっ!」
「まあ、こんなとこで話してんのもなんだし。コーヒーでもいれるから座っててよ。
ほら宙にもホットミルクいれてあげるから。ソファーに座ってな。」
タクロウは宙を降ろして言う。
「ぼく、ここあがいい!ここあ!」
「はいはい。マシュマロは入れて欲しい?」
「うんっ!ましゅまろもー!」
「はいはい」
「タクロウくんって、ホント親バカだね〜」
親子の会話を聞いていたジロウが苦笑しながら言う。
「おやばかってなあに?」
宙がジロウを見上げて聞く。
「んー…宙くんの事大好きってことかな。」
「だいすき?…じゃあ、ぼくたくろうもひさしもじろちゃんもだいすきだよ!」
少し考えて宙はニコニコして言う。
「あれ?俺は?」
「そういえば…てっこは入ってなかったけど?」
「てこはいじわるだからや!」
「ほらぁ、テルってば、いつもからかってばっかりだからだよ?」
「だあって〜あまりにもとのによく似てるからさぁ。ごめんな、宙。もうからかったりしないからさ」
「ホントに?」
「うん」
「…さっきはけったりして…ごめんなさい」
「よし!仲良くしろよ〜」
タクロウはそう言ってキッチンに消えてゆく
宙はトタトタとリビングに走って行く。
子供には少し高めなソファーによじ登るようにして座る。
足をバタバタさせながら、「ここあ、ここあ」とそわそわしている。
テルとジロウは向かいのソファーに2人で座る。
「ココア、そんなに飲みたいの?」
ジロウが聞く
「だってね、ぼくひとりじゃつくれないもん。それにね、いつもヒサシがダメってゆうの」
「なんで?」
「そんなのわかんないもんっ」
「お待たせ〜」
ちょうどタクロウがトレイにコーヒーを載せてリビングにやって来て、宙の隣に座る。
「はい、ココア。熱いから気をつけるんだよ。」
「はあーい」
大き目のマグカップを小さな手いっぱいに持って、フウフウとココアを冷ましている。
「おいしいですか?」
「うんっ!」
「ねぇねぇ、宙くん?さっき見せてくれるっていってたのはなあに?」
「あっ!あのねえ、ほいくえんでおそわったの〜」
「なになに?あっ…」
「あれ?オマエら来てたの?」
「ひさしだぁ〜」
ヒサシの姿を確認した宙が、ソファーにの上に立って飛び跳ねている。
ヒサシはソファーの所まで来ると、宙を抱きかかえる。
「ソファーの上で飛び跳ねたりしちゃダメだろ。」
「はあーい」
ヒサシは宙を抱きかかえたまま、いままで宙が座ってたタクロウの隣に座る。
「宙はなに飲んでたんだ?」
「ここあー!」
「ヒサシもなんか飲む?」
「いや、いーよ。タクロウので。で、なに話してたわけ?」
「宙、ヒサシにも見せてあげるんだろ?」
「うんっ!あのね、みててね!」
宙はヒサシの膝から降り、ソファーからも降りる。
そして、さっきと同じように振りつきで歌い始めた。
「おーきなくりのーきのしたでー、あなぁたとわーたーしー、
なーかーよーくーあそびましょー、おーきなくりのーきのしたでー」
パチパチと拍手をしているタクロウの側で、ヒサシが黙って下をむいている。
「ヒサシ…?どした?」
タクロウがヒサシの頭に手を置くと、ヒサシが突然タクロウに抱きついてくる。
「ヒサ?どうしたんだよ?」
ヒサシはタクロウの背中に腕を回して抱き着いている。
タクロウはよしよしと優しい顔でヒサシの頭を撫でてあげている。
「ひさしぃ、どしたのぉ?かなしいの?」
ヒサシは小さい声で「違う」とだけ呟く。
「宙くん向こうであそぼっか?」
今まで黙って見ていたジロウが宙に話しかける。
「…えぇ?…うんっ!」
子供の興味は移りやすい。ヒサシの事は気になるものの、遊んでくれるという魅力には弱い。
「行こっか。ほら、テルも行こ?」
「あ…そうだね。」
「宙くんはなにしたいの?」
「うーんとねぇ…おいしゃさんごっこぉ!たくろうが買ってくれたのぉ!」
おもちゃが大量に置いてある中から、小さい白い箱を持ってくる。
「これなの!」
寝室へと入っていって、箱の中身を広げる宙。
「ぼくがーおいしゃさんでー、てこはかんじゃさんなのぉ!」
「はいはい」
テルは苦笑しながら、おもちゃの聴診器を持つ宙の前に座りこむ。
「ねえ、俺は?」
ジロウが聞くと、宙はにっこり笑って
「じろちゃんはー、かんごふさんなのぉー!」
と、ナース帽を差し出す。
「あ…はい…。俺…看護婦なの?」
「ジロウそれかぶってよ〜可愛いよ、きっと」
テルはにやにやしながら、ジロウに言う。
宙は2人を無視して一人で喋っている。こういうところはタクロウにそっくりだよなぁ、と思う2人だった。
「あのね〜いつもはね〜たくろうがかんじゃさんでー、ひさしがかんごふさんなのー。
ひさしはねーかぶってくれるんだよー」
2人とも思わずナース帽を被っているヒサシを想像したりして(笑)
その頃タクロウとヒサシはと言えば、、、
「ヒサ?どうしたの?」
「…なんか…俺…」
「ん?嬉しかった?」
「…うん」
「ホント…おっきくなったよなぁ…。俺ら忙しくてあんまかまってやれないのに、イイコに育ってるよな…。
それにしても、ヒサシに似てきたなー。」
「よくしゃべるとこはタクロウに似てる。」
ヒサシはタクロウの顔を見上げて言い返す。
寝室から聞こえる宙の笑い声に、2人して笑みがこぼれる。
「俺らも行こっか?」
「そだな」
寝室のドアを開けると、
医者の格好をしている宙、ナース帽を被っているジロウ、ベッドに横になっているテル。
「なに、ジロオマエ、ナースか?」
ヒサシがジロウを見て笑う。
「あー笑ったなー!いつもはヒサシくんがやってるんでしょ〜!人の事言えんの?」
「俺は自分の子供と遊んでんだもん。」
「そんなこと言うんだったら、ヒサシくんがやんなよ〜」
「いーじゃん、似合ってるよ、ジロウ。」
「もータクロウ君まで〜」
「たくろー、てこねちゃったよぉ〜つまんない〜」
宙がタクロウの足にくっついてくる。
「んー宙、お前も眠そうだぞ?」
「そんな事…ないもん……」
抱き上げると、もう既にうとうとしていて半分意識がない。
テルの横に寝かせると、くーくーと寝息を立てて寝てしまった。
「ねちゃったな」
「久しぶりにみんないるから嬉しかったんだろ。」
「すごい楽しそうだったよ。すごいはしゃいでたしね」
ナース帽を取りながら、ジロウは言った。
「それにしてもさぁ、タクロウくんおもちゃ買ってあげ過ぎじゃない?」
「だろ?!こいつさー、俺が言うのもきかずに、買ってくるんだぜ?」
「まあまあ、いーじゃん。だってさぁ、ヒサシにそっくりな顔で買って?とか言われたらさ〜(苦笑)」
いつかもし子供が生まれたら 世界で2番目に好きだと話そう
君もやがてきっとめぐりあう 君のママに出会った 僕のようにね
タクロウが天使のような寝顔で寝ている宙の頭を撫でてあげながら歌う。
「タク…?」
「もう少し大きくなったら、この歌を教えてあげたいんだ。
俺がヒサシに出会ったように。宙もいつか自分が、
『この人を守る為に生まれて来たんだ』って分かる人にめぐり合える、ってことを。」
「タクロウ…」
「ねぇジロウ?」
「なに?」
「ジロウは、てっこに逢えて幸せ?」
「…あたりまえじゃん!」
「俺もだよ」
タクロウでもヒサシでもない声で返事が帰ってくる。
「テル…起きてたの…?」
「実はね。ねぇ、ジロウ。俺もジロウに逢えて幸せだよ。」
そう言ってテルは歌い出す。
君を守るため その為に生まれて来たんだ
あきれる程に そうさ側にいてあげる。
「宙くんもいつかめぐり逢うんだね。俺達が出会ったように」
「そうだね」
「その頃は俺らいくつ?」
「きっと一緒にいると思うぜ、俺ら」
「それだけは確実だね」
春の日差しのように穏やかで、幸せな一日だった。
8200をゲットした翠のリクエストでした。ホントはヒサシ妊娠編だったんだけど、
この話はそれより先の話になってしまいました。
宙くんは大体4歳くらいの設定で。オチが無理やりですみません(泣)
こんなんで…どうなのかしら?