大切な人

 

「なぁ、テルが先に死んだらどうする?」
2人きりの控え室で突然ヒサシが聞いてきた。
「は?」
「だからテルが先に死んだら、ジロウはどうする?」
きょとんとした顔でJIROは答えた。
「テルは先に死んじゃったりしないよ。だってそう約束したもん」
その答えに一瞬悲しそうな顔を見せたHISASHIは、すぐいつもの様に、
「約束ねぇ…そんなの信じてんの?」
と、皮肉たっぷりな声で言った。
バカにしたようなHISASHIの言葉にJIROはムキになって言う。
「テルは先に死んじゃったりしないもん!だって、そう言ったもん!」
その言葉にもHISASHIは、バカにしたような口調で答える。
「わかんねぇよ?ひとなんていつ死んじゃうか。突然いなくなったりして…」
「テルはいなくなったりしないもん!ヒサシくん、どうしてそんな意地悪ゆうの?
ヒサシくんのバカ…テルは…ぅ…ひっく…」
JIROはとうとう泣きだしてしまった。

「ジロ、との、2人の番…ジロ?!どうしたの!」
と、そこへ、TERUとTAKUROが撮影を終えて、戻ってきた。
JIROが泣いてる事に気づいたTERUが慌ててJIROに近づく。

「じろ?どうしたの?なんかあった?」
「テルぅ…ひっく…とのくんが…」
TERUはJIROを抱きしめたまま、HISASHIの方を向く。
「ちょっととの!ジロウに何言ったのさ!」
TAKUROはこういう時一切口を挟まない。
JIROの肩ををもてばHISASHIが怒るし、HISASHIの肩を持てば、TERUが怒るからだ。
壁にもたれかかって、じっと動向を見守っている。
「ジロウに聞けば?」
HISASHIは怒ったように吐き捨てて、部屋を出て行った。

部屋を出て行くヒサシを見て、
タクロウがやっと動く。
ごめんねと口を動かして、ヒサシを追いかけて行った。

「ヒサシくんがね、テルが先に…死んじゃったら…どうする…って」
下を向いて、嗚咽で言葉を詰まらせながら少しづつ喋るジロウ
「何でそんな話になったの?」
優しく問いかけるようにTERUは聞く。
「わかんない…突然とのくんが聞いてきて…」
JIROは首を小さく横に振る
「テルは先に死んじゃったりしないよね?どこにも行ったりしないよね。
だって約束したよね?」

涙を流しながら上目遣いでテルを見るJIRO。
TERUは指でJIROの涙をぬぐい、あやすように頭を撫でる。
JIROはいつのまにかTERUの服の裾を掴んでいる。
TERUはそれに気づくと、さらにやさしい顔になる。
ふっと笑って、てるはジロウの髪にキスをする
「大丈夫だよ、ジロウ。俺が今まで約束破った事なんてあった?」
「ない…」
「でしょ?ずっと一緒だよ。」
はっとしてTERUを見つめるJIRO
「…うん。」
「でも…ジロウも俺より先に死んじゃヤダよ」
「え…?」
「死ぬときは、一緒だよ。
俺はジロウを置いてったりしないし、ジロウも俺を置いてったりしない。
ずーっと一緒。ね?」
「うん」
「ジロウ…アイしてるよ」
「うん…僕も…愛してる」

2人はみつめあい、そしてキスをする。
「テルがいなくなっちゃったら、僕生きていけないよ」
俺だって。ジロウが俺を好きだって言ってくれなかったら、きっと今の俺はなかったよ。
ジロウはいっつも俺だけを見ててくれた。ジロウがいなかったら生きていけない。」
「テル…」
また涙が出てくるJIRO
「どうしたの?」
「だって…テルはこんなに僕の事愛しててくれてるなんて…
嬉しくて…あの時、あきらめなくてよかったな…って思ったら…」
「ジロウ、泣かないでよ。」
「ごめんね。」
「いいえ。」
笑顔でそう応えるTERU。
「これから撮影だねぇ」
と、のん気にTERUは呟いた。
「あ、そうだ」
「じゃあ、谷ヤンにメイク直してもらってこよっか。」
「どうしよう!僕、目赤い?」
「大丈夫。泣き顔もジロウは可愛いよ。」
「もうっ、テルってば(照)。」
「ほら、一緒に行ってあげるから。」
JIROの手を引いて部屋を出て行く。
「うん。」

部屋を出ると、そこにTAKUROが壁に背中をあずけ立っていた。
「とのは?」
「ん?スタジオにさきにいったよ。ジロウごめんね。」
「ううん、タクロウくんが謝ったりしなくていいよ。それに
僕もムキになったりして…。泣いちゃったし。」
「とのなんかあったの?」
TERUがTAKUROにたずねる。
「いや…毎年この季節はちょっとね。」
言いにくそうに、肩をすくめてそう言う。
「ああ、そっか…」
その言葉にTERUも何かを思い出したようだ。
JIROだけがきょとんとした目で、2人を交互に見ている
「なに?ねぇ、てるぅ」
繋いでるTERUの手をJIROが引っ張る。
「ん?…あ、じろうメイク直してもらわなきゃ、との待ってるよ。」
「あ…そっか」
「行こ。」
JIROの問いはTERUにうまくはぐらかされてしまった。

TERUとTAKUROはスタジオの隅でHISASHIとJIROの撮影を見ていた。
さっきとはがらりと変わって、2人ともGLAYのHISASHIとJIROの顔で立っていた。

「そう言えば、今ごろなんだっけ?とののお父さんが亡くなったの。」
「うん。突然だったらしいし。」
「…それ言ったら…タクロウだって…」
「ん…まあ、俺はちっちゃかったしね。一緒に遊んでもらった、とか言うのもそんなには…」
「覚えてない?」
「うん。でも、ヒサシは違うでしょ?」
「そだね…」
沈黙が2人の間を通りぬけて行く。
「なにしてんだよ」
沈黙を破ったのは撮影を終えたHISASHIだった。
「あ、との。終わったんだ?ジロウは?」
「あっち」
指差す方を見ると、スタッフに呼びとめられて話をしていたJIROがちょうどこっちへ来る所だった。
「てる〜見てたの?」
「まあね。」
「次はテルと撮れたらいいな。だって、いっつもとのくんとなんだもん。」
「なんだよ。俺とじゃ不満なのかよ。」
という、HISASHIの声に
「そうじゃないけど〜」
と、曖昧に答えながらJIROは続ける。
「いいよね〜タクロウくんは。いっつもテルと一緒で。」
「ん〜俺に言われてもね〜。なんか、そうなっちゃうんだよね、いっつも。」
TAKUROは困ったように言う。
「こんどは違う組み合わせにしてください、っていっとこ。」
「そだね。ジロウ、もうかえろっか?」
「うん!」
「今日は家、よってく?」
「うん、行く行く!」
TERUとJIROは仲良く話しをしながらさっさと行ってしまった。
「ヒサシ…」
「なに?」
「俺らも帰る?」
「そだな」
2人並んで言葉少なに歩きだす。
「なーひさしぃ」
「あ?」
「俺が一緒にいるから。ヒサシが寂しい時、辛い時、いつも隣にいてあげるから」
「…当然だろ…」
「俺んちよってく?」
「…考えとく。」

大切な人が突然いなくなってしまう。
その辛さを誰よりも知っているHISASHI.。後に残るのは後悔ばかりだということも。
素直になればきちんと伝わるのに…それが今でも出来ないのは…それが自分の性格だから。

TAKUROは自分の性格をよく理解している。多分、俺よりも。
何度、俺の代わりにいろんな人に謝ってくれただろうか。
そのTAKUROが自分の前から居なくなってしまったら…俺は生きていけるのだろうか。
JIROのように、あんな無邪気に約束を信じたり出来ない。
でもそれをできるJIROを羨ましいと思ってしまった。
自分に無い強さ。それが羨ましかったのかもしれない。

「タクロウ…」
「ん?なに?」
「ジロウに…」
「ああ、謝っといたよ。まあ、そんなに怒ってなかったし。」
「ごめん…」
「いーんだよ。帰ろ?」
「うん…」

誰よりも大切な人 
居なくなったりしないよね
ちゃんと…言葉にするから。ずっとそばにいてね。



終わり

あれ?最初はテルジロのつもりで書いたんだけど…
タクヒサになってしまいました。ま、いっか。
一言、かっこいい事を言うTAKUROに惚れがち。
ヒサシがやたら乙女チックになってしまって、反省してます。