THINK ABOUT…



ある日の朝の事です。
1人の子供が目を覚ましました。
「おはよ〜。…あれぇ?だれもいない…」
左手で眠い目をこすりながら、右手に大きなエルモのぬいぐるみを持ってリビングに来ましたが、
そこには誰もいません。
「…たっくん、たくろうとひさしがいないよぉ。まだねてるのかなぁ?」
その子供はぬいぐるみに、どうやら名前はたっくんと言うみたいですが、話しかけます。
子供は小さな頭を少しだけ傾けてなにやら考えていますが、
「よし!今日は僕が起こしてあげるんだ!」
と勇んで寝室に向かいました。

小さな体で少しだけ背伸びして、寝室へのドアをあけます。
「まだねてる…。たくろー、ひさーおきてよー」
その声にベッドの主たちはぴくりとも反応しません。
子供はおきないなぁ、と呟くとベッドの足元からベッドに昇ります。
んしょ、んしょ、と呟きながらキングサイズのベッドを進みます。
ようやく主たちが見えました。大きな人と小さな人が寝ています。
見たところ、この子供の両親のようです。
子供はベッドの頭に近い位置まで来ると、2人の間に隙間を見つけたようです。
そこの隙間にもぐると、子供は疲れてしまったらしく、起こすという目的を忘れて寝てしまったようです。
おやすみなさい。
でも、大事なたっくんが床に転がってますよ。



さっきより少しだけ太陽が上がった頃、大きい方の人が目を覚ましました。
ん〜ひさし〜、と呟きながら無意識に隣を探っています。
ひさしとはどうやら小さい方の人の名前のようです。
隣を探って、抱き寄せようとしますが一瞬手が止まって…また確かめるようにまた触って、
また手が止まって。
何を思っているのでしょう?
そしてすぐ目を開けて
「そら!?」
と叫びました。
「んん〜…んぁ、あ、たくろー、おはよー」
さっきの子供が目を覚ましたようです。
「そら、どうしてここにいるの?」
「えっとねー。たくろーとひさしをおこそうとおもってきたの。でもね、ねむくってねちゃったの」
「そらぁ〜オマエ可愛いなぁ」
「えへへ〜。ねぇ、まだおはようしてないよ?」
「ああ、挨拶してなかったな。おはよう」
「おはようごじゃいます。ねー、ぼくおなかすいたよぉ」
「あー、俺もすいたかも。じゃ、起きるか」
「ひさしはぁ?」
「昨日も遅かったから、もうちょっと寝かせといてあげよ。ね?」
「うん。あ、まって!」
宙はたっくんを拾ってまだ寝ているひさしの横に置きました。
たくろうを見てにっこり笑ってこれなら寂しくないよね?と笑いました。
「宙はいいの?」
「うん、いいの!ひさしはさみしがりやでしょ?だからおきたときにさみしくないように、かしてあげるの!」
「よし、いいこ、いいこ」
たくろうは優しい仕草で宙の頭を撫でてやりました。
そして、2人手を繋いでリビングに向かいました。

「あ、あゆとにこもおきてるよ〜!」
リビングの大きいソファーから仲良く遊んでいた鮎とニコが降りて来ました。
「たくろー、ぼくあゆとにこにごはんあげてもいーい?」
「んー、いいよぉー」
タクロウは台所に立って、朝ご飯の準備を始めました。
自分の分はコーヒーを入れ、宙の為にミルクを温めます。そして、トースターにはパンを放りこみます。
しばらくすると、チンと音がしてパンが焼けた芳ばしい香りが漂います。
タクロウはパンを出すと、猫達のご飯を眺めていた宙を呼びました。
「宙!ご飯だぞー。」
「はあーい」
自分のイスに座った宙の前に焼きたてのパンと湯気のたった牛乳を。
「はい。どーぞ。」
「あーい。ねー、いちごのじゃむくださいな。」
「んー、イチゴね。…はい、どーぞ。」
「ありがとー」

ほのぼのとした親子の朝ご飯です。クレーマークレーマーみたいだけど(笑)



「あはよ…うわあっ!!」
目が覚めると目の前に赤い物体がこんもりと。
ピントの合わない目で見て思わず驚いてしまったが、よくよく見たら…
「…これ…宙の…エルモ…?なんでここに…」
とりあえずエルモを持って、ベッドを出ます。
ん〜と一つ大きく背伸びをしてリビングに続くドアを開けた。
「…おはよ」
「あーひさー!おはよー!」
「…おはよ。おまえ、朝から元気だなぁ…。…そうだ、これ宙のだろ?」
「うん。」
「なんで俺らのベッドにあったんだ?」
「あのねぇー…ひみつ!ねーたくろー」
「そうそう、秘密(笑)」
「なんでだよー。俺にも教えろよっ!」
「だめだもん!!」
「ちぇっ、宙のケチぃ」
「まあまあ。はい、これひさのコーヒー」
タクロウが宥めるように、ひさしにコーヒーを手渡す。
サンキュ、と受け取るとひさしはたくろうの隣に腰掛ける。
「たくろー、俺にもパン焼いて。」
「はいはい。」
たくろうは立ちあがって、トースターにパンを放り込むと、宙に一言。
「宙、たっくんは隣に座らせといてあげな」
「うん。たっくん、ここで待っててね」
宙はそう言って隣のイスにたっくんを置くと、まだパンを齧ります。
「なあ、たくろう」
「ん?なに、ひさし?」
「で、なんでエルモが俺の脇に寝てたの?」
小声でたくろうにそう問いかけると、たくろうはくすっと笑って答えました。
「ひさしが起きた時寂しくない様に、だって。我が息子ながら、いいこだろ?」
その言葉にひさしは胸を張って言い返した。
「当然!だって俺の息子だよ?」
その後、お互い顔を見合わせて笑ったのは書くまでもないか。


何気ない朝の何気ない優しさ




久しぶりの宙君登場でした。
早く出ないと忘れられちゃうでしょ!と宙君に怒られてしまいました(反省)
この話は風邪引いてうなってる時に考えました。
何がメインで書きたかったのかよくわかんないんですけど、とにかく宙君が書きたかったのです。
まあ、そんな感じで。
エルモのたっくん(笑)でもう一話作ろうかと思ってます。