約束




ジロウの誕生日である17日午前0時。
「HAPPY BIRTHDAY!!」
あちこちからクラッカーの音が飛び交う。
このままじゃジロウが紙まみれになってしまいそうである。
「じゃじゃーん!」
テルが奥からケーキを片手に載せ、戻ってきた。
ケーキの上のチョコのプレートには『HAPPY BIRTHDAY ジロウ』と書かれていた。
「これ…」
「俺手作りの特製ケーキだよ〜ん」
「すごい…」

毎年毎年、誕生日には一大パーティーが待ちうけている。
ホントにイベント好きだなぁ、タクロウくんて。
たしか、俺がGLAYに入った頃からすでにそうだったよな…
毎年、誕生日が近づくと、あたりまえのようにタクロウくんがパーティーを企画し始めて、
あたりまえのように当日はパーティーがあって…

「ねぇ、あのさーちょっと聞いてみたかったんだけど」
「ん?なに?」
「いつからこういうパーティーやってたの?」
「こういうって…誕生日の?」
「うん。そう。」
「なー、てっこー!」
「なにぃ?」
「誕生日パーティーっていつからやってたっけ?」
「えーとねー、函館にいる頃からやってたよね、たしか。
でもここまで力いれるようになったのは、東京出て来てからだよね。」
「そういや、そうだっけ」
「そんなことより、はい。今日はジロウが主役なんだから、飲んで飲んで!」
テルが缶ビールを差し出す。
それを受け取ると、ジロウはもう既に盛り上がっている輪に加わっていった。


ジロウがもうベロベロに酔っ払って珍しくヒサシと会話が弾んでいる頃。
タクロウとテルは輪をすこし外れた所で2人で話していた。
「てっこ…飲まないの?」
「タクロウこそ。」
「俺はいーんだよ、こうやって皆が楽しんでるのを見れれば。」
「そんな事言っちゃって。いつも飲んでるじゃん」
「てっここそ。いつもベロンベロンじゃん」
「今日は飲まないの。あっ!」
そう小さく叫んでテルは立ちあがった。
スタスタと歩いて行って、輪の中心にいるジロウまで辿りつくと、珍しく酔いつぶれてしまったジロウを
抱えて立ちあがる。
「ごめん、主役が潰れちゃったから、1次会はお開きってことで。じゃあね〜!」
とそのまま帰ってしまった。
「…そういうことか。」
嵐のように去ってしまった2人を見て呆然としている皆の中で、1人状況を察したタクロウだった。
「さーて、そう言う事で。お開きだねー。」
そう言いながら、同じく輪の中心でベロンベロンに酔っているヒサシの元へ。
「ひさし?」
「たくろぉ?」
「そうだよ」
ガバッとタクロウに抱き着いて、猫のようにフンフンと匂いを嗅いでタクロウの顔をみる。
「ほんとだー。……かえるの?」
「そう。帰りますよ。」
「はぁい…」
酔うと可愛いなぁ、とニヤニヤするタクロウだった。



所変わってここはテルの家。
入り口で自分が靴を脱ぎ、器用にジロウの靴も脱がせる。
「よいしょ、っと」
すっかり寝てしまったジロウを抱えてベットルームへ
ベッドにジロウを寝かせて、苦しくないようにボタンを緩める。
くうくうと寝息を立てるジロウにテルは笑顔でそっとキスをする。
「たんじょうびおめでとう」



ジロウが目を覚ますと見なれた天井が見えた。
「あれ…?」
「あ、ジロウ目が覚めた?」
ベッドの脇にテルがいて、ジロウが一番好きな笑顔で笑っていた。
「テルくん…僕…」
「酔いつぶれちゃったから、連れて帰ってきたんだよ」
「……ごめん」
「何言ってんの。約束でしょ、あの時の」
「…え…あっ…」
「忘れてた?」
「…ごめん…」
ベッド脇に座るテルはくすくすと笑って、ジロウの髪を撫でる。
「ちゃんと言ってなかったね。おめでとう。」
「ありがとう」
「俺も寝よっかな。一緒に寝ようか」
「うん」
1人で寝るよりも2人で寝るほうが暖かいな、と抱きしめられながらジロウは思い、目を閉じた。


夢ではいつものようにテルくんがベロベロに酔っ払っていたけれど(笑)
そういうテルくんも好きだからいいや。


おわり

相変わらず、遅れました。ジロバです。
最後に出てくる約束というのは、もう一つ小説があるんですが、そのうち載せます。
ええと、ここに。隠しますが(笑)
なんだか中途半端に終わってしまった小説ですいません。