Sweet Xmas


「クリスマスプレゼントなに欲しい?」
「は?何て言った?」
「クリスマスプレゼント」
「…」
「聞いてんのかよ」
「…ヒサシ君からそんな質問が出ると思わなかった…」
「なんだよ、それ」
「今までそんな事、聞かれた事ないんだけど。いっつも自分の趣味で買ってくるじゃん」
「そんなことないだろ」
「そんなことあるって。で、なに?欲しいっていえば、何でもくれんの?」
「オマエ、変な事考えてるだろ」
「まさか。で、何でもくれるんでしょ?」
「変なものじゃなきゃな」

「変なものって?」
「たとえば……とか…」
「なに?聞こえないんだけどー」
ジロウは明らかにヒサシをからかう口調になっている。
「なんでもねーよ!」
「ふーん」
とジロウは意地悪そうに笑っている。
「なんだよ、早く言えよ!」
「はいはい。じゃあねークリスマスだしー、ケーキ作ってよ。イチゴのショートケーキね。
生クリームたっぷりのやつ。」
「丸いやつ?」
「丸いやつ」
「俺甘いのキライ」
「は〜〜!?何でもくれるって言ったよねぇ?嘘つくわけ?嘘つくとあとで…」
「わかったよ!作ればいーんだろ」
「初めから大人しくそー言えばいいのに。」
「ジロウさーん!お願いしまーす!」
きりのいいタイミングでちょうどスタッフがジロウを呼びに来る。
「はーい!今行くー。じゃ、ヒサシ君、楽しみにしてるからね」
ジロウはそう言って、控え室を出て行った。
入れ替わりに撮影を終えたテルが戻って来た。
テルは持ってきたPCを開いている。
「てっこ…」
「との?なに?」
「…ケーキの作りかた教えて」
「は?」
テルは意味がわからない、と言った表情で固まっている。
「だからケーキだって」
「おーーい、てっこー!」
そこにちょうど中の様子を知らないタクロウがテルを呼びに入って来た。
タクロウの姿を見つけたテルが突然立ちあがって、タクロウに抱きつく。
「うわっ!どうしたよ、てっこ」
「とのが…とのが…変な事言う…」
「なに?」
「ケーキの作り方教えて、とか言うから…」
「お前ムカツク。驚きすぎだろ、それ」
「だってえ〜とのがケーキとか言うから…。」
「ああ、ジロウに作ってあげるんだろ?」
テルに抱きつかれたままのタクロウがたいして驚きもせずに言う。
「タクロウ、知ってたの?」
テルがタクロウを見上げて聞く。
「うん。だって、さっきジロウがすげえ嬉しそうに俺に教えてくれたけど?」
「アイツ…お喋りめ…」
「なあんだ〜そうならそうと早く言ってよ〜。びっくりするじゃ〜ん。ねーたくろー?」
「やー、てっこのは驚きすぎだろ(笑)」
「そーかなー。でもさあ、ジロウはそんな事で嬉しいんだねー。俺はいっつも作ってあげてるもんねー。」
ねータクロー、と笑顔でタクロウを見上げるテル。
タクロウはデレデレした顔で「ねー」とテルを見下ろしている。
「俺の作るケーキ美味しいでしょ?」
うん、とタクロウが頷く。

「あっりまえじゃん!!だって、いつも気合いれてつくってるもん。愛がこもってるんだからねっ」
「わかってるって。てっこのケーキが一番うまいよ」
「えへへ」
「おいっ!いちゃいちゃすんなっ!」
「あ、とのの事忘れてた…ごめーん」
「教えてくれるんのかよ!」
「教えるよ〜。そんな怒んなくていいじゃん」
「なら、先にう言え。それと…このことジロウには黙っとけよ。」
「なんで?」
「言わなくてもばれると思うぞ」
「いーから!特にタクロウ!」
「俺っすか!?だいじょーぶ、言わねえって。」
そういいながらも、タクロウの顔はニヤニヤしている。
「ニヤニヤするな!」
「だってさーヒサシがケーキ作ってる姿想像するとさーなんか可愛いよねぇ」
「うるさいっ」
「まあまあ。それよりさー」
「ん?」
「俺らもう帰っていい?」
「まーとりあえずは平気かな?」
「じゃ、との帰ろ!今日からさっそく特訓だよ!」
「いや、別に今日からでなくても…」
「何言ってんの!善は急げ、っていうでしょ!」
テルはヒサシをむりやり引っ張って帰っていった。
「頑張れよ〜。てっこの奴、意外とスパルタだからな…。」
タクロウはヒサシ可哀相、と思いながら2人を見送った。

「あれ〜?ヒサシくんは?」
撮影を終えて戻って来たジロウが、ヒサシがいないのに気づき、1人書類を読むタクロウに聞く。
「んー帰ったよ」
顔を上げずにタクロウは返事をする。
「え?!なんで?」
「さあ?」
「じゃあ、てっこくんは?」
「暇だから帰る!って言って帰った。そのうち戻ってくるだろ。」
「ふーん…」
納得いかないと言った声でジロウが返事をする。
「タクロウくんは?帰らないの?」
「うーん…まだ仕事残ってるしね…」
「あーじゃあ、俺帰るね。お疲れさま」
「お疲れ〜」

「…良かった…。ばれなかったぞ、ヒサシ…」
ホッと安堵したタクロウだった。

テルの家に強制連行されたヒサシは、テルにフリフリのエプロンを付けさせられて、(もちろんこのエプロンはテルのです/笑)
台所に立たされる。
「さ、との、さっそく始めるよ!まずはスポンジ作りからだからね!」
「なんか張り切ってるな…」
「ったりまえじゃん!!俺、とのにケーキの作り方教えるなんて思ってもなかった。」
「俺もケーキ作るなんて思いもしなかったね。」
「でも、ジロウの為なんでしょ?」
「まあな」

とりあえず、ケーキ作りを始めた2人だったが…

「違う!あーもー何やってんのさー!」
「うるさいな〜分かってるよ」
「分かってるんだったら間違えないでよ!」
テルが1人で怒っている。ヒサシは間違えた事を誤魔化すように、クールな声を装っている。
なんとかスポンジ生地をオーブンに入れるまでにたどり着く。
「さて、これでよし、と。スポンジを焼いてる間に生クリームを…」
「疲れた…」
「何言ってんの!!ジロウに喜んでもらいたいんでしょ!!」

「…そうだけど…」
「じゃあ頑張んなよ!!」
「お前が気合いれるなよ」
「じゃあ、とのがもっと気合いれなよ!」
「…これでも入ってるんですけど。」
「あ、そうなんだ?まいっか。とりあえず生クリームをね。」
ボウルにまだ液状の生クリームをあけ、砂糖を入れる。
「はい」
それをヒサシに手渡す。
「あわ立てて」
「俺が?」
「もちろん」
仕方なくテルから受けとって、泡だて器で泡立て始める。
「俺腕痛いんだけど…」
「まだまだじゃん」
「拷問だ…」
仕方なくヒサシは必死になって生クリームを泡立てる。

「ほら!綺麗にふくらんだ〜。さ、次は」
チン、と電子音がして、扉を開けると茶色のスポンジが綺麗に膨らんでいた。
「生クリーム出来た?」
「こんなもんか?」
「んーうん、OK!じゃあ、飾り付けをやりますか」
スポンジを半分に切って2つに分ける。
「下にするスポンジにはイチゴを半分に切って、生クリームを塗った上に載せる。」
テルが説明しながら、手際良く、てきぱきと飾り付けをしている。ヒサシはそれを側でみている。
「上にするスポンジを載せて、全部に生クリームを塗ってー飾り付けて〜…」
だんだんと綺麗に飾られて行くケーキ。
上にイチゴを載せて…
「出来あがり!!完成!!簡単でしょ?今度は自分で作るんだよ。」
「はい…」
「大丈夫?」
「多分な…」
少し不安なヒサシだった。



そんなこんなで、クリスマスの日(強引な展開だ…/汗)
ジロウはヒサシに言われてヒサシの家にやって来た。
「ったく…ワガママだなぁ…」
ヒサシが突然電話してきて、『俺んちでパーティするから早く来い!』と言って来たのだ。
「パーティってなんだよ…2人じゃないの?」
ぶつぶつ言いながら、勝手知ったるヒサシの家、自分でオートロックを解除し、鍵を開けて入る。
「こんちは〜」
「…あれ?」
ヒサシの反応がない。
「勝手に上がるよー!」
ジロウは靴を脱いで部屋に上がる。
リビングへと向かうと、台所からヒサシが出てくる。
「向こうに座ってて」
ソファーを指差す。
「なんかあるの?」
「…まあな」
「ふーん」
ジロウはそのままソファ−に向かう。しかしこれからパーティをする、という雰囲気がどこにもない。
座ってしばらくすると、ヒサシが何かを手にしてやって来た。
「それ…ケーキ…?」
ヒサシが手にしていたのはイチゴが載った丸いクリスマスケーキだった。
「うん」
「もしかして…ヒサシくんが作ったの?」
「…まあな」
「ホントに!?」
ジロウはビックリしている。
「…作れ、っていったじゃん、オマエ」
「そうだけど…ホントに作ると思わなかったもん」
「なんだよ、それ…」
喜ぶと思ったのに…とホントに小さい声で言ったのをジロウは聞き逃さなかった。
「嬉しいよ!!何言ってんの!」
「あんまり喜んでないじゃん」
「ちょっとびっくりして…。ねえ…?」
「なんだよ」
「これ、俺のために作ってくれたんだよね?ヒサシくん甘いの嫌いなのに。」
「…まあ、な」
「食べていいの?」
「オマエが食べなくて誰が食べるんだよ…」
「それもそうだね。じゃ、いただきまーす」
ケーキを切らずにフォークで一口とって口に入れる。
「…おいしい!」
「マジ?」
「味見とかしてないの?」
「してない。甘いの嫌いだし。」
「一口食べてみなよ。ほら」
ジロウがフォークに取った生クリームをヒサシに食べさせる。
「うわっ、甘っ。オマエよくこんな甘いの食えるな」
「失礼だな、全く」
「なあ、ジロウ。俺にプレゼントは?」
「開き直ったね。」
「だって、俺あげたじゃん。これ」
と、ヒサシはケーキを指差す。
ジロウはじっとヒサシの作ったケーキを見ていたが、やがて何かを思いついたようで、
いたずらを思いついた子供のような顔をした。
「ねえ、ヒサシくん。生クリーム余ってる?」
「は?まあ、余ってるけど…」
「貰うよ」
ジロウは立ちあがって台所へ行き、生クリームの入ったボウルごと持って来る。
「…どーすんだよ、それ」
なにか嫌な予感がするヒサシだったが…
「んーケーキ作ってくれたお礼でもしようかなーとね。さ、行くよ」
「は?どこに?」
「何言ってんの?ベッドに決まってるじゃん」
嫌な予感が当たったヒサシだった。
「嫌だーーー!」
必死で抵抗するヒサシを軽がると小脇に抱えて、ヒサシを寝室に連れて行くジロウ。
(ジロウさんてば、男前。/笑)
ヒサシをベッドに放り投げて、もう片方に持っていた生クリームを指にとって、ヒサシに舐めさせる。
「やだよ。甘い、って…」
「たまには生クリームみたいに甘いヒサシくんもいいと思わない?」
いたずらっ子のように飄々というジロウに、
「変態…」
ヒサシが言い返す。
しかしジロウは開き直っている。
「何とでも言ってください」
そう言ってヒサシの洋服を脱がせるとヒサシの体につけ始める。
「おいっ。やだって。気持ちわる……やっ…」
抵抗していたヒサシが、小さく声をあげる。
ヒサシの体に塗られた生クリームを舐め始めたのだ。
「変態」
「変態でけっこうです。ねえ、ヒサシの作ったケーキよりも甘いよ?」
「……気持ち悪い…」
「ウソツキ。逆でしょ?」
ニヤニヤしながら、ヒサシの姿をジロウは見ている。
何度も体を重ねているというのに、なぜかとても恥ずかしい。
思わず顔を背けるヒサシに、ジロウは耳元で囁く。
「ヒサシ君…恥ずかしいんだ?」
わざと君付けで呼び、ヒサシの恥ずかしさをジロウは煽っている。
「やめて欲しい?」
ジロウの言葉にヒサシは頷く。
「そっかーやめて欲しいのかー。でもねーもう止められないなー。ごめんねー。」
悪びれもせずにいうジロウ。
ジロウは、ヒサシが強引にされると弱い、ということを知っているのだ。それをうまく使っている。
ヒサシも自分でそれを自覚している。でもそんな自分が嫌いではないのだ。
だって、ジロウの事が好きだから。

結局ヒサシは生クリームで全身ベタベタになるのです。
たっぷり甘いヒサシを堪能したジロウでした。




中途半端なところで終わって申し訳ないっす(泣)
そろそろバレンタインなんで、今度はチョコで…(妄想中)