ねぇ、タクロウくん」
「何?」
「ヒサシくんの事なんだけど…」
「ああ、さっき走って出てったけど…なんか有ったの?」
「なんかあったの…って…タクロウくんの所為だよ。」
「俺?!なんで?」
「…自分の心に聞いてみれば?」
「ちょっと、ジロ!」
「…タクロウくんにとっては終わりかも知れないけど、あの人にとってはまだ過去じゃない、ってことだよ。」
JIROはそう言って、控え室を出ていってしまった。
「過去…じゃない?…もしかして、ヒサシは…まさか…そんなこと…」


一方ヒサシは、控え室を飛び出して来たまま、戻れずにいた。
仕方なく自販機の側のベンチに腰掛ける。ポケットを探って、チッと舌打ちする。
タバコを忘れて来たのだ。
「財布も部屋に置いてきちまったし…」
深く腰掛けて上を向いて目をつぶる。
「なにしてんの?」
突然話しかけられて目を開けると、そこにいたのはタバコを咥えたTERU。
HISASHIは手を伸ばしてTERUの咥えるタバコを奪う。
「あ〜との、自分のは?」
「忘れた。」
TERUが隣に腰掛ける。
「とのはここでなにしてたの?」
「なに…ってオマエこそさっきタッキーに連れて行かれただろ」
「あーそれはもう終わったの。あとはタクロウの仕事。」
「あ、そう」
「うん。…との、どうしたの?元気無いねぇ、なんかあった?」
「は?別に…」
「そーだよね〜新婚だもんね〜」
「別にずっと一緒に暮らしてたんだから、新婚もなにもねぇよ」
「まあ、それはそうだけど…。実は俺ね、とのはずっとタクロウの事好きなんだと思ってた。」
「…男同士だぞ。」
「それ言ったら、俺とジロだってそうでしょ?でも違ったみたいだね。俺の思いこみだっただったんだね」
「テル〜!」
JIROがこっちに向かって走ってきた。
「ジロ!どーしたの、走ってきて」
「だって…寂しかったんだもん」
「ジロウ…。戻ろっか?」
「うん。」
「との、俺ら先戻ってるからね。」
「ヒサシくんも早く戻ってきなよ?タクロウくんも待ってるしさ」
GLAYで一番冷静な男は、さっきと正反対の態度でTERUと行ってしまった。
「あいつ…わざとタクロウの名前出しやがった……待ってるワケないだろ」
HISASHIはタバコを灰皿に押し付けて消し、再び目を閉じた。

「ねぇ、てる?ヒサシくんと何話してたの?」
「ん、ああ。とのはタクロウの事好きなんだと思ってたんだ、俺。でも、違ったみたい。」
「…ふーん」
「だってさぁ、とのって、タクロウの側にいるとすごい嬉しそうな顔したし…今は違うけど」
「そうだね…。」
(テルって、ボケてるけど以外と見てるよなー。でも気がついてはいないんだ…)


TAKUROは山の様に積まれた資料に囲まれながらもボーッとしていた。
「ヒサシはまだ…でも…あれはヒサシが…」
TAKUROはHISASHIと別れた夜の事を思い出していた。

「あーもーてっこもジロもこんなとこで寝るなよ…ったく」
「はいよ」
HISASHIがTAKUROのベッドから毛布を持ってきて、TAKUROに渡す。
「ああ、サンキュ」
毛布を2人に掛けてやると、また酒に手を伸ばす。
「なぁ」
「ん?どした?」
「俺達…いつまでこんな事続けなきゃいけないんだろう。てっこやジロウにも内緒で…」
「言いたくない、って言ったのはヒサシだろ?」
「そうだけど…でも!」
「でも?」
「…オマエ、俺の気持ちなんて分かってない…」
「どーしたんだよ。酔ってんのか?」
「酔ってねーよ!」
「じゃあどうしたんだよ?」
「別れよう」
「…は?」
「別れよう、って言ったの。」
「本気か?」
「本気。」
「そうだな…。ヒサシがそういうなら、しょうがないよな。別れよう。」
「…俺、帰る」
「ああ、じゃあな」
「明日、遅れんなよ」


HISASHIが帰った後の部屋で、TAKUROは…
「オマエの事、愛してたのに。…どうして誰も俺の事愛してくれないんだ…」
TAKUROの呟きはHISASHIには届かなかった。

思い出してはブルーな気持ちになるTAKURO
「はぁ〜。過去じゃない、って言われてもなぁ〜。俺にどうしろ、って言うんだよ…。俺は振られたんだぜ。」
そう言って、顔を机に突っ伏した。



「タクロウ…どうして…」
ちょっと試したいだけだった。
「別れたい」って言ったらどうなるだろう、ってちょっとした好奇心だった。
「なんで…こんなんなっちゃったんだろう…」
HISASHIはしゃがみこんで泣いた。彼の涙もTAKUROには届かなかった。

「わあっ!……夢か…」
TAKUROが過去を思い出してた頃、HISASHIはベンチでその夢を見ていた。別れた日の事。
何度後悔したか知れない。でも、自分が別れを切り出した、という事実はなにも変わらない。
「悪いのは…俺だもんな。いまさら…あれは嘘でした、なんて言えると思ってんかよ。
それに…俺、結婚したんだよ。結婚しちゃったよ、タクロウ…。もう、遅いんだよ。」

TAKUROと別れた後、HISASHIはTAKUROを忘れる為に言い寄ってくる女たちを拒まなくなった。
必死で忘れようとしているのに…HISASHIが無意識に追い求めるのは長い髪。
無意識に求めてしまう優しさ。自分を包みこんでくれる優しさを求めてしまう。
そんな時出会ったのが、今の奥さんだった。
自分より年下なのに、彼女は優しく俺を包んでくれた。母親の役割も果たしてくれた。
HISASHIは…その優しさに答えてあげたかった。どんな時も優しくしてくれた彼女に。


HISASHIとわかれた後、TAKUROも変わった。
伸ばしていた髪を切り、彼の書く曲には切なさが増していた。
なにも無かったかの様に接するTAKUROとHISASHIを疑うものは誰もいなかった。
ただ1人…JIROを除いては。


「別れよう」
この言葉は、ほんの遊びのつもりだった。
その言葉をTAKUROは本気にしてしまった。何の疑問もなく、「そうだね」といった彼。
でも、俺は…その言葉をいってしまった。
TAKUROの愛を信じれなかった俺が悪いんだ…。
「は〜。…そろそろ、戻るか。」
どんなに後悔しても、あの言葉は取り消す事ができないのだ…。
HISASHIは立ちあがって、控え室へと戻ることにした。


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お待たせしました。やっと続きが…
しばらく書いてなかったので、話の展開が、ちょっとおかしいかも。
なんか…長くなりそうだな。