危険な2人
TERUとHISASHIは、地方のラジオ出演を終えてホテルにいた。
TAKUROとJIROはラジオ出演の後、別の仕事のため、新幹線で東京へと戻って行った。
こっちに残ったのはTERUとHISASHIとマネージャーが1人。
しかもなぜか部屋はツインで二人一緒である。
「なあ、なんで部屋一緒?」
いつもはシングルを人数分取るはずなのに、HISASHIはパソコンの画面に目を落としながら、
ベッドでゴロゴロしているTERUに聞いた。
「あーっとねえ、何だっけ?ん?……あ、そうそう経費削減、だって。」
「タッキーめ、ケチったな。」
「あははは、俺、シャワー浴びてこよっかなあ。」
TERUはそう言ってベッドから起き上がった。ま、一緒でも良いけどね。
「ねえ、とのぉー」
「んー?」
「一緒に、入んない?」
突然ナニを言いやがる?!この天然め。俺はおもいっきり冷たい声で言ってやった。
「一人で入んな。」そしたらTERUのやつ
「だってさーJIROいなくて寂しいんだもん。」
だもん、じゃねえだろオイ!JIROが居ないからって俺と入ろうとするか?
こいつやっぱり天然…。TERUはなおも続けた。
「あぁ、JIROとあと2日も会えないなんて、さみしいよお。大阪行ってラジオ生なんて…。一緒に行きたかったな…。」
それはむりでしょ、どう考えても。
「JIROは寂しくて泣いてないかなあ…」
泣いてねーよ、酒でも飲んでんじゃないの。
「…ってとの聞いてた?」
「聞いてナイ」
「いいよね〜とのは。TAKUROはさぁ、明日には戻って来るんだもんね。
いいなあ〜〜」
TERUは勝手にそう言うと、ベッドから、俺の向かいにある椅子に移動した。
「それが?」俺がそう答えると、TERUはニヤニヤしてこう言った。
「なにいってんの〜。2人のときはラブラブなんでしょ?風呂だって
一緒に入ってるくせに」
TERUの言葉におもわず動揺して、吸おうとして手に持っていたタバコを
落としてしまった。
「あ、とのが動揺してる。めずらし〜。」
な、なんでそんな事おまえが…そんな心の叫びが聞こえたかのように、
「TAKUROが、とのが居ないときにいっつも言ってるよ。『HISASHIはさあ、俺と2人っきりだと、すげえ可愛いんだぜ』って。
あとはねえ、甘い声でお願いされた話とかあ、Hしたときにぃ…」
「わーわーわー」俺はそうわめいて、急いでこのバカの口をふさいだ。
あ、あの野郎、余計な事言いやがって。俺は怒りをここには居ないあいつにも向けた。
そしたらだんだん手にも力が入ってきたらしく、
「ううー、うーうー、うー(とのー苦しーよー、手ー)」
「あ、ごめん。」そういって、TERUの口をふさいでいた手を離す。
「あー死ぬかと思った。との結構力強いねえ。」
「あの野郎、戻ってきたらマジでぶっ飛ばす!」
「まーまー、そんなに怒らなくてもさ。ホントの事なんだし、ね?」
悪びれもせず、あっさりとそう言うTERU。
「おまえさあ、ぜんぜん悪いと思ってないだろ?」
「何、俺悪いの?…あ、電話。」
突然、ベッドの脇の電話が鳴った。
「誰だろ?」
TERUは首をちょっと傾けて言った。
「タッキーじゃないの、どーせ」
それしかないでしょ、フツー。
「もしもし?」TERUが電話に出る。
「あ、なーんだ。はいはい、ちょっと待ってよ。」TERUがくすくすと笑いながらこっちを見た。
おい、誰だよ。もしかして…。
「との、TAKUROだよ。」
ああ、やっぱり……。
「俺はイナイ」俺は出てやらないからな。
「無理しちゃって。」TERUはくすくす笑ってTAKUROに言った。
「もしもし、TAKURO?なんかねえ、HISASHI電話でないって。なんか、
俺怒らせちゃったみたい…。」
余計な事を言うなよ、オイ。
それからしばらくTERUはTAKUROと楽しそうに話していた。
「ねえ、JIROは居るの?あ、もう行っちゃったの?電話くれないかなあ。
え、なに?ホントに?あーいいなあ。」
TERUとばっかり盛り上がんなよ!俺に代わりたい、とかいえよ!!
やっぱり出ればよかったかな…
「おい!TERU!」
「うん、じゃあねえ。」
電話は切られてしまっていた。
「あ……」
HISASHIは思わずつぶやいた。
「なに?あ、もしかして。やっぱり出ればよかった、とか思った?」
「……別に……」
「素直になんなよ。ねえ、さみしい?でんわしよっか?」
「うるさい!」
「あはは。じゃあ一緒に風呂はいろ。」
「うん、…ってなんで!」
「え、だってTAKUROとも入ってるんだしさ。いいじゃん」
「よくないだろ。おまえよく考えろよ、たまには」
「たまには、は余計だよ!」
「俺がJIROと入ってもいいわけ?」
「う〜ん。それは……だめかも。」
「ほら。一人で入りな」
「はい…」
TERUは納得したらしく、一人でバスルームに入っていった。
HISASHIは再びパソコンに目を落とす。
バタン、とドアのしまるおとがした。と、思ったらまたバタン、という音がした。
「ねえ、との〜!一緒に寝よーね!」
「は?」
バタン
「…今、なんか言った…?」
HISASHIには聞こえていなかった。
「ま、いっか。どーせたいしたことじゃないんだし。」
HISASHIには聞こえていなかった…
TERUの後シャワーを浴び、出てきたHISASHIは窓際でタバコを吸っているTERUを見つけた。
(黙ってれば良い男なのになぁ、こいつ)
そう思いながらTERUを見ていると、TERUがHISASHIの視線に気づいたのかこっちを向く。
「ん?どしたの?」
「・・・いや、別に」
「とのも飲むでしょ、これ」
見るとテーブルの上にはワインが。
「飲むけどさぁ・・・お前飲んでいいのかよ。」
「大丈夫だって。飲んだほうが調子いいんだよ〜」
「むちゃくちゃな理屈・・・ま、いっか困るの俺じゃねえし」
「ほら〜飲もうよ〜」
仕方なく向かいの椅子に座ると、ワインの中身はもう半分になっていた。
「お前飲み過ぎ・・・」
「いーの!だってさぁ、ジロウ居なくてさみしいもん!とのだってさぁタクロウ居なくて
さみしいでしょ?」
「別に…」
「嘘だもん!俺、とのがホントは寂しがり屋だって事知ってるもん。」
「は?」
(こいつ、酔ってるな・・・)
とHISASHIは思ったが、あながち嘘ではない。
ホントは寂しがり屋なのだ、HISASHIは。TAKUROはいつも邪魔にならない様そばに居てくれる。
さりげなくいつも近くに居てくれる。
だからTAKUROが居ないときはすごくさみしいのだ。だからいつもPCをしているのかもしれない。
「との〜」
「なんだよ、てっこは。」
「一緒に寝ようよ〜ね?」
「なんでだよ。俺はジロウじゃないぞ。それにお前はタクロウじゃないだろ。
だからヤダ」
「だめなの?」
「上目遣いで見んなよ、お前」
「ちぇっ、飲んじゃうもん」
「飲めよ、勝手に・・・」
HISASHIは小さくため息をついた。
それからTERUは飲みすぎて、酔っ払っていた。
「ありぇ〜。じろ〜?帰ってきたのぉ?」
「ジロウじゃないって。」
「寂しかったよ〜ジロ〜」
ガバッとHISASHIに抱きついてきた。完全に酔っ払っている。
「おい、はなせって」
酔っ払っているとはいえ、すごい力で抱きしめている。
「ジロ〜ベットまで連れてってぇ」
「はぁ?」
「だめらの〜?」
ろれつの回らない口で寂しげに言うTERU
「あ〜も〜わかったって!しっかり掴まってろよ!」
HISASHIは仕方なくTERUを抱えたまま(抱えられたまま?)ズルズルとベットへと引き摺っていく。
「お前、太っただろ?」
「んにゃぁ?太ってにゃいもんね〜。ジロー、ヒド〜イ」
「はいはい。」
ベットまで来たのでHISASHIはTERUの腕を離そうとするが、
「だぁめ!」
と言って、TERUがHISASHIを抱えたままベッドに倒れこむ。
「うわぁっ!何すんだよ、お前!」
「一緒に・・・寝るんだもんねぇ・・・ジロ・・・」
スースース−
「寝ちまいやがった・・・。しかも剥がれねぇ・・・どーすんだよ、これ。」
TERUは酔っ払っていて、完全にJIROだと思っていたようだ。
「仕方ねえなぁ。はあっ・・・(ため息)」
結局HISASHIはそのまま寝る事にした。
だってそれしか方法がない、というのが本音。
(またこのまま起こしたらうるさそうだもんな、こいつ)
そういうHISASHIもこうやって抱きしめられて寝るのは嫌いじゃない。
ただ、TERUだとTAKUROと比べて小さいのがねぇ(笑)
TERUに抱きつかれて眠りながら、HISASHIはTAKUROの事を想っていた。
(タクロウ早く戻ってこないかなぁ。)
結局HISASHIもそのまま眠ってしまった。
「おはよ〜!ほら起きて起きて・・・って、何してんだよ、お前ら!」
朝から大声が・・・
「誰ぇ?」
「ん〜タクロウ・・・?」
「何してんだよ、お前ら!」
「朝からうるせえよ、バーカ」
HISASHIは朝から無理やり起こされて機嫌が悪いらしい
「あぁ、おはよ〜タクロウ」
TERUはのんきに挨拶なんかしている。
TAKUROは1人怒っていた。どうやらTERUとHISASHIが2人で
寝ていたのが気に入らないらしい。
「あれぇ?俺なんでとのと寝てんの?」
「知らねぇ…寝ぼけたんじゃん?」
HISASHIも別に気にもとめずにあっさり答える。
「ヒサシ〜」
「なんだよ」
「何もされてない?」
「ちょっと!その言いかた、俺が手が早いみたいじゃん」
「早いじゃん」
2人が声をそろえて言う。
「声そろえて言わないでよ…。俺にはジロウがいるから、そんな事しません!」
「どーだかな」
「タクロウ、なにその疑いの眼差しは。」
「別に」
「おい!」
「あ、どしたの?ヒサシ」
「くだらない事言ってんなよ。今日、仕事だろ。早くしろよ。」
「ああ、ヒサシ〜」
HISASHIは自分だけさっさと着替えを済ませ部屋を出ていった。
TAKUROはそれを慌てて追いかけて行く。
部屋に1人取り残されたTERUは仕方なく支度を始める。
「とのってば、ホントは嬉しいくせに素直じゃないんだから。
…あーあ、ジロウ早く戻ってこないかな。」
ホントはTERUとJIROに負けず劣らずラブラブなくせに、
それに気づいていないのはTAKUROとHISASHIの2人だけだろう、きっと。
「まったく…なんか、あてられただけだったな。」
呟きは、部屋の中に消えていった。
ドアを閉める直前、小さく呟いた。
「今日は俺…1人部屋かな…」
えーこれはかなり初期に書いた作品ですね。
タクヒサ、テルジロが前提のお話でした。テルとヒサシが2人でいると、どんな会話をしてるのかな?
と思ったので書いたような…
このオチに決まるまで、かなり時間がかかったのを覚えてます。