LOVE AFFAIR

 

「邪魔したな」

「ちょ、ちょっとヒサシ?!」
「ヒサシくん、待ってよ!……あーあ、あれ絶対誤解してるよ。」
「……だな。」

HISASHIは状況が理解できぬまま、ただ歩いていた。
(キス……してた?)
「あ、ヒサシさん!」
スタッフに呼び止められても、気づかない程動揺している
とは、本人も気づいていない。スタッフの前を素通りしていく。
「ヒサシさん…?」
無視された事でスタッフは、
(今日は機嫌が悪いな…)、と思った。
こうして、今日のHISASHIは機嫌が悪いとスタッフ伝わってゆく。

「ジロウ、ごめん!俺ちょっと行って来るから!!」
「ちゃんと誤解といてきてね」
「わかった」
そう言ってTAKUROは部屋を出ていった。
「タクローくんてば、俺に謝ることないのに…。ま、タクローくん
らしいけどね。」
JIROはもう自分の悩みは解決したので、すっきりした顔で、
BASSを弾き始める。

「あれえ、とのぉ。どうしたの?  ちょっと、との!」
ボーっと歩くHISASHIの前に現れたのはTERU。
どうやらもう撮影は終わったらしい。何の反応もなく通りすぎようとする
HISASHIの腕をつかんで立ち止まらせる。
「先に戻ったんじゃなかったっけ?」
「……キスしてた……」
HISASHIはうつろな目でそう言うと、さりげなくTERUの手を離して
再び歩き始める。
「誰が?!ねえ、との!!」
そう聞いても答えずにHISASHIは行ってしまった。
(との、なんか変……。)
TERUが首を傾げ悩んでいると、そこへ息を切らせたTAKURO登場。
「お、おい!ヒサシ見なかったか?」
「あ、タクロー!とのならあっちに歩いていったけど……」
「サンキュ!」
再び走り出そうとするTAKUROの腕を今度はしっかりつかんで、
TERUは聞いた。
「ねえ、とのどうしたの?なんかおかしかったよ。ねえ、キスしてたとか
いってたけど…」
「あーもう!ジロウに聞け!」
TAKUROはTERUの腕を振り払って行ってしまった。
「なんだよ、も〜」
TERUはぶつぶつ言いながら控え室に戻っていった。

(やっぱり俺よりジロウの方がいいのかな…?そうだよな、
こんな可愛げのない俺よりもアイツの方が…)
HISASHIは屋上に来ていた。フェンスにもたれて考えていた。
と、その時、屋上への扉が急に開いた。

「ヒサシ!!」
「タクロウ…なんで…」
「何でじゃないよ!おまえ誤解してるだろ!」
「だって、ジロウと…」
「だから、キスなんてしてないって!俺がジロウとキスするわけないだろ!」
「でも…」
「でもじゃねえよ!とにかくいいから来い!」
TAKUROはHISASHIの腕をつかんで、歩き出す。
「タクロー…」
「おまえはなんでこういう時だけ悲観主義なんだよ。いつもは
全然違うのに。」
「えっ、だって…」
「…俺が好きなのはおまえだけだよ。」
TAKUROは階段の踊り場で急に立ち止まってHISASHIを
抱きしめた。
「ヒサシも俺の事好きでしょ?」
TAKUROが耳元でささやく。
「ねえ、何も言ってくれないの?」
TAKUROがちょっと悲しそうな声で言う。
「……好き…だよ。」
HISASHIが小さい声でボソッと呟いた。
「ホントに?俺久しぶりに聞いたな、その言葉。
よかった。俺ちゃんと愛されてるんだね、ヒサシに。
ジロウにも感謝しないとな。」
TAKUROが嬉しそうな声で無邪気に言った。
「あっ!そうだ!おまえジロウと何してたんだよ!」
HISASHIはそれを思い出し、きつい口調でTAKUROを問い詰めた。
「あ、いつものヒサシに戻っちゃった…」
TAKUROはそう言って、苦笑いしながら再びHISASHIの手を引いた。
「ジロウに説明してもらった方が話が早いからさ。行こ?」
「ホントにキスしてないんだろうな!」
HISASHIはなおもTAKUROを問い詰めていた。

「ああ、あれ?目が痛かったから診てもらっただけなんだけど」
「は?」
「なんかさあ、ごみが入ってるみたいだったんだけど、自分じゃ
わかんなくて。そしたらタクローくんがどうしたの?って診てくれてさあ。」
「ホントに?それだけなの?」
ジロウの隣に座っていたTERUが聞き返す。
「それだけって…。俺とタクローくんがキスするわけないじゃん、ねえ?」
TAKUROがうんうんとうなづいている。
「でもさあ、ヒサシくんもそんな少女マンガみたいな誤解するなんて
なんかカワイイねえ。」
「…うるさいなあ」
「ねえねえ、タクロウは俺よりジロウの方が好きなんだ、とか思ったわけ?」
「うっ…」
HISASHIが思わず言葉に詰った。JIROはそれを見てニヤニヤしながら言った。
「思ったんだ〜かわい〜」
「うるさいっ!!おまえら早く帰れ!!」
「はいはい。じゃあ帰ろっか?」
「そうだね。2人とも仲良くしなよ。とのもたまには素直になんなよ。」
TERUがそう言うと、TAKUROが言い返す。
「俺と2人の時は素直なんだよ。おまえらも明日遅刻すんなよ!」
「はいはい、わかってますよ。じゃあね」
そう言って、2人は帰ってしまった。

「ねえヒサシ、今日俺んち来るよね?」
「ああ」
「今日は泊まってくよね?」
「えっ」
「今日は帰さないからな」
「…バカじゃねえの」

結局、HISASHIはTAKUROのうちの泊まる事に…
有言実行のTAKUROさんなのでした。