少しだけ遅い夏の夜


「ひさしー?まだ風呂はいってんのかー?」
「もうちょっとで出るよぉ。待っててよー。」
「はいはい(笑)」

久しぶりに、家でビデオでも見よう、ということになったある夜。
が、ひさしが風呂から出てこない!
いつまで入ってんだよー!
ちぇっ、もう準備万端なのにさっ。ひさしが飲みたいって言ってたワインに、
ひさしが観たいっていってたビデオでしょ。
それなのに…出てこない…。遅い!

「ひさしぃぃ!」
「もうちょっとー!」
酷いです…ひさしさん…(泣)
「おまたせぇ」
「おそい!…ってひさし、ちゃんと拭けてないじゃ〜ん」
「え?そお?」
「こっちおいで。」
あーもー、髪から雫がポタポタ落ちてるしー。あーあー
ひさしからタオルを取り、立ったままひさしの頭を拭いてやると、大人しくされるがままになっている。
「はい。ちゃんとドライヤーで乾かしておいで。ビデオはそれから」
「…はーい。」
洗面所に戻るひさしを見て、俺はソファーに戻った。
ソファーに落ちつくとすぐに、洗面所からひさしが出て来た。
パタパタとこっちに走って来て、ソファーに座る俺の足元に座る。
「ん?どした?」
「はい!」
と、手渡してきたのはドライヤー。
「んー?」
「乾かして?」
「…ふー、しょうがないなぁ。はい。じゃあ、これコンセント入れて。」
「はーい。お願いしますっ!」
「はいはい(笑)」

ネコっ毛のひさしの髪をてぐしで梳かしながら乾かしてやる。
「きもちいいですか、お客様」
「うん」
「なんで自分でやらないの?」
「だって、腕いたくなるから嫌。それにね、たくろうに髪の毛乾かしてもらうの好きv」
「そういえば、前はよくしてあげてたね」
「そだね。だってさー、いつも髪の毛乾かさないでいるとたくろう怒るでしょ?」
「髪の毛は乾かさないでそのままいると、痛むんだよ。ひさしは髪を立ててたりしてるから、
普通の人より余計痛んでるのに…。よし!完了!」
俺は乾いたひさしの髪にキスをした。うん、さらさらだー。
「ありがとv」
「いいえ。どういたしまして。じゃ、ビデオみよっか」
「俺、グラスもってくるー!!」


よく冷えたグラスにとっておきのワインがそそがれる。
乾杯という声と共に、カシャン、とグラスがぶつかる音がする。
久しぶりに、夜を2人で静かにすごしたと思う。
EXPOも終わり、オフもなんだかんだ言って、こうして静かに過ごす事はなかったと思う。
(2人で沖縄には行ったけど)
もうすこししたら、少しずつ寒くなって、冬にはまたツアーが始まる。
去年は2人で年越しだったけど、今年はファンの皆とで、それもまた楽しくていいね、なんて笑ってみたり。
こうして好きな事を、好きな人と一緒に出来るって、幸せものだよね!って俺が言うと、
少しだけ酔っ払った君が、「俺の方が幸せだよ」って言ってくれた。

「ひさし」
「なぁに?」
「大好きだよ」
「そんなの知ってるもん」


なんとも幸せな残暑の厳しい夏の夜のことだった。




いやぁ、なんだかワケがわからない話ですが…。この話は「たくろうに髪をかわかしてもらうひさし」を
書きたかっただけなんですけどね(笑)
なんか、そんな姿かわいいなぁ、と思って。
時期がEXPO後なのは、なんとなくです。