ずっと、ずっと

 

「ただいま〜」

「ヒサシ〜?あれぇ?おかしいなぁ、
ジロウに聞いたらもう帰った、って言ってたのに…」
リビングまで来てふと目をやるとヒサシがいた。
ああ、とちょっと笑ってしまった。

ヒサシと鮎が同じカッコでソファーで眠っていた。丸まっている。
「あゆ〜お前のご主人様はホントに可愛いなぁ」
そばにいる鮎に話しかけると、鮎は“なんだよ、うるさいな”と言う顔でテルを見る。
「そんな顔すんなよ。起こして悪かったよ」
すっかり機嫌を損ねた鮎に謝っているテル。
猫に謝っている姿と言うのもなんだか情けない。
鮎はテルを無視してどこかへ行ってしまった。

テルは鮎のねていた場所に座って、ヒサシの寝顔を眺めていた。
(可愛いv最近益々可愛くなってきちゃって。あ…起きそう)
ヒサシはもそもそと動くと、ぱちっと目をあけた。

「なにしてんだよ」
目を開けてテルをみつけたヒサシの第一声はこれだった。
「ん?ヒサシの寝顔を見てた」
「ただで見やがって」
「なに?お金取るの?恋人なのに?」
「じゃあ体で払え」
「体?こういう事?」
と、不意打ちでキス。
「てめえ、意味が違うだろ」
顔を赤くしてヒサシが反論する。
(ヒサシって、ホント可愛いv)
「ごちそうさま」
「食べ物じゃねえんだよ、俺は」
「ヒーサシ」
「なんだよ」
「待っててくれたんだよね」
「……まあな」
小さい声で返事をするヒサシ。
「よし!じゃあ、いこっか」
(こんな可愛いのに、ほっとける訳ないでしょ!)
「は?ちょ、ちょっと待て!」
お姫様抱っこで連れて行こうとするテル。
「なんで?」
「本能のままに動くな!」
「だってさぁ…」
「俺は、晩飯を、食べてない!」
「あ、そうなの?俺はヒサシで良いけど」
「俺はヤダ」
「冷たいなぁ、ヒサシ。ま、そこが良いんだけど。」
「腹減った。何か作って」
「(クスクス)はいはい、ちょっと待っててくださいね〜オヒメサマ」
「最後のはよけいなんだよ。お前そうゆう事言うと…」
「言うと…?」
「やんないからな。一緒にも寝ないからな」
「え、いやーん。」
「俺をからかった罰」
「そんな事したらヒサシが寂しいくせに」
「はぁ?」
「素直じゃないんだからなーヒサシは。さてさて、ご飯作りますよ〜」

でもね、俺知ってるんだ。
ソファーで寝てたヒサシの顔に涙のあとが有った事。
寂しくて、寂しくて。
ちょっとなきながら寝てたって事。
知ってるんだ。
ヒサシは素直じゃないのがかわいいんだよ。
それに、ヒサシの泣き顔を見れるなんて、俺だけだし。
これって幸せな事だよね。

ホントは自分でご飯だって作れるのに、俺が帰ってくるまで待ってて
俺に作れっていうのは、
一人じゃさみしいから。あと、俺の料理が食べたいからなんだよ。
料理をしてる俺の事見てるのが好きみたい。
ほら、いまだってじっと見てる。
ダメだよ、振りかえったりしたら。
俺はヒサシが見てるって事にきづいたらいけないの。
ヒサシは俺が鈍いから気づかないと思ってるみたいだけど。

俺がヒサシの視線に気づかないわけないじゃん。ヒサシの事愛してるもん。

ヒサシは恥ずかしがり屋さんだから、あんまり愛情表現してくれないけど、
だからって俺の事愛してないわけじゃないんだよ。
ヒサシはホントに猫みたいで。つかず離れず、っていうのが好きなんだよ。
だからたまに素直になって、ちっちゃい声で「好きだよ」って言ってくれる。
たまにくれる“好き”の言葉は、とてもかわいくて。
普段はほっといてあげても、1人で何かしてるからね。あんまりかまいすぎると
怒っちゃうからね。さっきの鮎みたいに。
でも、いつも俺のそばにいる。
遠くにいてもちゃんと帰ってくる。
それがヒサシが俺にくれる愛、なんだよ。

ほら、もう鮎と遊んでる。
ヒサシは鮎の事溺愛してるもんね。
鮎もヒサシのことだいすきだもんね。
だから、ヒサシを独占する俺にちょっと対抗心燃やしてるみたい。
俺とヒサシが仲良くしてると、何処からか現れて
ヒサシのひざの上に乗っちゃったりして。
可愛いよね。

「ヒサシ、ご飯できたよ」
「ん、今行く」
2人でご飯を食べる。
「おいしい?」
「うん。」
ヒサシはいつも美味しそうに俺の作った料理を食べてくれる。
「あ、そうだ」
「なに?」
「お前、ソファーで寝ろよ」
「なんで!?」
「さっき言ったじゃん」
「本気で?せっかく…」
あんなこと、こんなこと、しようとおもってたのに。
「だからって寝こみ襲うなよ」
ぐ、痛いところをつくなぁ。襲おうと思ってたのに。
「ごちそうさま。じゃ、俺シャワー浴びてくるから。」
ヒサシはさっさと行ってしまった。

さて、ホントに1人で寝るのかな、ヒサシは。
寂しがりやなくせに、強がっちゃって。可愛いんだから、ヒサシは。

料理の後片付けをして、入れ替わりにテルもシャワーを浴びる。
ソファーで寝ようとして、布団や枕を持ってくると、ヒサシがそこにいた。
パジャマ姿のヒサシがテルの服の裾をつかむ。
「なに?ソファーで寝ろ。って言ったのはヒサシだよ?」
「…今日は…許す」
ほらね、寂しがり屋でしょ?
「じゃ、一緒に寝よっか」
ベッドでいつものようにヒサシを抱きしめて寝る。
ヒサシはね、1人で寝るのが怖いんだって。
可愛いでしょ?
じゃあ。おやすみなさい。今日は何もしないよ。
だって、ひさしはもう寝ちゃったしね。
今日の可愛さに免じて。

ヒサシの寝顔って天使みたい。
起きると、意地悪だけどね。
うん。黒の天使。
あ、俺って天才。
うん、黒の天使、いいなぁ
て、ことは…白の悪魔…?
おお、ジロウだ!
ジロウってば、可愛い顔して、ひどい事考えてるからなぁ。
タクロウ大丈夫かなぁ…アーメン。
ま、いっか。俺には関係ないもんね。
寝ちゃお。

ずっとずっと隣にいるよ。
君が寂しくないように。

 

end

 

1600をゲットした狂蟻さんのリクで、テルヒサです。
私は結構甘いと思っているのですが、どうでしょう?
テルは鈍そうだけど、恋人の事はちゃんと分かる、そうゆう人かな?
と、思ったのでテル視点のお話にして見ました。
結局、テルはヒサシにベタ惚れと言う事で(笑)
狂蟻ちゃん、これで良かった、ですか?