幸せの続き

「おはよ」
「ん〜……はよ」
朝、目が覚めるとTAKUROと目が合った。どうやら寝顔を見ていたらしい。
「おはよ、ヒサシ。もう10時だけどね」
「まじ?……何だよ…あんま見んなよ。」
「なんで?」
「…恥ずかしいだろ…」
「可愛いねぇ」
TAKUROがニコニコと笑顔で嬉しそうに言う。
HISASHIは恥ずかしくてうつぶせになって、枕に顔を押し付ける。
恥ずかしいから見るな、という事らしい。きっと顔は真っ赤になっている事だろう。
「ヒサシ、顔見せてよ、ねえ。」
「…やだ」
「いいじゃん、ねえ」
「…やだ。」
そんな恋人の姿を嬉しそうに眺めていたTAKUROが小さく呟いた。
「…幸せだな、俺」
「…なんで…?」と、小さい声で聞き返すHISASHI
「ん?こうやってさ、朝起きたらヒサシが隣で寝てて。いつも一緒にいられて。
…でも俺さぁ、毎朝不安になるんだ。これは夢なんじゃないか、って。」
「タクロウ…」
HISASHが枕から顔を少しだけあげてTAKUROを見上げる。
「…なんてね。俺って心配性なのかな。」
と、TAKUROは自嘲気味に言って、立ちあがった。
「さて、朝ご飯作ってくるから。と言っても昼と一緒だけどね。
ちょっと待ってな。ヒサシも早く起きてきなよ。コーヒー入れとくから。」
「うん…」
TAKUROは優しくそう言ってベッドルームを出ていった。
HISASHIはのろのろと起き上がり、服を着てリビングへと向かう。
リビングのソファーに座ってボーっとしていたらまた眠気が襲ってきた。
とりあえずタバコに火をつけて一服。
TAKUROはキッチンで朝食の準備をしていた。
寝そうになったら、ちょうどそこにTAKUROがコーヒーを持ってきた。
「はい、どーぞ」
「ん…サンキュ」
HISASHIはタバコを置き、マグカップを受け取ったが、まだボーっとしていた。
「まだ眠い?」
TAKUROが隣に座り、聞いてきた。TAKUROの手にはおなじ柄のマグカップ。
(つまりおそろいって事で。)
「…いや」
「そう?ねえ、今日はせっかくオフだからさ、どっか出かける?」
「…や」
「ん?」
「やだ。…一緒にいられればイイ」
「ヒサシ…いいの?」
TAKUROはHISASHIがまさかそんな可愛い事を言ってくれると思ってなかったので、
ちょっとびっくりしている。でもすぐに嬉しそうな顔になった。
「うん」と、返事をすると恥ずかしくなったらしく、下を向いてしまった。
TAKUROは下を向いてしまった可愛い恋人の頭を撫でた。
「さ、朝ご飯たべよ?」
HISASHIの手をとって立たせる。ヒサシの手を引っ張ってダイニングへと連れて行く。
今日のメニューは…いわゆるアメリカンブレックファースト。
ホントにまめな人です、TAKUROは。
朝食を食べながら、今日の予定を話し始める2人。
「なにしよっか、今日」
「ん〜映画でも見るか」
「あ、じゃあさ俺見たいのあるんだけど。この間ビデオに録画したんだけど、
まだ見てないんだよね」
「どんなの?」
「古いモノクロのフランス映画。」
「ふーん。じゃそれ見るか」
と、いうわけで映画を見る事に。

カーテンを閉め、部屋を暗くして準備万端。
並んでソファーに座って映画を見る2人。

古い映画って、今の恋愛映画のように派手ではないけれど、
素朴な雰囲気がすごく好きなTAKUROなのです。
逆にHISASHIはどっちかと言うと、派手なアクション系の映画の方が
好きなんだけど、TAKUROと一緒ならなんでもいいようで。

TAKUROは食い入るように映画に見入っているが、HISASHIが
TAKUROに寄りかかると、無意識の内にHISASHIの腰に手を回して
抱き寄せる。
HISASHIはそのままTAKUROにもたれたままで、映画を見ていた。
そういう小さな事が幸せなHISASHIだった。

映画を見終わると、外はもう茜色に染まっていた。
「あーもうこんな時間なんだ。夕飯の支度しなきゃね。ちょっと待っててね」
HISASHIはキッチンへ行くTAKUROをタバコを吸いながら見送った。
しばらく何か考えていたHISASHIだが、突然立ちあがった。
タバコを灰皿に押しつけて、キッチンへと向かう。
「なあ、タクロウ」
台所で料理をしていたTAKUROはHISASHIの声で振り向いた。
「ヒサシ、どうしたの?何か飲む?」
「いや…」
「ん?」
「俺、何か手伝う」
「え、いいよ。向こうで待ってて」
「手伝う」
TAKUROは仕方ないなぁ、という表情で言葉を継ぐ。
「うーん。じゃあねぇ…そこのニンジン切ってくれる?」
「OK」
(ええと、とりあえず切れば良いんだよな)
HISASHIがニンジンを切り始めると、TAKUROが心配そうな顔で見ていた。
「なんだよ」
「…ねえ、そのニンジン皮むいた?」
「え…むく…の?」
「あ〜うん。じゃあねぇ…そこの鍋に塩入れといてくれる?」
そう言ってTAKUROはキッチンを出て行く。
「塩…ってこれだよな、きっと。全部入れちゃって…いいよな」
HISASHIは鍋の脇においてあった小さいボウルの中身を全部入れた。
TAKUROが戻ってきた。どうやらトイレだったらしい。
「あれ、ここにあったやつは?」
「鍋に入れたけど…?」
「嘘…ホントに?…ヒサシが今入れたの塩じゃなくて、砂糖。」
TAKUROはとても困った顔で言った。
「う〜ん…やっぱりあっちで待っててくれる?俺がするから」
HISASHIはすごすごとキッチンを出る。
ソファーに座って自己嫌悪に陥りながらタバコに火をつける。
(はぁ…ダメだな、俺…)
HISASHIがしばらく落ち込んでいると、
「ヒサシ!」と、TAKUROが呼びに来た。
「あ…なに?」
「ご飯出来たよ。」

ご飯を食べた後もHISASHIは落ち込んでいた。
「どうしたの?さっきから元気ないねえ」
「…ごめん。俺…何もできない」
下を向いてしまったHISASHIの頭を撫でながら、TAKUROは優しい声で言った。
「俺がやるから。ヒサシはいつも隣にいてくれれば、俺はそれだけで十分だから」
「でも!俺だってTAKUROの為に何かしてあげたいと思ってるのに。
いっつもしてもらってばっかりだし…」
「…じゃあさぁ…」
と言ってTAKUROは少し考える。
「…なに?」
「愛してる、って言って」
笑顔でお願いするTAKURO
「えっ」
「言ってくれないの?」
一瞬戸惑ったHISASHIにTAKUROは悲しそうな顔をした。
「…愛してる」
言ってから恥ずかしくなったのか、TAKUROに抱きついた。
TAKUROの腕の中で更に言葉を継ぐ。
「愛してる…。それに…夢じゃないからな。」
TAKUROはHISASHIをぎゅっと抱きしめる。
「覚えてたんだ、今朝の」
嬉しそうにTAKUROは言う。
「ずっと…一緒にいるから」
「そんな事言うと、俺、ヒサシが嫌だって言っても離れないからね。」
「嫌だなんて、言うわけないだろ」
「うん。愛してるよ、ヒサシ。これからもずっと一緒だよ」
「うん…」

それから2人はといえば…
やっぱりベッドへと行くのでしょうか?(笑)

幸せな2人の一日は砂糖のように甘くって、失敗すらも愛しくて。
愛さえあれば…な2人でした。

おわり

キリリク小説でした。555をゲットしたAoi-kさんに捧げます。
「あまあま」になってるでしょうか?OKですか?
一応新婚の2人、という設定なのですが、
何かヒサシがやたら可愛くなっちゃいました。
ヒサシは料理とか苦手そうだなぁ、という私の中のイメージでこの小説は出来ました。
ご期待に添えたんでしょうか?
リクエストありがとうございました。 初キリリク小説になりました。