幸せ


「ヒーサシ」
「ん?」
もうあと数分でライブが始まるという時に、後ろからタクロウが呼んでいる。
ヒサシが振り向くと、、、
突然キスをしてきた。軽く触れるだけの軽いキス。
「なっ・・・」
「今日も可愛いねぇ、ヒサシは」
そう言って後ろからヒサシを抱きしめている。
あまりに呑気な台詞にヒサシは怒って、でも小声で言う。
「誰か見てたらどーすんだよ!っつーか見てるだろう!」
「大丈夫だよぉ。見てみ?」
ヒサシが周囲をきょろきょろ見まわすと、皆忙しいそうに走り回っていた。
最終調整をしているスタッフたちは誰もメンバーがなにをしているかなんて気にも止めていない。
「でも、てっことかが…」
「あっち」
タクロウが指差す方を見ると、テルが片隅のパイプ椅子に座って何かを真剣に読んでいた。
「なにしてんの?」
「彼が読んでいるのは歌詞カードだよ。スタッフに『忘れないでね?』って笑顔で渡されてたぞ。
で、ジロウはあっち。」
反対の方を向くと、そっちではジロウがトシとシゲと打ち合わせしている。
「えらいねぇ、ジロウは」
「…オマエいつまで抱きついてんだよ。」
「え、なんで?嫌だ?」
タクロウはそう言うと、いったん腕を放してヒサシの前に立つ。
少し屈んでヒサシの顔を覗きこんでいる。
「嫌だ、って言うか…もう始まるだろ?」
顔を背けてヒサシは呟く。
「それもそうか。…それにしても今日も可愛いね。」
「可愛いってなんだよ!オマエこそ…」
「俺?俺がなに?もしかして、カッコイイって思った?ねぇねぇ」
ニヤニヤしているタクロウに
「うるせぇ、思ってねーよ!」
と、蹴りをいれようとする。
「あれ?蹴んないの?」
大げさによけようとしたタクロウが拍子抜けした様に聞いてくる。
「もーすぐ本番だからな。」
「はい、じゃあ、始まりまーす。よろしくおねがいします!!」
スタッフの叫びとともにステージへと促される。

タクロウは階段を上がりながら思った。
(今日はヒサシと絡むぞー!)と。

タクロウの後ろで階段を上がりながら、ヒサシは思った。
(暗くて表情が分かりにくくて良かったよ。)
テンガロンを被ったタクロウの事をとてもカッコイイと思っているヒサシだった。
(でも、ツアーが終わるまで言ってやらないからな。)

同じとき、テルとジロウは何をおもっているかというと…
(あー今日も歌詞忘れたらどーしよー)
(今日も盛り上がるといーなー)
と、それぞれ思っていた。



「あ〜終わった〜お疲れ様ー!」
「今日は間違えなかったな、てっこ」
「あったりまえじゃーん!あ、そーだ」
「ん?」
「今日さぁ、始まる直前に2人、キスしてたでしょ?」
「…見てたのか?」
ヒサシが絶句して問うてくる。
「見えたもん。ねぇ、ジロウ?」
「うん」
ジロウは当たり前じゃん、といった声で頷く。
「ってことは…2人とも…」
ヒサシが恐る恐る振り向くと、
「いやぁ、若いっていいねぇ」
と、トシがニコニコしながら言った。
「なんかエロオヤジっぽいよ、その台詞。」
というシゲの突っ込みにも「そうかなぁ」なんて言って笑っていた。
「永井さん……。タクロウ、てめぇ!」
「あれ〜?おかしいなぁ…皆見てないと思ったんだけどな〜」
と、横を向いてとぼけている。
(こいつ…皆が見てたの知ってたな)
「イテッ!!」
ヒサシがは横を向いていたタクロウの足を思いっきり蹴った。
タクロウはあまりの痛さにうずくまっている。
「痛い〜ヒサシさん痛いです…」
「ふん」
ヒサシはそんなタクロウを置いてスタスタと行ってしまった。
「あーあ。でもまぁ、自業自得だね、タクロウ」
「タクロウくん大丈夫?」
「いーんだよ、ジロウ。タクロウなんて心配しなくて。」
しゃがみこんで、タクロウの心配をするジロウにテルが言う。
「てっこって冷たい…。優しいなぁ、ジロウは。」
痛みを堪えながら、タクロウはテルに文句をいうが、テルは意にも解さず話を続ける。
「それにしても、とのも素直じゃないよね〜ホントは嬉しかったくせに」
「テル…そんな事言っちゃ…とのくんが…」
ジロウが促す方を見ると、先に行ったはずのヒサシがそこでテルを睨んでいた。
「冗談だよ、じょーだん。ね?」
テルが必死な声でそう言うと、ヒサシは無視して行ってしまった。
「コワ〜。さ、俺らもいこっか。ね、ジロ」
「タクロウくんは?」
「いーよ、ほっといて。いこいこ!」
テルはジロウの腕を引っ張ってさっさと行ってしまった。
「皆ひどい…冷たいなぁ、GLAY…」
タクロウが1人哀愁を漂わせていると、
「大丈夫?」と頭上から声が。
「永井さん…小森さん…もう2人だけですよぉ。心配してくれんの(泣)」
タクロウが泣きそうな声でそういうと、トシとシゲは困ったように顔を見合わせた。
「いや…打ち上げ始まんないしね?」
「うん」
「僕達も先にいくから。早くきなよ?」
2人もさっさと行ってしまいました。
「皆ひどい…」
結局誰もタクロウの心配なんてしていません。自業自得だから(笑)
みんなの心配は酒のことのみのようです。


「テルぅ〜部屋戻ろうよぉ」
「ん〜」
打ち上げも終盤に差し掛かってくると、みんな酔っ払ってしまって、
テルとジロウなんかさっきからいちゃいちゃしっぱなしである。
「お前らくっつきすぎ!」
タクロウが見かねて注意すると、ジロウが悲しそうな顔をして言う。
「なんでぇ?だめなのぉ〜?僕テルの事大好きだからいーの!」
酔っ払っている所為か表情がころころ変わるジロウ。今度は開き直った顔をしている。
「ジロウ…好きだよvv」
テルは嬉しそうにジロウの耳元で愛を囁いたりなんかして。
目の前にいるタクロウの存在なんてまるっきり無視。(笑)
「テルぅ〜。ねぇ、部屋戻ろ?」
「いーよ。俺の部屋来る?」
「うん。行くぅ。」
「ジロウ立てる?」
「抱っこして」
ジロウは立ちあがったテルに向かって両腕を差し出している。
テルは微笑んで、軽々とジロウをお姫様抱きにする。
「じゃ、俺ら戻るから。あとヨロシクネ、たくろ。」
「おい!…俺のこと無視しやがって、あいつら…それにしてもジロウ可愛いなぁ」
ヒサシもあんくらい可愛かったらいいのに、と言おうとして口をつぐむ。
ヒサシがこっちへやって来たのだ。
「おい、てっことジロウは?」
「先戻ったよ」
「あっそ」
ヒサシは自分で聞いて来たにも関わらず、興味がなさそうに返事をして、持っている缶の
中身が無くなった事に気づいたらしくまた行ってしまおうとする。
「ヒサシ」
「なにっ……うわっ!」
タクロウがヒサシの腕を引っ張ったので、ヒサシはバランスを崩してタクロウの体の上に倒れこむ。
タクロウは両腕でヒサシを抱きとめる。
「あっ、危ないだろ!」
「だってぇ、ヒサシ行っちゃうんだもん」
「離せって」
「やーだ。…ねぇ、まだ怒ってる…?」
「…」
ヒサシは無言で体勢を変える。崩れこむように抱きとめられたので、不自然な体勢をしていたのだ。
「ねぇ…怒ってる?」
「…別に」
ヒサシはタクロウに後ろから抱きしめられる格好になって座る。
「ホントに?」
「ホントに」
ヒサシの一言に安心したように、タクロウはヒサシの肩に顔を埋める。
「オマエこそ…怒ってないのかよ」
「ん?だって、悪いのは俺だし」
「タクロウ…俺の事嫌いにならない?」
「どしたの?酔ってる?」
「たぶんな」
「嫌いになるワケないじゃん。俺の全てはヒサシのものだし。ヒサシも全部を俺にくれる?」
「…あたりまえだろ…」
ヒサシが小さい声でそういうと、タクロウが後ろで微笑んだのがヒサシには分かった。
肩に顔を埋めて、ヒサシを抱きしめる腕に力をこめる。
「タクロウ…部屋に戻るか?」
「うん…戻る…」
「…タクロウ…?」
急に背中が重くなったのを不思議に思ったヒサシが振り向こうとするが、
抱きしめられているので後ろも振り向けない。
「タクロウ…?」
通りかかった谷ヤンが話しかけてくる。
「ヒサシくんどーしたの?って…タクロウくん寝ちゃったみたいだねぇ」
「寝てんの?」
「ヒサシくんの背中で幸せそうに寝てるけど。どーする?」
「どーするって…部屋に連れてくよ。」
「1人で大丈夫?」
「大丈夫。ああ、でも立つのに力貸してくんない?」
「はいよ」
谷ヤンにタクロウを持っててもらってヒサシは立ちあがる。
「お休み〜」
「ん」

ヒサシは自分より遥かに大きいタクロウを引っ張って部屋へと連れてかえる。
後ろから見ると、ヒサシの姿が隠れてしまっています。ちょっと笑える。

部屋の前で立ち止まって、後ろのタクロウの服のポケットから鍵を取り出して開ける。
「よいしょ、っと。」
やっとの思いでベッドまで来て、タクロウをベッドに寝かせようとするが…
「うわっ!」
今度は自分からバランスを崩して、タクロウと共にベッドに倒れこむ。
「ん……ヒサシぃ…」
「起きたのか?」
「ヒサシ…愛してるよ。」
「…俺も…」
スースー
「タクロウ?」
タクロウのは…寝言だったようだ。
「寝言かよ…」
結局、タクロウはヒサシを後ろから抱きしめたまま寝てしまった。
「タクロウ…愛してるよ…俺の全てをオマエにあげるから。」
ヒサシはスースーと寝息を立てて寝ているタクロウに囁いてから、
腕の中で器用に体の向きを変えて、タクロウの腕の中でネコのように丸くなる。
そのままタクロウの胸に顔をすりすりと顔を擦り付けて、嬉しそうに目を閉じる。
タクロウは無意識にヒサシを抱き寄せる。
抱きしめて、抱きしめられて。2人は熟睡してしまいました。
2人とも素敵な夢を見ているのでしょうか。2人とも幸せな顔をして寝ています。

隣の部屋ではテルとジロウも幸せそうな顔をして寝ていました。
GLAYは4人で。でも2組のカップルで。

素敵な夢を見れますように…



キリリク作品でした。5555を取ったヒサアユさんのリクでタクヒサでした。
甘々ということだったのですが、どうでしょう?テルジロもちょこっと出してみました。
ご希望どおりになってるでしょうか?え〜ご感想お待ちしております。
やっぱ、可愛いわ。ヒサシさんてば。