小さな恋人
朝起きると、隣に寝ているはずのHISASHIが居なかった。
「あれ?ヒサシ?もう起きたのかなぁ?」
TAKUROがHISASHIを探しに行こうとすると、微かに声がした。
「え?…気のせいかな」
そのまま部屋を出て行こうとすると、やっぱり声がする。
周りをきょろきょろと見まわすが、何も気配はない。
「なんだよ〜、怖いなあ」
「おい!タクロウ!」
小さな声が少し大きくなった。しかも声の主はHISASHIらしい。
「え、ヒサシ?どこ?」
「ここだよ、ここ!」
「え、どこなの?」
「ここだよ、ここ!(怒)枕元だよ!」
「えっ?」
TAKUROが不思議そうに枕元を見ると、そこには信じがたい光景が。
思わず目を疑った。
「ヒサシ…?え、なに?人形?」
「ちげ−よ、バカ!」
「な、なに?夢?」
「違う!俺だってわかんねえよ…」
TAKUROが目を疑うのも仕方ない。誰だって信じられないだろう。
昨日、一緒に寝ていた恋人が小さくなっているなんて!
タバコの箱の高さと同じ位の大きさになったHISASHIがそこにいた。
〔ちなみに服は着ています(笑)〕
「な…どうして…?」
「俺だってわかんねえよ…。朝起きたらこんな…」
小さいHISASHIは不安そうに呟く。
TAKUROは小さいHISASHIを手のひらに載せて自分の目の高さまで
持ってくる。
「ヒサシ」
「何だよ!」
「ちっちゃいのも可愛いねぇ。なんかさぁ、リカちゃん人形とかみたいだよね」
「しらねえよ、見た事ねえもん。」
「あ、そう?家にはあったけど。あれさぁ、ちゃんとパンツ穿いてるんだよね」
「お前変態っぽいぞ…。危ない…」
「そうかなぁ?なんかさぁ、遊んで見たくなるよねぇ。人形って」
ちょっと危なげな事を言うTAKUROをHISASHIは怖くなって怒る。
「バカ!そんなのんきな事言ってる場合かよ!!今日撮影だろ!」
「あ、そっか…」
「こんなんじゃ行けないだろ」
「えっと…とりあえず電話しなきゃ」
TAKUROはHISASHIをベッド脇のテ−ブルに置き、そこから携帯電話を取って、
マネージャーに電話をかけようとするが、HISASHIに止められる。
「ちょっと待てよ。俺電話にでれないし、なんて言うんだよ」
「ああ、風邪ひいて熱があってとか言っとくよ。だってホントの事言っても信じてもらえないし」
TAKUROはそういって、再び電話をかける。
「あ、もしもし。タクロウです。実はヒサシが風邪ひいちゃって、熱がさがんないんですよ。
だからヒサシ休みでイイですか?あ、はい。電話に出るのも辛いらしくて。
あ、いや、俺はとりあえず行きます。はい、じゃあ。」
「なんだって?」
「とりあえず撮影は延期にしますって。今日は取材があるからそっちだけだって。」
「そっか…」
「とりあえず…朝ご飯…食べる?」
「食べる…けど…どうやって食べれば良いわけ?」
「あー、小さく切ればいい…かな?」
TAKUROはパンやおかずを小さく切って、一番小さなお皿に載せた。
「これでいい?」
「…ま、いっか。箸とかないけどな」
TAKUROはご飯を食べながら思った。
「何か…リカちゃん人形とご飯食べてるみたい…だね」
「仕方ないだろ。お前、さっきからリカちゃん、リカちゃんてうるせえよ。
あんなビニール人形と一緒にすんな!」
「なんだ、知ってるんじゃん」
「うるせえ」
「あ、もうこんな時間!?俺行かなきゃいけないから。ここでおとなしくしててね」
TAKUROはそう言って着替え始める。
「じゃあ、行ってくるね」
着替え終わったTAKUROはHISASHIをそのままにして出かけようとする。
「ちょっと待て!」
「なに?」
「俺も一緒に行く!」
「行く…ってどうやって?」
「シャツのポケット。そこなら入れるだろ」
「いや…でもそれ危険なんじゃ…」
「お前、こんな状態の俺を放っておくのかよ!こんなんじゃどこにも行けないし、
何も出来ないし……心細いよ。それに…さみしいだろ。だから…一緒に行く」
「分かった。ごめんね、置いて行こうとして。一緒に行こ。」
TAKUROはHISASHIをシャツの胸ポケットに入れ、自宅を出る。
「大丈夫?」
「うん、なんとか」
そのまま車で都内のスタジオへと向かう。
スタジオの駐車場に車を止めて、走って向かおうとすると、
「ちょ、ちょっと、走んなよ!危ない!」
「え?ああ、ごめんごめん」
「たく〜、危ないだろ。俺がいる事忘れやがって」
「ごめん」
「タクロ−さん、何ひとりごと言ってるんですか?」
スタッフが迎えに来たらしく、エレベーターのところに立っていた。
「えっ、何でもないよ」
「そう言えば、ヒサシさん、大丈夫なんですか?」
「あ−、うん」
ちらりとポケットを見ると、HISASHIはみつからないよう小さくなっていた。
(ごめんな)と目で合図すると、
(大丈夫だから)と、口をパクパクさせていた。
「遅くなってすみません!」
「タクロ−遅いよ〜」
「ごめん」
「ねえ、とのくん大丈夫なの?」
JIROが心配そうに聞いてくる。
「え、うん。まあ」
「昨日は元気だったのにね〜。」
TERUとJIROが顔を合わせて言う。
「ああ、熱がさがんなくて」
TAKUROがそう言うと、TERUがきいてきた。
「ねえ、この後様子見に行ってもいい?この後何もないんだし、ねえ。」
「あ、そうだよ!心配だし。ねえ、タクロウ君?」
「いや〜あ〜」
TAKUROはちらりとHISASHIを見る。
HISASHIはポケットの中で必死に首を横に振っている。
「いや、誰にも会いたくないって言ってたし。あと、喋るのも結構辛そうだったから。」
「そんな事言われたら、余計心配じゃん」
TERUが言うのを、JIROが宥める。
「テル、ダメだよ。テルが風邪引いちゃうよ。まだレコーディング残ってるんだよ?」
「そうだけど〜」
「そうそう。大丈夫だって。ヒサシは俺が看病するから」
TAKUROはJIROの心配性に感謝しつつ、さりげなく話題を逸らそうすると
「ねえ、それよりさあ」
「すいませーん、そろそろお願いします!」
ちょうどスタッフがメンバーを呼びに来た。
「あ、はーい」
取材はスムーズに進み、そんなに時間もかからずに終わった。
「じゃ、俺帰るから!」
「あ〜とのにお大事に、って言っといて!」
「OK!じゃあな」
TAKUROは急いで帰る。HISASHIが心配だからと皆は思っているらしく、
誰も帰ろうとするTAKUROを止めない。
「お疲れ様でーす」
「ああ、お疲れ様。ヒサシ君によろしく」
すれ違うスタッフ皆に言われ続ける。
やっとの事で駐車場について、車に乗ると、
「よかった〜ばれなかったみたいだね」
と、安堵したようにいった。
「お前ちょっと挙動不審」
ポケットから顔を出して、怒ったように言う。
「嘘。大丈夫だと思ったんだけどなあ」
「ま、あいつら2人鈍いからわかんないと思うけどな」
「きっつ〜。さ、帰りましょうかね」
家に帰ってくると、リビングのテーブルにHISASHIを降ろす。
「なあ」
「なに?」
「タバコ吸いたい」
「無理だって。自分の大きさ考えなよ、ほら」
TAKUROはHISASHIのタバコの箱をもってきて、横に立ててみる。
「ほら。同じ大きさじゃん」
「う〜。そんなの分かってるよ…」
「だから諦めてよ、ね」
急にシュンとしてしまったHISASHIに顔を近づけて、HISASHIの顔を覗く。
「どうしたの?」
「俺…このまま戻らないのかなぁ」
「ヒサシ…俺このままでも可愛いと思うけど。」
TAKUROが笑いながら言うと、HISASHIが怒り出した。
「バカ!俺は真剣に悩んでるのに…」
「ごめんごめん」
「GLAYはどうするんだよ!それに…」
「それに、なに?」
「タクロ−と…できないじゃん」
と言ってTAKUROの顔に背を向ける。
「なになに、聞こえなかった。」
TAKUROは再びHISASHIの顔を覗く。
「だから…ちょっと耳、こっちむけろよ」
「ん〜なになに〜?」
「だから…だよ」
するとTAKUROはニヤニヤしている。
「それは俺もこまるなぁ。可愛いねぇ、ヒサシ」
「ニヤニヤすんな!バカ!」
HISASHIは再びTAKUROに背を向ける。
「ごめん」
「でも、ホントに戻らなかったら…」
「大丈夫だって。絶対戻るから」
「お前…その妙な自信はどこから来るんだよ…」
「え、ヒサシへの愛、かな?」
「バカ…(照)」
HISASHIは赤くなって下を向いている。
「大丈夫だよ。小さいヒサシも好きだけど、やっぱりいつものヒサシの方が好きだよ。
だから絶対もとに戻るから。だから今日はもう寝よ?」
「うん…」
TAKUROはHISASHIをベッド脇に寝かせた。
「お前、寝返りうって俺の事潰すなよ」
「はい…気を付けます。」
HISASHIはすぐに眠ってしまった。緊張していたらしい。
TAKUROはそんなHISASHIを愛しげに眺めていたが、いつのまにか眠ってしまった。
「おはよ〜ヒサシ。ってあれ?え?ヒサシ?」
朝起きたら昨日寝かせた場所にHISASHIがいない。
「え、俺…潰しちゃったとか…?」
ベッドでオロオロしていると、
「バーカ。お前起きんの遅えよ」
「ヒサシ!?え、なに?…元に戻ったの!?」
「朝起きたらな」
HISASHIはいつもと変わらない様子でタバコをふかしていた。
「ヒサシ〜、よかった〜〜!」
TAKUROはHISASHIを抱きしめる。
「うわっ、危ねえって。」
そう口にはするものの、HISASHIもおとなしく抱きしめられたままである。
「よかったね」
「…うん」
「ヒサシ…」
TAKUROは少ししゃがんでHISASHIの唇を奪う。
HISASHIの手の中のタバコがだんだん短くなってゆく。
「んっ…」
「ヒサシ…」
「…朝っぱらから欲情すんな、バカ!」
「え〜、だって嬉しかったからつい…」
「今日は仕事だろ。早くしろよ。」
「え〜」
不満そうに言うTAKUROに、HISASHIが耳元でささやく。
「だから、帰ってからな。」
「えっ、うん」
嬉しさにまたHISASHIを抱きしめようとするTAKUROをするりとかわして
「早くしろよ、置いてくぞ。」
早く起きたHISASHIはもうすっかり着替え終わっていて、
昨日吸えなかった分を取り戻すようにタバコを吸っている。
「ごめん。さ、行こ!」
TAKUROも着替え終わり仕事場へと向かう。
なんだかすっかりいつもの生活に逆戻り。
昨日の事は夢だったかのように、普通の会話をしている。
もしかしたら夢だったのかもしれない・・・
おわり
これもキリリク小説です。
700をゲットしたりょうこさんへ捧げます。
パラレル、ということだったのですが、これで良かったでしょうか?
何かねえ「南君の恋人」と言うドラマを思い出したので、ヒサシが小さくなったら
どうなのかな?と思って書いて見ました。武田真治ファンだったもので(笑)。
文才ないなぁ、と思ってしまいました。
そしてエロがない!パラレルって初めて書いたので
エロまで行きませんでした。ごめんなさい(泣)