One Red Rose


ヒサシの誕生日が迫ったある日の事…

久保家には相変わらずGLAYのメンバーが揃っていた。
「もうすぐトノの誕生日だねー。トノもとうとう三十路かぁ」
「オマエなんかもうすぐ31だろ」
「まだ4ヶ月あるもんねーだ」
テレビを見ながら、テルとヒサシがしょーもない言い争いをしていた。
タクロウは今日はご飯当番の為、台所で苦戦中。

「じろちゃん、見て見て!」
「何?んー、これは鮎とNICOかなぁ?」
「うん!!」
「上手に書けたねー。あ、こっちはタクロウくんととのくんだねー」
「そうだよー」
「上手く書けてるねー。」
「ホント!?たくろうにみして来る!!」
「たくろー!!」
パタパタという効果音が付きそうな走りで台所のタクロウの元ヘ行くと、
「みてみてぇ」
「んーどれどれ」
エプロンで手を拭いて宙の背の高さまでしゃがむ。
「これね、たくろーとひさしなの。じろちゃんが上手だね、ってほめてくれたの」
「うん。上手に書けてる。ありがとな」
「おーい。そら、たくろう何見てんだー?」
リビングからヒサシが声をかけてくる。
「んー、宙が書いた俺らの絵。ヒサシも見る〜?」
「見たい見たい。宙ぁ、俺にもみしてよ」
「うん、いいよ〜!」
「はい!」
「どれどれぇ、おっ上手いねー、宙くん。でも俺にはまだまだ敵わないかなっ」
「僕の方がじょうずだもん!てっこのばかぁ」
「ほーら。仲良くしなさーい。」
出来た料理を運んできたタクロウが注意する。
「…はーい」
「はーい。ご飯食べよーよー…ってあれ?」
宙がちょっと落ちこんでしまった事にようやく気づいたテル。
「てっこ、ご飯食べたら宙とお絵かきして遊んでね。」
タクロウのアイコンタクトに気づいたテルが笑顔で返事をする。
「いいよー。」
「宙、てっこが一緒にお絵かきしてくれるって。良かったねー。」
「……しょうがないなぁ。あそんであげるよ。」
「あい。じゃ、ごはんごはん」
「いただきまーす」

ご飯の後、仲良く遊ぶテルと宙だった。
ナンダカンダ言って仲良しじゃん。(笑)
「みてみて、これタクロー。似てない?」
「すごーい、にてるぅ。てっこじょうずだねぇー」
「でしょー?うはは〜」


2月1日。

今日は一日スタジオで作業の日。
大人しくしてるから大丈夫、というモッシュのお墨付きを頂いたので、今日はスタジオの隅で遊んでいます。
ヒサシがブースにこもって作業していると、もうすぐヒサシの誕生日という事もあり、みんな密かに打ち合わせをしている。
その姿を見ていて、お絵かきをしていた宙はいい事を思いついた様子。
「僕、お出かけしてくる!」
「宙ぁ、1人じゃ危ないぞ!」
「だいじょうぶ!!いってきまーす」
小走りでスタジオを後にした宙が向かったのはすぐ近くの花屋だった。
「おねーさん、おはなください!」
「どんなお花かなぁ?」
「いーっぱいのおはな。」
「うーん、僕はー、いくらもってるの?」
「このくらい!!」
宙はぎゅっと握り閉めていた手を開く。乗っていたのは500円玉一枚。
「うーん、ごめんなさい。それじゃあ沢山のお花は買えないの。」
悲しそうな顔でいう花屋の女性の言葉を聞いてもっと悲しげな顔して
「買えないの…?」
「ごめんね…」
「…さようなら」
宙はぎゅっとにぎった手をじっと見つめて花屋から出て行った。

宙が暗い顔をして、4人がいるスタジオに戻って来た。
トボトボ歩いているのをスタジオから出て来たタクロウが見つけた。
「そ…」
「宙くん?!」
タクロウが声を掛けようとしたら、すぐ前の曲がり角からジロウが現れて、驚いて声をだした。
「…じろちゃん…」
「宙くん、どうしたの?」
「…」
「何かあったの?僕に話してくれる?」
「…じろちゃん、ぼくね、ひさしにいーっぱいのお花あげたいの。
たくろうがいーっぱいのお花あげてたとき、ひさしすごくうれしい顔してた。だから。
でもね、おねーさんにこれじゃたりないの、っていわれちゃったの。
ちょっとじゃひさしかわいそうでしょ?だから…」
悲しそうに俯く宙の頭をジロウは優しく撫でると、床に膝をつく。
宙を下から見て、ゆっくりと喋りだす。
「宙くん、あのね。
もちろん、ひさしくんは沢山の花をもらったら嬉しいと思う。
それで喜んでもらいたいっていう宙くんの気持ち、よーくわかるよ。
でもね、お金をかける事だけが気持ちをあらわすことじゃないんだよ。
わかるかな?たとえば、今までと同じようにヒサシくんの似顔絵だけをあげてもヒサシくんは喜ぶと思うよ。
それに、お正月に貰ったお年玉でプレゼントを買ってあげたいと思ってる事知ったらすごく喜ぶと思う。
無理して沢山のお花をあげるより、すっごく気持ちのこもった1本だって全然負けないよ?」
「ホントに?」
「ホントだよ。僕が嘘ついた事ある?」
「ない…」
「じゃあ、僕が一緒についてってあげるから一緒にお花屋さんに行こうか?」
「…うん!!」
ジロウの差し出した手を取って、もう片方の手の中の500円玉をぎゅっとにぎりしめる宙也だった。

その様子を偶然見てしまったタクロウは2人の後ろ姿に微笑んでそっとその場を立ち去った。


その後、ジロウと宙が花屋に行って買った花は真っ赤なバラ。
立った1本だけど、何よりも思いがこもったバラ。


そして、夜。
明日は皆で誕生日会なので、其の前に家族で誕生日会。
「ひさし、誕生日おめでとう!」
と書かれたケーキもテル監修の元でタクロウによる手作りだ。
「ヒサシ、これ俺からのプレゼント。」
中身はヒサシが欲しいと言っていたリング。値段は相当高い。
「ひさし、これね、ぼくからのぷれぜんと。」
はい!と差し出したのは先ほどジロウと買いに行ったバラ。
「ぼくがおっきくなったらもっとたくさんのおはなあげるね。」
「そら…ありがと…」
感動にひたるヒサシだった。
「さーさー、料理たべよ!」

幸せな誕生日を一日早く迎えたヒサシだった。

HAPPY BIRTHDAY!!