貴方を支えたい

 

「ねえ、ジロ。タクロウのどこが良いわけ?」
テルのその一言からジロウがタクロウについて話すことになった。 

「タクロウくんはホントはすごくもろい人なんだよ?多分4人の中で一番」
「あいつは俺ら3人ほど図太くないんだよな、確かに。」と、ヒサシが納得したように言う。
「一番崩れやすいっていうのかな」
と、幼馴染みであるテルも言う。

「俺ね、思うんだけど」
「うん」
「俺らってたぶん横一列に並んで仲良く歩いてる、っていうわけじゃないと思うんだ。
テルやヒサシは前の方を歩いてる。2人とも我が道を行くっていうタイプだから。
その後ろをタクロウくんが歩いてる。2人より少し離れたところだけど、ちゃんと声が
聞こえる距離にいて、2人を見守ってる。そうやって3人のバランスが保たれてて。」
「ジロウは?何処歩いてるの?」
ジロウは敢えてその質問を無視して話し続けた。
「タクロウくんは“俺は立ち止まっちゃいけない” “辛くても歩みを止めちゃいけない”って思ってる。
責任感の強い人だから。もし、テルやヒサシが立ち止まったら、きっと励まして
“大丈夫だから一緒に歩こう”って言うと思う。
自分だってホントは、立ち止まってしまいたい時だってあるのに…
辛くて辛くてたまらないときだってあるのに…
自分はそう言う事を全部心の中に溜め込んで、辛くても歩いてる。

多分俺は、3人のもっとずっと後ろを歩いてたと思う。ホントだったら追いつかないようなところに。
だけど、タクロウくんは待っててくれた。“一緒にやろう”って言ってくれた。
“ちゃんと待ってるからここまでおいで”って。

だから俺は、そんなタクロウくんの後ろを歩きたい。
辛かったら立ち止まって、しゃがみこんでもいいんだよっていってあげたい。
俺が、タクロウくんを支えてあげたいんだ。
テルもヒサシもそんなタクロウくんを見捨てて置いていったりしないから、
たまには立ち止まって泣いてもいいんだよって言ってあげたい。」

「ジロ…」
「お前、そんなこと考えてたんだな。」
「ねぇ、じろう?」
「なに、テル」
「タクロウを支えてあげられるのはジロウしか居ないと思うんだ。
確かに俺達の方が付き合いはずっとずっと長いけど、タクロウは俺達に
支えられたいなんてきっと思ってないと思う。
タクロウは俺達にいろんなものを与えてくれる。それで、好きな事してていいよ、って。
だから俺らは、いろんな形でそれに応える。言ってみれば、ギブアンドテイクの
関係っていうのかな?でもジロウにはそうじゃない。少なくとも俺には分かるよ。ねえ、との?」
「ああ、あいつは誰よりもお前を信頼してる。お前には持ってないものをタクロウは確かに持ってる。
でも、あいつに持ってないもの、持てないものをお前は持ってる。お前がGLAYに入ってから
タクロウは変わったよ。それまでは漠然と有名になりたい、音楽をやりたい、と思ってただけだった。
そうじゃだめなんだ、ってことをあいつに教えたのはお前だろ。
あいつよく言ってたよ。
“ジロウがGLAYに入ってくれなかったら、今のGLAYはきっとなかっただろうな”って。
お前はちゃんとタクロウの後ろを歩いてるよ。俺ら2人があいつに支えてもらってる分、
おまえはタクロウをしっかり支えろよ。」
「テル…ヒサシ…ありがと」
「タクロウのことよろしくね」
「うん!俺、タクロウくんのとこ、行ってくる!」
「いってらっしゃい。」
JIROはTAKUROが打ち合わせをしているいう部屋へと向かう。

「タクロウくん!」
「え、ああ、ジロウ?どうしたの?」
「ううん、別に」
「そう?でもちょうどよかった。今、ジロウのとこ行こうと思ってたんだ。
次のライブの曲順なんだけどさぁ。この曲入れたいんだけどね。」
「あーっと、そしたら…」
2人は真剣にライブの曲順について話し合っている。
ライブの構成、演出に関して一番権限を持っているのはJIROだ。
TAKURO以下3人は“ライブできればイイや”みたいなところがあるので、
毎回JIROは頭を悩ませる。
「タクロウくん、この曲は削った方がいいよ。流れとしてかみ合わない。」
「そっか…」
「この曲はどう?」
「あ、それならいいかも!」
なんだかはたから見たらラブラブなオーラを出してる2人でした。

控え室に残された2人はといえば…
「なんかさぁ…娘を嫁にだす父親の心境?」
「なにそれ」
「だってさ…俺、子供の頃からタクロウのことしってて…
どう考えても、タクロウがヤられる方でしょ?」
「あーいいんじゃねぇの?タクロウだって、それで良いと思ってんだから。」
「そっか。」
2人だって、ホントはタクロウのこと好きだったのに、それを言わなかったのは…
「ジロにあんな事言われちゃね…敵わないよね。」
「アイツの事を俺は支えてやれないからな。」

END

ジロタク2作目でした。
GLAYの関係って、多分こういう感じだと思うのです。
TAKUROさんて、ふとした瞬間になんかとても儚げにみえたりして。
それを支えてるのはJIROなんじゃないかな、と。