わたしは学生時代、ホームセンターの熱帯魚コーナーと専門店の二つの店でバイトしていました。ここでは主にホームセンターでバイトしていたときのおもしろいエピソードを公開します。
5、6年くらい前の話ですので値段とかは当時の相場です。



ネオンテトラ
自分がバイトしていた熱帯魚コーナーはホームセンターの中にあるのでお客は初心者がほとんどです。その客のほとんどがネオンテトラを買っていきます。そんなわけでネオンテトラに関する話はたくさんあります。よくあるのがいきなり「テトラください。」と言う客。最初のころは「何テトラですか」なんて聞いてましたが、慣れてくると「はいはい。ネオンテトラですね。」って受け答えてしてました。しかし、いきなり「テトラポットください」って言われた時は一瞬凍り付きましたね。同じ様でかなり違います。(^^;ネタのようなホントの話です。

へんな客
たびたび変な客がやって来ました。非常に困るんですが、それなりにおもしろかったりします。1種類1匹ずつ買う客。バイトしてた店では1種類ずつ袋に詰めることになっていたので、ものすごい数の1匹ずつ入った袋が・・・。まだこのくらいは買ってくれるお客さんですのでいいのですが、一番困るのが些細なことで暴れる客ですね。テトラミン52グラムが特売だった時のことです。いい年のオヤジが「これ(52グラム)を4つ買うと200グラムより安いのはどういう事だ」「店長呼べ」「店長さんよぉ。お宅どういう値段のつけかたしてんだ?」と大声で絡むこと1時間。そのオヤジは昔からの名物問題客で、昔はハゲていて今はズラだそうです。なかなか笑えました。

託児所
バイト先はホームセンターということもあり、小さな子供連れのお客もたくさん来ます。そんなわけで親が買い物に邪魔な子供を熱帯魚コーナーに置いていくんですよ。「ママ、あっちで買い物してくるからここにいてね。」とか言いながら。その置いていかれた子供、おとなしく水槽を眺めているだけなら何も文句は言いません。が、子供だけに水槽のガラスをバンバン叩く、テトラのパンフレットを折り紙にしていろいろ作っておいていく、売り物のカメを持っていってしまうなどいろいろやってくれます。こっちがキレそうになった頃ママは買い物が終わって、やってきます。「お魚さん見てたのぉ?行くよー。」って。そんなわけで熱帯魚コーナーは託児所と呼ばれていました。

アルタムエンゼル
12月初旬「アルタムエンゼルないんですか?」ってよく聞かれました。そんな客の声に答えて10匹ほど、年末に入荷しました。ドイツ便のWILD物で値段も6千円弱となかなかいい個体です。あっという間に売れちゃうのかと思ったら1匹も売れません。うちの客。ないときに「あれないの?」と聞くくせに、いざ入れてみるとだれも買っていきません。水草でもなんでもそうです。本当に困ったもんです。そのアルタム、ひれが溶けてきてヤバかったです。1匹も売れないうちに。(^^;

カボンバとアヌビアス・ナナ
金魚藻としてカボンバを売っていたのですが、御存じのとおり、カボンバは金魚の水槽ではすぐ枯れるか食われてしまいます。そこで文句を言ってくる客が毎日必ず何人かいました。そこでこちらが「これならまず枯れないし、固いから金魚は食べませんよ。」とナナを薦めると「そんな高いの買えない(カボンバの3倍くらいなんですが・・・)」とまたカボンバを買っていきました。その客、毎週カボンバを買いに来ました。最初からナナを買ったほうが安いのに・・(^^;

「熱帯魚」の意味を知らない人々
ネオンテトラを買っていったお客が「買って帰ってすぐ全滅した。」と言うので「温度合わせ、水あわせしましたか?」と聞くと「した。」との事だったので、取り合えずもう10匹タダであげました。するとまた電話がかかってきた今度も全滅したとのことでした。さらによく話しを聞いてみると、ヒーターも何も入ってない1時間前にセットした金魚の水槽に入れたそうです。よっぽど「お客さん、熱帯魚ってなんで熱帯魚っていうかわかりますか?暖かいところにいるから熱帯魚なんですよ。」と言ってあげようかと思いましたが、とりあえず、暖かくしないと死んでしまうという話をして納得してもらいましたが、こちらとしても買っていくお客がどこまでわかっているのか知る手段はありません。わかっているふりをして買っていって失敗して文句を言ってくるのですから、たまったもんじゃありません。まだとんちんかんな質問をしてくれる方が助かります。

人間サーモスタット
冬場はヒーターがいるという事がわかったちょっと進化した人もいろいろと常識では考えられないことをしてくれます。こういう質問をしてくれた人がいました。年配の夫婦がやってきて奥さんの方が「サーモスタットっているんですか?今はヒーターだけ入っていてコンセントをさしたりぬいたりして調節しているんだけど」わたしはヒーターのコンセントを抜いたり差したりして水温を調整している姿を思い浮かべ、夜はどうしているんだろう???と思いつつ、サーモの必要性を説明し、奥さんは納得したようでサーモを買って行こうとしましたが、旦那の方が「そんなものはいらん。今までどうりでいいんだ!」と怒りだし、「次にしよう・・」と帰っていってしまいました。どうなってるんでしょうね。その人の水槽。他にも「温度が安定しない」という人に良く話を聞いてみるとヒーターのみの人がかなりいます。冬場だけに煮えることはないのでしょうが、暖かくなって文句を言ってくる人が増えることが十分予想できたのでした。

知ったかぶり
ものすごい知ったかぶりをして子供、彼女などに説明している客が結構いました。ダトニオを指差して「これがあの鉄砲魚だよ」と子供に言う客。汽水の意味は「酸素の豊富な水」と言いきってしまう人。ベタなどの派手な魚を見て「やっぱり海水魚(うちの店は淡水魚のみ)はきれいだなぁ。」と感心している客。それにしても汽水の意味を知らない客が大勢いました。学校とかで習わなかったんでしょうか。よく質問されました。

例のオヤジ
何度かまたやって来ました。前回ほどは暴れなかったのですが、「今日75万のディスカス4匹買って今車の中にいるんだよ。」「ここのディスカスなんてカスだな」「お前らの態度次第でここの水槽にも俺のディスカスわけてやれたのに・・」と散々自慢話をして、けなして帰りました。いかにヤツのズラをはずしてやろうかよく作戦を練っていたものです。(^^;
それにしても今考えると75万のディスカスなんてスゴい時代でしたね。今じゃとても考えられません。

人の物を欲しがる人々
「売約済み」の札が付くと急に「この魚は売ってくれないの」と聞く客が増えました。でも、新たに入荷するとまず買っていきません。薬品類も店で使いだして、その辺に置いておくと今まで売れなかったのが飛ぶように売れました。主なヒットはPSB、アクアセーフなどです。

恐怖の小赤の個体指定
いわゆる「エサ金」ですが、一応金魚ですので飼育目的で買っていく人もいます。500匹ほどの小赤の中には当然真っ白なアルビノ金魚や赤白ぶち模様、黒い金魚などが混じってます。それを個体指定してきます。「あっあの半分白いやつ。あと、このまん中にいるやつ」って完全に自分の視点で注文してくれます。その人と自分の見る角度が違うなんてことは当然考えてくれてません。こういう客たいていめちゃくちゃ忙しい時にやって来るのです。

万引き
万引きをしようとしているやつはすぐわかります。こちらの様子を伺っているからです。たいてい見つかるやつはたいした物を持っていきません。「そのくらい、買えよ。」って感じなものばかりです。テトラのブラインシュリンプエッグ500円とか・・・逆に見つからないやつは豪快です。台車にビデオデッキ乗っけてごろごろと駐車場まで持っていきそのまま持ってかれたケースが多々あったようですし、値札シールを張り替えて勝手に9割引セールをやってくれるやつもいます。レジのパートのおばちゃんだと熱帯魚用品の値段なんてわからないのでうまい手口です。たまに値段を確認するとフルーバル203が980円になっていたりしました。そこで店側から指令が出て値札の上にセロハンテープをはることになり、これもいい暇潰しになりました。

魚の引き取り
エンゼルの稚魚、シルバーアロワナなどは引き取っても売れるので喜んで引き取るのですが、何度か「グッピーの稚魚を引き取ってください」と「水筒」に入れて生後数日と思われる本当の「稚魚」を持ってきた人がいました。こういうグッピーだけは商品価値がなく、どうしようもありません。多くのショップでは肉食魚のエサにしてしまうものですが、それもかわいそうなので、しかたなくディスプレイ水槽に入れましたが、メスばかりでしかも色が色々グチャグチャに混ざったおぞましいものに成長しました。

テトラミンチョコフレーク事件

とある日、中年のおっさんがテトラミンを買って帰ったのですが、開封したテトラミンを持ってまたお店にやってきました。「このテトラミン、変なんですけど。」 見てみたらテトラミンがチョコフレーク状に固まっているではないですか!どうやらアルミ箔に穴があいて湿気ちゃったみたいなんですが、こんなこともあるんですね〜。もちろん交換してあげました。

三歳児の万引き?
バイト先のホームセンターではハムスターなんかの小動物も扱っていました。当時はジャンガリアンが出回り始めたころで一匹五千円近くしました。そんなおり、三歳くらいのちっちゃい子供が胸のポケットにハムスターを入れているのです!「おいおいこんなちっちゃい子が万引きか〜」と思って注意しようと思ったらその子供「○○〜(ハムスターの名前と思われる)お友達に会いに来たよ〜」と言ったのです。同僚の店員の話だとつい最近、ハムスターを買って帰った子どもで、どうやら家から自分のハムスターを連れてきて、お店のハムスターに会わせていたらしいのです。なんとも微笑ましい光景ではありましたが、「盗むな!ガキ!」とか言わなくて良かったです。

熱帯魚屋用語集
割とポピュラーなのもあるかと思いますが、

落ちる
魚が死ぬこと。
使用例 「あの水槽の落ちているの拾っといて。」

ロス
これも魚が死ぬこと 名詞的な意味合いかな。花屋も同じ言葉を使うらしい。
使用例 「今回、ロス多かったな〜 この値段じゃマイナスだよ。」

着死
問屋から送られてくるときにすでに魚が死んでいること。補償してもらえるので正確にカウントする。あくどいショップだとこの数を水増しして儲けるそうだ。
使用例 「今日の着死、どれくらい?」


マイナス収入になってしまうこと。
使用例 「赤になるけど、売れないよりましだからこの値段にしよう。」

混じり
問屋に頼んだ魚以外の魚が混じっていること。たいてい珍しいものが多いのでカラシンやコリはこれを目当てに買いに来るマニアもいる。
使用例 「あのコリ、混じりじゃない?ロングノーズだよ・・・」

抜く
混じりなどを水槽から掬うこと。ショップでは受動態で使われることがほとんど。
使用例 「あの混じり、抜かれたよ〜」

沸かす
主にブラインシュリンプを孵化させること。また、勝手に繁殖すること
使用例 「グッピーの稚魚用にブライン、沸かしておいて。」
      「あれ?あのアピスト沸いてるよ。」

また思い出したら追加しますネ。

値段の決まり方
熱帯魚や器具の値段の決め方は興味深いと思います。わたしも最初はどう決まるのかとても興味がありました。器具はだいたい売値の4〜6割くらいが仕入れ値です。熱帯魚の方は器具ほど単純ではなく、どれだけロスがあるか、すぐ売れる魚かといった複雑な計算があり、だいたい仕入れ値の3倍の値段をつけるのが普通です。
さらに、松戸のような熱帯魚屋過密地帯の場合、お客さんは車でショップを行ったり来たりしますので10円、20円が勝敗を分けます。そこでわたしのようなバイトが偵察にでかけるのです。それで調べてきた値段より10円下げるだけでバカ売れです。まぁ、わたしがよその店のバイトだというのも向こうのショップもわかっていたみたいですけどね。それにしても、10円、20円のために行ったり来たりするお客さん、ガソリン代の方が高くないですか?

熱帯魚雑誌の影響力
水草を買いにきたお客さんがハイグロを指差し、「このウィステリアください。」と言いました。「はい?それハイグロですよ。」「いーや。ウィステリアだ!」「ハイグロですけど・・・」「ほらこの本に書いてある・・・」と「楽しい熱帯魚」を見せてくれました。確かにハイグロの写真の下にウィステリアって書いてあります。「お客さん、これ本が間違えてますよ。」「そーなの?」 というエピソードがありました。結構雑誌の影響力は強く、それを鵜呑みにしてしまうお客が多かったです。同じような話ですが、「アロワナ」を「アナロワ」と誤植していてそれを言ってくるお客もいましたね。

見なかったことにしよう
冬のある日、開店前の見回りをしていたら、水槽の中でカメが動かないのを発見しました。「寒いから、動きが鈍くなっているんだな〜」と思い、手で甲羅をつかんで持ち上げてみたところ、カメのクビがポロっと落ちたのでした。(涙) 思わず、「見なかったことにしよう。」とそのままもとに戻しちゃいました。後でバイト仲間に聞いたら同じように戻したそうです。

水槽を買いに来る人々
水槽を買いに来る人のほとんどが車で買いに来るわけですが(なかにはチャリンコで買って帰る元気な人もいますが)、60センチ水槽ぐらいならどんな車でも平気ですが、90、120となると、ホントに積めるのか不安になる人も多いでしょう。実際には90はどんな車でも積めます。どういうわけか、おっきな水槽を買いに来る人に限って、軽だとか、クーペのお客さんが多いんですよ。でも、荷台なり、後部シートなりになんとか積めちゃうから車って良くできてるんだな〜っていつも感心してました。しかし、積むときは店員が手伝いますが、下ろすときはお客さん一人でどうするんだろう?といつも心配しておりました。


その他、思い出したら追加します。お楽しみに!