レンズまめとレンズスープ                  2000-7-10 


■ヨーロッパの古典作品を読んでいるとしばしば食事の場面で「レンズ豆」が出てくる。そのレンズという響きが文脈と違和感があって引っかかるのだが、何の説明もない。わざわざ調べることもなく、その都度忘れてしまうのだが、今日その疑問が氷解した。カメラとは関係のない話しだったが、うれしいので書いている。

■想像では「レンズ豆」とは、レンズのような形をした豆と思われる。しかし、豆の方がレンズより古くから存在するはずで、「豆レンズ」という語彙であれば納得できるが、「レンズまめ」という言葉は、その豆を覗くと遠くが見えそうな妙にファンタジックなイメージを与える。

■著名なレンズ設計者である小倉敏布さんが「写真レンズの基礎と発展:朝日ソノラマ(2000円),1995年」で同じ話しを書いている。小倉さんは、ウエッツラーのライツ本社での昼食で「レンズスープ」を出されたという。その話し(p.35)がおもしろい。「……午前中ずっとレンズの話をしていた直後だけに、メニューがレンズスープであると効かされた時、全くきつい冗談だと思った。運ばれたスープ皿には、一瞬135mmクラスのレンズが丸ごと沈んでいるように見えた。よく見ると、それは皿からはみ出しそうなフランクフルトソーセージであった。そしてスープの中には小さな両凸レンズのような形をした豆が無数に顔をのぞかせていた。謎は解けた。」

■ドイツ語でLinseは「レンズ」と「扁豆」の両方の意味があることの混同であるそうだ。英語ではその豆はLientilと呼ぶ。ようするにレンズとは豆のような形をしたものというのが語源であるようだ。こういうことが分かるというのは、実にすっきりする。




【カメラの触感】