M3後のキャノンのレンジファインダー
Canon XTからの系譜
2003年6月16日作成


Canon YL


Canon 7


上からYL・7・7s

■ライカM3が1954年4月に発表された後、多くの日本のカメラ・メーカーはレンジ・ファインダー式カメラの開発から撤退していく。レオタックス、ニッカなどのバルナック・タイプの専業メーカは消え去っていき、大手メーカは一眼レフに活路を求めて成功する。そんな中で最後までがんばったのがキャノンである。私が父親のキャノンUsという名機Wsbの派生モデルを譲り受けたのは1964年の高1のときだから、キャノン7が現役で、最高級カメラとして、それなりの評価を得ていたと思う。
 1965年のキャノン7Sまで、派生機種を含めて13機種を発売している。ただし、M3後の最初のモデルWsb改は名前の通り、Wsbのシャッターを等倍系列に変更しただけ(らしい)ものであり、時代遅れの感は否めない。しかし、これを企画し、販売見通しを持ったのは、必ずしも当時M3が絶対的、神聖視されて登場した訳ではないことが理由である。M3の馬鹿でかくてゴロリとしたデザインは実用性がなさそうだし、プロを含めて多くのユーザは、ライカ・スクリュー・マウントのレンズを多く持っている。わざわざMマウントのシステムに切り替えようとしなかったユーザは少なくない。であるから、Vfなきライカの後継はWsb改であるというメッセージである。このようなM3への拒絶反応に対して、3年後になって、ライツ社はバルナック形のVgを販売せざるを得なかった。

■高2のとき、望遠レンズが欲しくて、Canon 135mm/f3.5を浜田山のホッタ・カメラに注文した。その当時は、7には135mmの内蔵ファインダーがついていたので、別に外付けファインダーも注文した。手元に届いたファインダーを見て驚いた。外付けファインダーには、パララックス補正用に、ファインダーの上下角度を変更する調整機能が必要であるが、それがないのである。上下に首を振ることができるが、通常は下を向いたままなのである。
 カメラ屋に聞くと、7以前のモデルのアクセサリー・シューには、距離計のカムに連動した突起ピンが設けられていて、この突起によって、ファインダーの向きを正しく設定するという。しかし、自分のUsにはそのような機能はついていない。そのとき7以前のYLというモデルの存在を知った。これが名機らしいのである。そして、自分の135mmレンズは、Usに取り付け、ファンダーには適当な固定用スペーサをはめ込んで、ほぼ無限遠専用としていたが、使いものにならなかった。今にして思えば、この体験がその後の広角レンズ愛好につながったのかもしれない。

■子供心に自分のバルナックスタイルのカメラに愛着をもっていたので、当時はM3のスタイルが鈍重に感じられたが、逆にキャノンの最新レンジファインダーは、非常に現代的なデザインで強い憧れを感じた。キャノンがM3に追随して、バルナック・デザインを捨てたのは、M3に遅れること2年、1956年のキャノンXTが最初である。VT(ブイティー)と呼ぶ人もいるが、その前のモデルがWであるから、ゴティーと呼ぶのが正しいのかな。次のYLはロクエルと呼ぶが、7になるとこれは、だれもがセブンと読んでいた。M3の進化の最大の特徴はファインダーの革新にある。だから、キャノンも必死にファインダーの改良に努めるが、残念ながら、ついに追いつくことができなかった。
 外観は現代化したが、シャッターは高速・低速の2軸のままだし、ファインダーは基本構成は従来のままで、各光学部品を大型化して、視野倍率を高めてはいるが、ファインダー視野はボケた黒枠である。特徴はライカビットを真似た底面のフィルム巻き上げレバーである。さらにYLになって1軸シャッタになって、ブライトフレームがつき、7になって、ようやく視野倍率1、35〜135mmまでのマルチ・ファインダーを実現した。ニコンは意地でSPの28〜135mmファインダーの作り上げたが、キャノンは結局その方向を捨てて、むしろYLのファインダーを単純化したP(ポピュレール)を発売して大成功する。大衆向けという名前が付いているが、それでも当時の庶民の数ヶ月分の給料程度の価格であった。

■今はPとしか言わないが、当時はポピュレールと呼ばれ、素人が持つにはしゃれたカメラだった。だから社会人になって、新宿のアルプス堂で中古品を手に入れて、しばらく使った。その当時でも中古のYLには手がでなかった。だから、最近、ファインダーの見えがあまりよくないYLを安価に手に入れたのが大変嬉しかったが、実は35mmのブライトフレームを持っていないので、広角専用で使うにはPの方が良い。しかし、作りがしっかりとした真面目なカメラとしてYLは、今でも一部に大変人気が高い。そんななか、今一番よく使う(ただぶら下げて歩くだけだが)のは、ルサールをつけたXT。断然かっこいい。



キャノンVL/L1/L2/L3の分かりにくさ (2003-7-19)



CANON XT
発売時期 1956年8月
価格 115,500円(50mm/f1.2付)
ファインダー 50mm,35mm,RF、3視野切替
ブライトフレームなし
特記事項 底面トリガー巻上げ
ボディNo. NO.516161

CANON XT Delux VTの巻き戻しを折畳みクランクに変更
発売時期 1957年5月
価格 97,000円(50mm/f1.2付)
ファインダー 50mm,35mm,RF、3視野切替
特記事項 底面トリガー巻上げ
ボディNo.   

CANON XL
発売時期 1958年3月
価格 89,000円(50mm/f1.2付)
ファインダー
特記事項   
ボディNo.   

CANON XL2
発売時期 1956年8月
価格 69,000円(50mm/f1.8付)
ファインダー  50mm,35mm,RF、3視野切替
特記事項  シャッター速度1/500まで
ボディNo.  NO.573713

CANON L1
発売時期 1957年5月
価格 87,000円(50mm/f1.2付)
ファインダー  
特記事項  
ボディNo.  

CANON L2
発売時期 1957年3月
価格 67,000円(50mm/f1.8付)
ファインダー 50mm,35mm,RF、3視野切替
特記事項 シャッター速度1/500まで
ボディNo.

CANON L3
発売時期 1957年11月
価格 48,000円(50mm/f2.8付)
ファインダー   
特記事項   
ボディNo.   

CANON YL
発売時期 1958年9月
価格 91,000円(50mm/f1.2付)
ファインダー 50mm,35mm,Mg、3視野切替
特記事項 50mm視野枠に50mm、100mmのプライトフレーム付き
ボディNo. NO.616640  

CANON YT
発売時期 1958年9月
価格 99,000円(50mm/f1.2付)
ファインダー  
特記事項  
ボディNo.  

CANON P
発売時期 1959年3月
価格 52,700円(50mm/f1.4付)
ファインダー  視野切替なし
特記事項 50mm視野枠に35mm、50mm、100mmのプライトフレーム付き
ボディNo.  NO.732703

CANON 7
発売時期 1961年9月
価格 89,000円(50mm/f0.95付)
ファインダー 135mm,100/85mm,50mm,35mm,
4視野切替(ブライトフレーム)
特記事項 アクセサリーシューなし
セレン露出計
ボディNo. NO.859881

CANON 7s
発売時期 1965年4月
価格 88,000円(50mm/f0.95付)
レンズ 135mm,100/85mm,50mm,35mm,
4視野切替(ブライトフレーム)
特記事項 CDS露出計
ボディNo. NO.119865

注)価格と発売時期は「ノスタルジックカメラマクロ図鑑Vol.V,ネコパブリッシング,(1997)」を引用させていただいている。


【カメラの触感】