2002-8-3作成

鉄道旅行は一人旅で
 ■ 中年以降になってヨーロッパ鉄道旅行をめざすなら、まず最初は一人旅とするべきです。まず一人旅で適当に失敗しておくことです。一人であれば失敗も苦になりませんし、大問題にはなりません。何より、自分ひとりで精一杯ですから、人の面倒まで見られません。計画が狂おうと、食事にありつけなかろうと、全部自分だけの問題ですから、けんかになりません。複数人で何回出掛けても、たぶん一人旅ができるための勉強にはなりませんが、ともかく一人で出掛けてしまえば、最初の数日で自信がつきます。
 以下に、これから出かけられる方の不安について少し書きます。一人旅が決して怖くないことが分かるはずです。

■1■語学力が心配
 一人旅が心配である最大の理由は現地での言葉の問題でしょうね。私はカタコトの英語をわずかに使うだけで、英語の聞き取りもおぼつきません。もちろん他の言語はまったくダメです。しかし、英語はヨーロッパではそれほど役に立ちません。フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア……等、特に地方都市では、英語が使えなくても困りません。ましてちまたの「6ケ国語会話帳」などに記述されているような基本会話など、多少勉強しておいていたとしても、まったく使い道はありませんね。だからニコニコしながら身振り手振りで、黙っているしかありません。黙っていても、行動できればいいのです。
 黙って言葉を発することなく、また相手から問いただされないように行動すれば、外国語がしゃべれないという問題はほとんど無くなります。そのために必要なことは、何より徹底した事前準備です。そして、そのバイブルが「トーマスクックのヨーロッパ鉄道時刻表」です。さらに「地球の歩き方」や地図や、各種の読み物を細かく調べておくのです。中途半端な語学知識より、こっちの方がずっと役に立ちます。ともかく時刻表と、自分が歩く場所の地図を事前にできるだけ用意しておきさえすれば、もう言葉は必要ありません。
 私の場合、現地でのコミュニケーションはもっぱら、メモ帳に書いた用件を相手に見せるというやり方で通しています。よく使う表現は、列車の中でヒマなときに、会話本から拾って書いておきます。たとえば、フランス語で「バス付きの部屋、シングル」「定食」等です。これくらい、口に出して言えとおっしゃるかもしれないですが、もし、しゃべって相手に通じたとしても、その何倍もの聞き取り不能の言葉を浴びせられ、困惑するだけだからです。
 語学に自信がなければ、一人旅にかぎります。二人で出かけて、一方がしゃべれると、まったく依存してしまって、さらに連れにみっともなくて、一言も英語を発することができなくなります。一人であれば恥を知りませんので、かなりめちゃくちゃな英語を使うことが苦にならないからです。本音を言えばせめて英語ぐらい少しはしゃべれるようになりたいと思っているのですが…。

■2■事故が心配
 事故は英語がしゃべれようと、しゃべれまいと、起こるときは起こる。旅の経験者の話を聞くと、特に不注意でなくても起きる。確率の問題のようだ。だから、初めて一人で鉄道旅行することが、事故に遭う確率が高いとは言えない。むしろしゃべれないという不安が慎重さを助長することで、事故の確率は低減するかもしれない。慣れてきて油断したときの方が危ない。
 事故に遭わないために注意する、臆病なほど慎重に行動することは大切ですが、事故にあうことを前提に準備しておくことの方が重要です。塔常時に預けた荷物が到着時に出てこないというのが、最も発生確率が高い。だから以前は、全て機内持込にしていましたが、最近は規制が厳しい。移動型の旅行、しかも宿泊予定がはっきりしていないと、荷物が出てきても届けてもらうのが困難。ですから、出発時は、最悪は預けた荷物なしでも1週間ぐらいは行動できるように、機内持込の荷物を多くしておきます。
 次は盗難、強奪です。これにはリスク分散。全部が奪われる可能性は少ない。いろいろなところに少しずつ現金やカードを分散して持っています。しかしパスポートだけは一つしかないですから、これを奪われたら諦めるしかない。そんな時でも、何より無抵抗であれば、命だけは無事なはず。

■3■宿がとれるか心配
 鉄道旅行は毎日移動しますから、事前に計画していた通り移動できない可能性が高い。1997年の旅行の時も、ロンドン行きの飛行機が遅れて、当日乗る予定の夜行フェリーに乗れず、いきなり予定が狂ってしまったこともある。ですから基本は宿の予約はせずに、現地で見つけるのですが、私の場合は、ポイント、ポイントの宿は日本で予約しておきます。多少の予定のズレは数日で吸収できますので、こうしておけば、大枠の日程を維持することができます。特に最初のうちは、初日と最終日の宿は事前に予約しておいた方がよい。飛行機をおりて、すぐに夜行に乗るというのは勧められない。また大都市のほうが宿を探しやすいと考えがちですが、これは間違え。町が大きすぎて宿探しに迷ってしまう。その点、いなか町の方が選択肢が少ない。
 それでも宿が取れない場合には、「ユーレイルホテル」があります。これは夜行列車のこと。寝台でなくても予約の必要のないコンパートメント席でも十分眠れます。もし席が取れなくても、列車の中にいれば、最低限の安全は確保できます。

■4■ともかく色々と心配
 心配ごとの多くは、結局「お金」が解決してくれます。若者の旅ではないですから、ケチケチせずにお金を使うこと。ユーレイルパスは貧乏旅行の代名詞のように言われますが、短期間の休みしか取れない中高年がユーレイルパスを使うというのは、むしろ贅沢な旅行なのだと思い直して、お金を惜しんでリスクを犯さないようにすることです。


EURAIL Old Traveler