コエーリョ巡礼ルートの推定
「RAMの実習」は何処で行われたか?


(2007-2-12)




■パウロ・コエーリョの「星の巡礼」は、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから出発する。著者はRAMと呼ばれる教団のイニシエーションに失敗して、再トライの道としてサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の道を歩かされる。道々、ガイドのペトロスから各種のRAMの実習を学ぶ。どのような順番で、何処で、どの実習が行われたかを、カミーノ上にプロットしようと試みたのが上の図である。日付や地名の記述はあいまいであるが、文章の前後関係から、おおむねの位置を特定した。走破日程も調べたかったが、文章からは全体は分からない。個別の日付記述からは、普通の巡礼道をまっすぐ進まず、色々とわき道に踏み込んでいる。
 私が「星の巡礼」を読んだのは最近のことだ。平成10年4月発行の角川文庫版である。たまたまコエーリョの「悪魔とプリン嬢」を読んで衝撃を受け、かたっぱしからコエーリョを読むなかで、出会った。「アルケミスト」の表紙デザインは子供じみていたし、「星の巡礼」というタイトルも好きじゃないので、コエーリョを知ることがなかった。読めてよかったな。アゴタ・クリストフ以来の出会いだ。

■読み始めた段階では「RAM」というと、ダヴィンチ・コードに出てくる「オプス・デイ」のような秘儀的なカルトのように感じられる。Rはリゴア(厳格)のR。Aはアドレーション(敬愛)のA。Mはマーシー(慈愛)のMである。巻末の山川夫妻の解説によれば、1492年に8人の騎士によって創設されたスペインのキリスト教神秘主義の秘密結社であるとのこと。コエーリョは最後に「剣のサンチャゴ教団」のメダルを師から得ている。文中、弁慶の五条大橋の故事と同じの、名誉の橋でのドン・スエロ・デ・キニョーネスの騎士譚がきっかけで「サンチャゴの剣の騎士団」が創設されたとあるが、これと「剣のサンチャゴ教団」の関係は明らかにされていない。

■文中から、経路を辿ると次のようになる。コエーリョは1986年の夏に歩いているとされる。
<1>サン・ジャン・ピエ・ド・ポーの「巡礼事務所」でマダム・ルルドから特別の準備装束をもらう。
<2>7日の間ピレネー山中をさまよい、「種子の実習」を行う。
<3>7日目に、「ロランの歌」のシャルルマーニュ古跡に立つ。
<4>山頂を下って、最初の村落(ロンセルバージェスと思われる)の手前で「スピードの実習」を行う。
<5>5日間歩きづめだった。…2日のち、「許しの峰」に上り、最後の「スピードの実習」を行う。
<6>街の塔を望む不明地点で「冷酷さを知る実習」を行う。
<7>朝、プエンテ・デ・ラ・レイナに着き、王妃の橋で少年のボールを奪う。
<8>夜9時近くにエステージャに着いた。エガ川の前で「メッセンジャーの儀式」を行う。
<9>隔離された女の家で「黒い犬」に出会い、襲われる。不明地点で「水の実習」を行う。
<10>犬の事件の5日後、ログローニョに着く。結婚式に出席。
<11>不明地点で「青い天空の実習」を行う。アゾフラ(アソーフラ)に着く。
<12>サント・ドミンゴ・デ・カルサーダの手前で「生きたまま葬られる実習」を行う。
<13>ある午後、聖堂騎士団の古い城あとに着いた。距離的、地名としてはテラディージョス・デ・テンプラーリオスか?
<14>2日後、南の山々に近づく。「RAMの呼吸法」を行う。
<14>この3日間、強行軍を続けた。ある朝「名誉の橋」(オルビーゴ橋)を渡る。
<15>さらに2日歩いて、3日目フォンセバドンに着く。前方の山頂には「鉄の十字架」があった。
<16>「影の実習」を行う。犬を攻撃する。
<17>「音を聞く実習」をしてから、十字架を立てる。
<18>ポンフェラーダのホテルに入る。駅の操車場で「ダンスの実習」を行う。
<19>ポンフェラーダの聖殿騎士の城でイニシエーションを受ける。
<20>ヴィラフランカ・デル・ピエルソの「許しの門」に案内される。
<21>セブレロ山を登る。エル・セブレロに着く。
     (オ・セブレイロはあるが、エル・セブレロは見つからない。実在しないのか?)
<22>ベドラフィータからバスに乗る。

■例えばサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからプエンテ・デ・ラ・レイナまでは、普通の歩行ペースであれば4日で到着する。コエーリョはこれを2週間程度かけている。全体で何日掛かったかは、到底分からない。
 コエーリョの影響を受けて、サンティアゴを歩く人は多い。シャリー・マクレーンはその最たるもので、本気でフォンセバドンの犬に襲われる恐怖に捕らわれる。神渡良平さんは、実際にログローニョあたりで「種子の実習」を試みている。


<例>
第一の実習
【種子の実習】
■まず、地面にひざまずく。それから正座して、体を前に倒し、頭がひざにつくまでまげる。腕は後ろにまっすぐに伸ばす。これは瞑想の形である。すべての緊張をとき、リラックスする。おだやかに深い呼吸をする。次第に自分が小さな種子であり、土の中に心地好く抱かれている感覚となってゆく。まわりはすべて暖かく、すばらしい。あなたは今、深い、安らかな眠りの中にいる。

■急に指が動く。芽はもはや種子でいることを望んでいない。成長したいのだ。ゆっくりと、あなたは腕を動かし始め、次に体が起きあがり始め、正座のまま、体がまっすぐになるまで上半身をまっすぐにする。今や、あなたは腰を持ちあげ始め、ゆっくりと、ゆっくりと、ひざを地面につけたまま、ひざから上をまっすぐに伸ばす。

■やっと、完全に土から飛び出す時がやってきた。あなたは片足ずつ、ゆっくりと立ちあがってゆく。芽が自分のスペースを確保してゆくように、バランスを取りながらまっすぐに立ちあがる。自分のまわりの様子を想像する。太陽、水、風、島々。さあ、あなたは今や、成長を始めた芽である。ゆっくりと、両腕を空に向かって伸ばしてゆく。それから全身をもっと、もっと伸ばす。あたかも自分の上こに輝いて、あなたに力を与え、あなたを引きつけている大きな太陽を抱きしめるかのように。体はますます固くなり、すべての筋肉が伸び切り、自分がどんどん成長しね巨大になってゆくように感じる。筋肉の緊張がますます強まり、ついに、その痛みに耐え切れなくなる。これ以上がまんできなくなったら、大声で叫び、目を開ける。

■この実習を、連続7日間、いつも同じ時刻に行う。
<引用>パウロ・コエーリョ(山川紘矢+山川亜希子=訳)星の巡礼:角川文庫版より





サンチャゴ巡礼