サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからの脱出


(2007-4-6)

グーグル・マップより地図引用





■サンテイアゴ巡礼を歩くのに地図はいらないと書く人は多い。数10〜数100メートルおきに、黄色い矢印がコンポステーラまで続き、それでも分からない場合は、ひたすら西に向かって歩けばいいというから、まさに歩ききった自信がそう言わせる。しかし私がごとき臆病人間は、とてもそれでは安心できない。先月スペイン書房に注文していた「EL CAMINO DE SANTIAGO A PIE:EL PAIS,AGUILAR,ISBN:84-03-50426-8」が届いた。252ページのガイドブックにルート地図は36枚しかない。しかも、10万分の1程度の縮尺なので、街や村、アルベルゲまでの概略距離と方向を知り得る程度である。確かに、この程度では、実際の歩行では役に立たないかもしれない。細かいところは黄色の矢印たよりなのだろう。

■ところで池田宗弘さんの道絵巻は国境のアルネギュイから始まっている。サン・ジャン・ピエ・ド・ポーからアルネギュイまでのルートを知りたい。黛まどかさんの「星の旅人:光文社」によれば、普通は約28km先のロンセスバージェスまで歩くのに対して、初日なので余裕を持って約15kmあたりのバルカルロスに宿を予約しておいた。サン・ジャンから歩き始めて3時間、黛さんが辿り着いたのはフェルメ村であった。このフェルメという地名をグーグル・マップで探したが、見つからない。3時間がかりで5kmしか進んでいなかったと書いてあるから、オント当たりと思われる。このあたりは、バスクの文化圏に近いので、地名の呼び方が二つあるケースがある。ロンセスバージェスもバスク語ではオレアーガである。もしかしたら、オント=フェルメではないかと思う。それは良いとして、ともかく黛さんは、初日に道を間違えて、本来行くべき新道ではなく旧道に踏み込んでしまった。巡礼道は多く枝分かれしている。新道・旧道、別ルートいろいろある。だから黄色い矢印があるからといって、自分の目指している方向であるか保障されない。

■四国遍路でも同じだが、山の中はむしろ案内札がいっぱいぶら下がっているので、道を間違えない。間違ったとしても、たまに出会う人に尋ねやすい。むしろ街中はいろいろなルートを取れるので案内がなくなるし、人も多いので、逆にどなたに尋ねてよいか、尋ねにくい。街は入るのは容易だが、実は脱出するのが難しい。
 ということで、サン・ジャン駅から街を抜ける方法をグーグル・マップで検討したのが上の図である。まずクレデンシャルをいただくために、マダムメダブリルが死去されて敷居が低くなった巡礼事務所に行く。神渡良平さんの「星降るカミーノ」によれば、シタデル通りにあるという。マップで位置が分かった。さらにWEB「スパニッシュタイム&スパニッシュマパス」に掲載されている手書き図から推定すると、上のように場所がほぼ特定できた。実際には、巡礼シーズンであれば、列車を下りたバックパッカーの後ろをつけていけば、たどり着けるとのこと。

■この巡礼事務所のあるシタデル通りを南に向かって歩き出す。500m程で分かれ道がある。直進で旧道、右折で新道である国道に出られる。黛さんは直進してしまった。しかし旧道ではあっても、正しい道だから確実に黄色の矢印に導かれたのであろう。結果的には、自然に溢れ、古を偲ぶことのできる悪路を歩くという得がたい体験をされる。
 私としては、そういう体験は、慣れてからにしたい。初日は慎重に新道で行こう。グーグルのお陰で、サン・ジャン・ピエ・ド・ポー→アルネギュイ→バルカルロスへのルート・イメージがはっきりした。



<追補>サン・ジャン・ピエ・ド・ポーは「Saint-Jean Pied-de-Port」である。フランス語でPiedは足、Portは港。歩きの出発点と読める。この語源の説明を知りたいところだ。





■「黄色い矢印だけで歩ける」説を巡礼初心者が信じてはいけない根拠を、各書から集めた写真で示す。引用元は下記である。
    「EL CAMINO DE SANTIAGO A PIE」……左上、中央下
    「とんぼの本:サンテイアゴ巡礼の道」……中央上、右下、右上
    「中谷光子:サンテイアゴ巡礼へ行こう」……左下、右下

■最近は公式ピクトグラムが統一されて、中央上や、左上が、それに準じた表記である。「巡礼歩き姿」と、「黄色のホタテ貝」、「矢印」のセットである。「歩き姿」と「矢印」はすぐに方向がわかるが、問題は「黄色のホタテ貝」である。私にはホタテ貝というよりは、流れ星に見える。星降る野「コンポステーラ」のイメージだ。本来は、ホタテ貝の線が開く方向を指し示しているのだが、どうしても、線が収束する方向を指し示しているように見えてしまう。
 だから公式表示は間違えないのだが、左下の手作り案内のように、「ホタテ貝」と「矢印」の向きが逆になっているような表示があったり、右上の看板のように、なんらかの理由で、当初はホタテ貝の方向であったものを、手書きの矢印で書き換えているものがあったりするのである。
 これらをどう読むかは悩みどころである。矢印を信頼すべきだろう。



サンチャゴ巡礼