世界遺産としてのサンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路


(2007-3-20)


■今日は、少し視点を変えて「世界遺産」としてのサンティアゴ巡礼路について調べよう。
 熊野古道を世界遺産に登録する上で参考にしたのがサンティアゴ巡礼路であった。特定の市街や施設に限定せずに、そのルートそのものに歴史的・文化的価値があるとする考え方を参考にした訳である。この着想が先に四国八十八ケ所のものとなれば、四国の遍路道が申請対象となり、そして富士山と一緒でゴミの多さで却下になるという道を歩んだであろう。結局、熊野古道がとんびがあぶらげをさらう格好となった。私は1990年に登録前の熊野古道を自動車で走行しただけであるが、国内の他の宗教空間とまったく異なる神気が素晴らしかった。しかし、その間ハイカーはいたけれど、巡礼にはまったく出会わなかった。熊野古道は歴史的な道だが、巡礼道としては間違いなく四国の方が生きている。
 最近、石見銀山や、富岡製糸工場などが申請リストに上がっているようだが、各国の水準と比較して、どんどん無理しているなというのが実感。たとえば富岡製糸工場は近代産業遺産として十分に評価されているし、子供はみな教科書で習う日本人としての誇りではある。だからといって村おこし、町おこしの次元で「世界遺産」を利用しようとしていないことを願いたい。世界遺産でなくても、もしそれが訪れる人に感動を与えられるならば、いいではないか。むしろ伊勢神宮が、なぜ「世界遺産」ではないのか。遷宮という形式で、木造建築を永遠に存在させようとという方法論は世界で他にない。どうやら、神宮の権威は「世界遺産」の権威を必要しないということであろうか。

■どんどん話しがそれていくので、元に戻したい。まず、サンチィアゴ巡礼の道が、ルート全体として世界遺産に登録されているということになっているという誤解がかなり浸透している。サンチィアゴ巡礼の道は、コンポステーラを目指して東西南北から網の目のようになっている。世界遺産に登録されているのは、そのうちのフランスからの4つのルートとそれがスベインで合流して「フランス人の道」と呼ばれる巡礼道である。

ユネスコ公式サイトWorld Heritage
によると現在、830件が登録されていて、644件が文化遺産である。その中で、サンティアゴ巡礼路は、フランスとスペインで別々に登録されている。と言うより、スペイン側の登録に刺激されて、プライドの高いフランス人が、自分達の方も押しこんだような感じ。

★スペイン側は登録番号669(1993年登録)
Route of Santiago de Compostela(サンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路)
http://whc.unesco.org/en/list/669
★フランス側は登録番号868(1998年登録)
Routes of Santiago de Compostela in France(フランス側のサンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路)
http://whc.unesco.org/en/list/868

 フランス側が登録されたことで、「ル ピュイ」「コンク」「モワサック」「ロカマドゥール」なども世界遺産ということになった。
 スペイン側では、107件のリストが添付されているが、ざっと読んでも把握できない。ソンボール峠越えのハカの「サン・ファン・デ・ラ・ペーニャ修道院」を含めハカ周辺の町や僧院だけしか出てこないのである。道を登録したにしては、少し地域的に限定されすぎている感じ。「アラゴンの道」が登録されているように読めてしまう。

■しかし、メイン・ルートは別のカテゴリーで登録されている「世界遺産」をいろいろと訪ねることができる。サン・ジャンからピレネーを越えていって、最初に出会うのがジュソ/スソ修道院である。ログローニョ→ナヘラ→サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダの2日がかりのルートを少し回り道する必要がある。ナヘラから南西に15kmほど行ったサン・ミジャン・デ・コゴージャという町にある。20km程度の回り道になり、しかもアソーフラを通過してしまうという問題点がある。
★聖ミジャン・ジュソ修道院とスソ修道院(1997年登録)
San Millan Yuso and Suso Monasteries
http://whc.unesco.org/en/list/805
 聖ミジャンは聖ミリアムであると中谷本に説明されている。では聖ミリアムとは誰だろうか。…と疑問を感じたが、手元のキリスト教聖人文化辞典には記載されていない。またまた寄り道になるが、中谷本があまりにもサラリと、言うまでもなくという調子なので、知っておきたくなった。便利なWEBも「聖ミリアム」というファンタジー系のキャラクターがいるらしく、それが上位を占めて、肝心の情報が得られない。ミジャンはMillanでミラノとも読める。ついでに、ミラノの語源が分かれば一石二鳥だ。「ミリアム」でウィキペディアがヒットした。
 …ミリアムは旧約聖書に登場するモーゼとアロンの姉、女預言者。同時にミリアムはマリアのアラム語読みでもある。民を率いてモーセがエジプトを脱出した時、追いかけてきたファラオの軍勢が葦の海に飲み込まれた後で、ミリアムは小太鼓を手にとって、神を賛美する歌を歌った。(『出エジプト記』15:20-21)
 この記述は出典を明記していて、信頼したいところだ。特にミリアム=マリア説は興味深い。しかし、私の持っている聖書では「葦の海」ではなく「紅海」である。「紅海」は英語への誤訳であったとされるが、どうも、「葦の海」と記述した日本語訳聖書があるらしい。しかし、このミリアムが列聖されているかは調べがつかない。もっと別のミリアムがいるかもしれない、ミラノの語源もわからない。中途半端なかたちで、やむなく本題に戻るしかない。

■ブルゴスの手前25kmあたり、サン・ファン・デ・オルテガの先に、アタプエルカという村を通る。ここには巡礼とは関係のない世界遺産がある。
★アタプエルカの考古遺跡群(2000年登録)
Archaeological Site of Atapuerca
http://whc.unesco.org/en/list/989
洞窟の中に、100万年程前の先史時代の人類遺跡があるらしい。ちなみにアルタミラの洞窟はブルゴスから100km以上の北方の海岸沿いサンタンデルの郊外にあるから、こちらを見に行く訳にはいかない。ブルゴスというと、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスという1970年代に活躍した名指揮者の故郷として、私には記憶されている。しかしブルゴスといえば大聖堂だ。
★ブルゴス大聖堂(1984年登録)
Burgos Cathedral
http://whc.unesco.org/en/list/316
 ブルゴスの南東60kmにはグレゴリア聖歌のふるさとサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院があるが、これは世界遺産には登録されていない。レオンの大聖堂も同様に世界遺産ではない。ブルゴスが世界遺産で、レオンのそれが、世界遺産ではない理由は知りたいところだ。

最終目的地であるコンポステーラは、旧市街全体で登録されている。
★サンティアゴ・デ・コンポステーラ(旧市街)(1985年登録)
Santiago de Compostela (Old Town)
http://whc.unesco.org/en/list/347

■ともかく、巡礼にとって道が「世界遺産」であるか否かは重要ではないのだが、以上の情報は、とりあえず、気になったので調べた次第。





サンチャゴ巡礼