左右ユニバーサル・デザインはパソコン2000-1-27 


■1991年のモノ・マガジン(no.188)は「左利きの商品学」を特集している。そこには左利き専用の道具が多く示されているが、一番多いのは事務用品である。毎日使うもので、それだけ不便さが切実であったためであろう。ハサミ、万年筆、鉛筆削り、物差し、製図板がある。

■自分自身は会社生活において左利きで、さして困ることはなかったが、しいて上げれば唯一苦労したのが、製図用のドラフター。機械製図では、直線を正しく水平・直角に作図しなければならないが、右利き用のドラフターではL字定規のグリップを左手で握って、右手で左から右に線を引く。これを左手で線を引こうとすると、右手はグリップを持つことができず、L字定規の先端を押さえることしかできない。こうすると定規に無理な力がかかって、定規の水平が狂ってくる。そのため、しばしばL字定規の直角調整をやりなおさなければならなかった。パンタグラフ式のドラフターの場合は、パンタグラフを90度ずらして、L字定規を下向きにして、何とかつかっていたが、これが新型のXLスライドレール式になると、どうにもならない。そこで会社に左利き用のドラフターを買ってもらうことになった。

■左利きのドラフターを使うことも理由であるが、無意識に左優位な設計をしていることがあった。ドラフターの原点が右下にあって、画面の左の空間が広いことも要因であるが、基本的に左から右に流れる図を書いてしまうのである。チームで設計をすると自分だけが、装置を逆向きに作図していることもあった。
設計をやり直すことになったのは一回だけだがある。デッスプレイのついた操作卓で、ディスプレイを右側に置き、操作スイッチをすべて左側にならべてしまったのである。しかしそれは、さして大変な作業ではなかった。作図した図面を裏焼きして、それから部品図を起こすだけでよいからである。

■ワープロの開発に継いで、パソコンの普及は、このような話しを全て昔話しにしてしまった。ペンはキーボードに、左利きの製図板に代ってCADが幅を利かせている。左利きの道具が廃れるだけでなく、同時に右利きの道具も廃れていく。左右それぞれに専用な道具は、ユニバーサル・デザインの道具に取って代わられる。現代の最高のユニバーサル・デザインはパソコンであろう。パソコンは左右の差異だけでなく、視覚・聴覚の補完装置として大きな可能性をもっている。



【左右の理屈】