左右な地名                                                                                                              2004-6-15 


「左右内」=「そうち」 「左沢」=「あてらざわ」


■最近、左という字のつく地名をいくつか訪れることがあった。上の写真の左は「左右内」で「そうち」と読む。右は「左沢」で「あてらざわ」と読む。また秋田内陸縦貫線に乗車していたら、「左通」という駅名看板を見つけた。読み方は「さどおり」である。何かみな変な呼び方ばかりだなという感想。という訳で今日は左右に関わる地名について考えてみたい。

■左右に関わる地名に最初に出会ったのは約40年も前の学生時代のことだ。冬の越前海岸で、越前ユースから越前岬へのかなり長い道のりをトボトボ歩いていたら、そのもズバリの「左右」(そう)という部落に行き当たった。おもしろいなと思った。「そう」と読むことを知ってもっと面白いと思った。なぜこのような地名になったのかは、直感的に分かった。この土地は福井方面からの道が海岸線と直角にぶつかるところに位置している。海岸線に沿って道があるから、左右の部落はこのT字路に位置しているのである。すなわち福井から一本道は、突然海に出て、行き先は、まさに左右に別れるしかなくなってしまう。だから「左右」と呼ぶようになったのだ。だったらT字路に当たる土地は皆左右になりそうだ。しかし、なんの変哲もない野道を歩きつめると、眼前に鉛色に沈む日本海が広がるだけ、ふと左右を見渡すと、それぞれまた一本道がずっと続いているだけ。
この「だけ」という特徴こそが、左右という地名の由縁なのだ。というのが私の説明。当たっているかな。なお越前海岸というのは、観光地としてとても良い所であるということを付記しておきたい。

■さて、次の「左右内」(そうち)である。今年の5月連休にたまたま訪れた。四国八十八ケ所巡り遍路が何やらブームであるが、その中で、ただ歩き遍路だけが通るのがこの左右内という小さな村落である。11番の藤井寺から12番の焼山寺への徒歩の道は、約13kmでしかないが、その登りの難路が「遍路ころがし」と呼ばれる。一本杉まで登り詰めた後、一旦左右内の部落に下って、再び、最後の厳しい登りを行き詰めるとようやく焼山寺にたどり着く。車も自転車も、別の迂回ルートをとるので、上の写真の看板は、我々歩き遍路だけが見ることができる貴重なものである。しかし、この名前に関心を持つのは、私のような左利きだけかもしれない。多くの歩き遍路はこの地名に印象を持っていないのではないか。越前の「左右」の地名については、自分なりの由来論を示したが、この左右内では、ちょっと思いつかない。あえて言えば、鮎喰川の支流である左右内谷川は、左右の山を深く刻んで、その底に左右内の゙部落がある。まさに左右の山の内にある村、だから「左右内」なのである。

「左沢」という地名は、鉄道ファンなら、だれでも知っている。国鉄「左沢線」の終点の駅名であるとともに、難読駅名として「あてらざわ」はよく知られている。ではまた、何故「左沢」なのだろうか。左沢のあたりの地形で、特徴的なのは、最上川の大曲流であろう。山形からの列車が左沢駅に着く直前の左側の車窓から、大きな岩山を迂回するこの曲流を見ることができる。最初は、この流れが左回りなのではないかと考えた。家に帰って地図で調べたら右周りであった。残念と思って、さらに地図を見ていくと、この曲流に川(沢)が流れ込んでいる。その辺りが左沢の集落が形成されている。 大曲流の左側に流れ込む沢にできた町だから「左沢」なのであるという理屈を考えた。

■秋田内陸縦貫線で見つけた「左通(さどおり)」については、まさに通り過ぎただけなので、その名前が印象に残っただけで、他に書くべき情報はない。そこで、手元の日本地図の索引で調べてみた。結構、左右な地名はあるものだ。

岩手県湯田町には「左草(さそう)」という地名がある。
大分県清川村には「左右知(さうち)」という地名がある。
大分県九重町には「右田(みぎた)」という地名がある。
青森市には「左堰((ひだりぜき)」という地名がある。
青森県下北半島の尻労の南に広がる猿ケ森の砂丘には「左京沼」という沼がある。
佐世保市には「左石(ひだりいし)」という地名がある。
甲府から上九一色村に上る峠は「右左口峠(うばぐちとうげ)」という。
何度もドライブで通っているが気が付かなかった。
わが地元、横浜にも「左近山(さこんやま)」という地名がある。

今まで、左右という呼び方はあっても、右左という言い方はないと思っていたが、右左口峠という呼び方があるのを知ったことは収穫というべきだろう。いずれにしても、何の役にも立たない情報である。

(2004-8-12)訪問者より長野県の左右についてご連絡をいただいた。
初めまして。自分は左右という地区にすんでおります。資料のアドレスです。↓
http://www.hi-ho.ne.jp/hiranos/yasaka/index.html
http://www.town.shinshushinmachi.nagano.jp/soumu/ssdata/communitylist.htm



【左右の理屈】