左利きの存在を進化論はどう説明するか             2001-9-20 


■現代人類の左利き比率は、人種や文化にあまり関係なく、平均して10%程度と言われている。特定の小部族であっても、左利きの方が多い、あるいは左利きだけの種族は発見されていない。また右利きだけの種族もやはり発見されていないようだ。長い歴史の中でも、その比率は減ることもなければ、増えることもなく、変化していないと言われる。この事実はどのように説明されるのだろうか。以下にいくつか思いついたことを列記するけれど、どなたかに正しい説明をしていただきたいものだ。

■まずカーライルの珍説は着想がおもしろいので,多くの人が引用するものである。それはかつては左利きは多く存在したが、盾を右手に、剣を左手に持つので、左胸の心臓を盾で守りにくく、多くの戦闘を経て、右利きより左利きの方が死亡率が高く、結果として左利きが少なくなったという。これは、戦闘に参加しなかった女性の方が男性より左利き比率が低いという事実を説明することができない。だから珍説である。

■ダーウィンの進化論では、適者生存といって環境に適応できた種のみが存続すると説明している。であるとすると、現代の左利きの人達の多くが強く主張するように、社会環境が左利きが適応しにくい構造をしているとすると、長い歳月を経て、左利きは淘汰されて、すなわち左利きの比率は減少していくことになる。しかし実際は、ちっとも減らない。

■この左利き比率が変化しないということは、ラマルクやルイセンコが主張したような獲得形質が遺伝するという学説を否定する証明になっているといえる。もし獲得形質が遺伝するとすれば,左利きとして生まれた後、練習や「矯正?」によって右手が使えるようになれば,そのことが生存に有利で,その結果その形質は遺伝して、長い期間の後には左利きの比率が減少する訳である。多くの左利きが右手もかなり器用に使っているが、左利きは減らないし、まして両手利きが増えているともいえない。

■さて、その環境が生存に不利である左利きが淘汰されない理由はなんだろうか。ドーキンスのキャッチコピー「利己的な遺伝子」が言わんとすることは、遺伝子は自己の複製子を最も多く残す可能性の高い戦略を取るということであるらしい。これだと左利きはいなくなってしまう。しかし実は遺伝子はそれほど利己的ではなかったということをハミルトンは包括適応度(IF)という概念で、生物の利他行動を説明した。女王蜂の子どもの世話をして、自分は子どもを産まない働き蜂がその例だ。すなわち左利きは、右利きの生存と繁殖を助けるという利他行動のために存在するという考え方ができる。

■しかしながら、具体的に左利きが右利きを助けるような行動をとっているとは思えない。結局、普通の考え方をすると、左利きが減らないということは、皆が言うほどには、環境は左利きには苛酷ではなく、右利き以上の淘汰圧がかかっていないといことではないか。左利きは、人類の種の多様性を保持する存在としてあるというのが今日の結論である。



【左右の理屈】