ゴッホの左利きの自画像                          2001-3-17 


■先日、デューラーの自画像から、デューラーが左利きであるという理屈を述べたが、説得力に欠けた。それはデューラーが自画像を鏡に映ったまま描いたか、それを反転したかということがポイントであった。そういえば、ゴッホに「左利きの自画像」と呼ばれるものがある。下の絵を見れば、「左利き」と呼ばれる絵は、鏡に映ったまま、すなわち右利きに描かれている。隣の「アルルに発つ前の自画像」は逆に左利きに描かれている。ゴッホにおいては、自画像は鏡に映ったまま描かれることを示している。
          

左利きの自画像
ワシントン・ナショナルギャラリー
1889年9月サン・レ
アルルへ発つ前の自画像
オランダ国立ゴッホ美術館
1888年1月〜2月

■上の写真は[小林英樹,「ゴッホの証明」,情報センター出版局,(1900円 ,2000年第1刷)]より転載させていただいた。同書は、この「左利きの自画像」が贋作であることを丹念に論証している。ただし世界的には、贋作とはされていなく、むしろゴッホがアルルにあって精神疾患となり郊外のサンレミの施設に入院中の、心の有り様が表出した特異な表現として理解されているようだ。私は影響を受けやすいので、同書を読む限り、著者の説に賛同してしまっている。

■さて、ここでの問題は左右である。まずゴッホは左利きではない。にもかかわらず何故左利きに自画像を描いたのだろうか。多くの美術評論家の論説は、その点に触れていない。ようするに精神に変調をきたしているので、どんな絵を書いてもおかしくないという方向に逃げている。
直前にゴッホは左耳を切っている。右耳を切るのには左手と右手のどちらでも可能である。その切った左耳を見えないようにポーズを取ると、画家としての自己証明書としてのパレットが奥側になって画面に入らない。だからとりあえず右手にパレットを持たせて描いたという見方がある。またわざと不自由な左手を使って描いたという説もある。小林氏は、贋作者が、贋作であることを見破られたときに、「この絵は敬愛するゴッホへのオマージュであり、自分の前に立った幻想のゴッホを描いた」と主張するためであると考えている。
いずれにしても、きちんと真偽が解明されるのを待ちたい。



【左右の理屈】