徳島の左右筆法の州崎さん                                                                         2003-8-12 




徳島新聞2003-8-9朝刊

■徳島に出張した。本当は前日の8日に帰京の予定であったが、たまたま台風の直撃を受けてホテルにカンヅメとなって、翌9日まで徳島に閉じ込められた。まさに、その偶然によって、2003-8-9朝刊の徳島新聞を読むことができ、そこに大変興味深い記事を発見した次第。四国八十八ケ所巡りの一番札所の霊山寺でご朱印帖に達筆を揮う納経師、洲崎忠雄さんが、左右両手で同時に筆書するということで話題になっているという話。興味本位に読んでしまえば、ただの器用な人がいるという話だが、徳島で左右筆法ということで、偶然以上のものを感じたのである。徳島といえば1970年代に「左利き友の会」で左筆法の普及に尽力した細川芳文先生の地元なのである。

■たぶん洲崎さんは「左筆法」の存在をご存知ないはずだ。右手使いの筆書家としての長年の修練が不慣れな左手でも筆書を可能としたと思われる。フェリシモの加藤さんが復興に努めているこの「左筆法」には「斜めがき筆法」「横がき筆法」「正座筆法」の3種類が「左利き友の会」によって提唱された。記事の写真を見ると、洲崎さんの書き方はまさに「正座筆法」そのものである。正座筆法の特徴は、筆書紙面を体の中心線より左側に置き、さらに筆を立てて書くことにある。まったくそのとおりではないか。

■我々左利きの多くは、はなから左手では筆書きできないと、小学校の習字で挫折して、習字゙が嫌いになったり、右手でいやいや習字をしたという体験を持つ。ところが、洲崎さんのような右利きの方でさえ、左手で立派に筆書することができる。ようするに、習字は左利きには不可能であると思い込むことは、左利きの固定観念に過ぎないということを、はからずも教えていただいた。最近の小学校では、平気で左手で習字をさせ、それをとがめない先生もいる。その児童の左手で書いた習字を見せてもらったが、まったく右手で書いたものと遜色ない。JSCでは本年の「2月10日は左利きの日」企画で、左手習字大会を開催したが、そのとき初めて多くの左利きが、何年〜何十年ぶりに筆を持ち、左手でのびのびと習字にトライした。

■社会は右利き用にできているということは、間違いない事実であるが、だからといって、自分が何かをうまく出来ないと、それを左利きのせいにしてはいないだろうかと強く反省した。どんなことでも、何かに習熟するためには、努力と修練を必要とする。洲崎さんは、修練で左筆法を独力でマスターされた。ところが、私を含めて少なくない左利きは、修練することなく、自分がうまく出来ない理由を右利き社会に求める。左利きであるということにこだわりすぎた結果である。


四国一番霊山寺の納経朱印
(これは洲崎の筆によるものではないであろう)



【左右の理屈】