発見!!藤田嗣治が撮影した写真        2000-11-29 (2001-9-29追補)





■先日、アサヒカメラ昭和53年4月増刊号を入手した。最近ではこんなものまで中古カメラ屋で買う。安くはない。ふざけるなといいたいが、ニコンFの取扱説明書を10000円で売ろうという無神経さよりはまだマシかと、自分自身を説得する。そのグラビアページに藤田嗣治が撮影した写真を発見する。自分自身にとっては大発見である。

■一般に画家は写真をバカにしている。描こうとする人間にとって写ってしまう写真はいかにも都合が悪いからである。そんな画家達であるが、最近では現地で写真を撮ってきて、これをもとに「心象的」な風景画を描いたりするからけっこう器用なものだ。フェルメールでさえ、遠近法の消点が複数で幾何学でない絵を描いたばかりに、カメラ・オブスキュラで外界を模写したとの疑いを持たれたりする。だから賢明な画家は、そのような疑いを持たれないためにも、身辺にカメラを携えないものだ。

■そう考えるとこの藤田の写真の存在意義は大きい。上の写真はアサヒカメラの昭和30年4月号に掲載された「ボヘミアンの車」と題されたものである。それが「アサヒカメラ半世紀の歩み」というこの増刊号に再掲された。昭和30年に藤田はフランス国籍を得ている。ちょうど日本国籍を捨てようとしていたときに撮影したことになる。そういうバイアスをかけてこの写真を見ると、このジプシーのトレーラ・ハウス、自由に移動できるにもかかわらず、一旦留まると、そこは常に他人の秩序の中という居心地の悪さ。藤田自身の心象が表出していると見るのが作法である。


<2001-9-29追補>アサヒカメラ1955年より

■1月号での座談会での木村井兵衛の発言
「………パリでは藤田先生のカラーフィルムを沢山拝見できた。これに比べると私のカラー写真は屋台店のライスカレーのように、ほんの腹ふさぎにすぎない。この作品は立派な料理で味わいが深い。色がよく出ているというようなものではなく、カラーフィルムを使って色を出したものである。先生はカラーフィルムを絵具と同じようにしてしまったのだと思った。………」

■3月号での座談会での木村井兵衛の発言
「………藤田さんは元気で写真にこっちゃって大変ですよ。Vfのズマリット付でカラーを撮っている。また16mmに大変なこり方だ。最初に一度遊びにいって、次に訪ねたときM3を持っていったら、それを見てカーッとなってあくる日買っちゃったもの。………」




【カメラの触感】